いろんなボロが出る
「で、正直精神的にまいっている」
「部活で後輩たちとイチャイチャしてると言われた彼女の私にどうしろいうの」
手芸部の部活が始まる前に女子陸上部にお邪魔してソフィにご相談。運動部は早めに始まっていて、手芸部はその30分後ぐらいから始まる。以前は運動部も手芸部と同じ時間から開始していたようだけど成績が残せなければ部費削減というペナルティが課せられてからは真剣だ。
「陸上部は真面目だなあ」
「私が副部長をしているのよ。だらけた練習なんてさせるはずないじゃない」
ふふんと鼻を高くするソフィ。
運動部で一番変わったのはソフィのいる女子陸上部だ。去年までなんとなくでやっていた練習メニューを一新、お遊びでしていた部員は先輩でも端に追いやられて文句も言えない立場に、真剣に取り組む部員を優遇する処置を行っていた。反発する部員は結果を出して潰し、年功序列を訴えた顧問はあっさりと挿げ替えられた。
全部ソフィがやったことである。凄いな俺の彼女。え、ほぼ俺のしてきたことをマネしただけ?
「タカ目的で入部してきた女の子達が面倒くさい、でも入部してくれたからには責任は取らなくちゃいけないと思っているわけね。そこぉ!次の子の邪魔になるでしょうすぐに場所をゆずるっ。無理しなくていいからその場に座らないでゆっくりでも歩きなさい」
「はいっソフィ先輩」
俺と一緒のベンチに座っていたソフィが急に立ち上がって後輩の子達に注意した。ソフィに注意された子達は元気よく返事をする。
「慕われてるなソフィ」
「私もタカやパパママを見ていろいろと学んでいっているのよ。みやこだって頑張っているでしょう?」
みやこは生徒会の他に自分で弁論部を立ち上げた。最初は同級生で立ち上げたが一年生も数人入っているらしい。
「人を指導する立場になって私、みやこもだと思うけどどれだけタカに甘えていたかを思い知らされたわ。人間関係の調整、スケジュール管理、自分の成績を上げるためにも時間を割かなくちゃいけない。タカの横で遊んでいるなんて全然できなくなったわ」
綺麗な金髪を日に光らせ、腕をまっすぐ上にあげて背伸びをするソフィ。中学生にしてモデル並みのスタイルを持つソフィが着ているのは薄手の練習着だ。近くにいる男子共の視線がソフィに集まる。見るのは男のサガだ我慢してやろう。てを出そうとするなら報復の魔王様が全力で潰すがな。
「でもねようやく私達はタカの傍に居るために一歩前に出れたと感じたわ。ただタカを取られるかもしれないと焦って立ち止まるのでなく、ママが敷いてくれたレールの上を漠然と進むのではなく、自分の脚で少しづつでもタカに近づいているの」
自分の脚を軽く叩くソフィ。
「今は無理でも大人になった時にはタカの横にいるのに文句を言わせない女に私はなっているわ」
笑うソフィは美しかった。思わず拍手してしまう。
「うん、それは嬉しいな。でも俺手芸部の後輩のことをソフィに相談しに来たんだけど」
「あ、」
ツンデレにはならなかったけどスポーツ系でちょっと抜けてるの可愛いよ。
「あんたみたいのが手芸部に入ってるのがおかしいわ!」
ソフィと別れた後に俺は部活動をしている教室にやってきた。ドアを開けようとしたら室内から罵声が聞こえてきた。ついドアを開けるのを止める。
「・・・別にいいだろ」
これは阿久津さんだな。
「迷惑なのよあんたみたいな不良がいると」
「久下先輩に迷惑かけているって思わないのっ」
「普通に教えてもらっているだけだろ・・・」
「あんたが一人でいるからわざわざ久下先輩がお情けで声を掛けているのがわかんないのっ」
「だいたい全然上達してないじゃない。私の方が上手いわよ」
「あ、止めろっ」
「ほらみんな見て、この不細工なのっ。あれだけ教えてもらってこんな。きゃあっ」
「止めろって言ってんだろうがっ」
ガタンッ!
「大丈夫○○ちゃん!」
「いったーい」
「怪我させたっ」
「ひっどーい」
「暴力振るうなんてひどいっ」
「そうよ!」
「出ていきなさいよっ」
「「「出、て、け。出、て、け」」
え~何これ。昭和の漫画みたいなこと起こっているんですが。人ってこんなにも馬鹿だったけ。
ソフィが最後にタカはそんな図々しいのを放置するほど甘い人だっけと言われた。少し手芸部のことで緩くなっていたかもしれない。
出てけコールの起きている教室のドアを開けた。
阿久津視点
最初は部活の紹介で見た王子様に初恋をして手芸部に入部した。
私の家族はちょっとガラの悪いタイプだ。人様に悪いことはしていないと思うたぶんだけど。その中で育った私も自然とそっちの方にファッションは偏りがちになった。
あまり家にお金がないのもあって姉のお下がりを貰ったのもあるけどそこまで不満はなかった。
ただ姉の友達が頻繁に家に来るせいで私は同級生の親に付き合ってはいけないレッテルをつけられた。だから私には友達はいない。兄貴分姉貴分はたくさんいるけどそのほとんどは高校生か働いている人だ。
友達がいない、けどいじめもない小学生時代を送り、中学生になっても同じかなと思っていたら王子様にあったのだ。
親や姉に隠れて買った少女漫画に出てくる王子様が現実にいた衝撃に、勢いで手芸部に入部した。
入ったすぐに自分が場違いな場所いることに気付き退部しようかとも考えたけど、王子様いや久下先輩は私みたいな不良の恰好をしていても差別することなく接してくれる。部長のお姫様だった江田先輩も最初は怖がられたけど徐々に近づいてきて刺繍の仕方を教えてくれるようになった。
私は真面目に手芸部に入った女子とも、あきらかに久下先輩目当ての女子ともかかわらずに一人はじの方で部活動に参加した。最初は不純な理由で入部したけど二人の先輩は真剣に教えてくれて次第に手芸の面白さにのめりこみ始める。
ときどき最後まで居残ってしまった時に先輩達がお茶をご馳走してくれてお喋りするのは楽しかった。江田先輩が久下先輩と付き合ってるのを知った時はショックだったけど他にも彼女さんがいるようで江田先輩から頑張れと応援された。望みがあるだけでも良かったと思う。
「ねえあんたみたいな奴がここにいるのよ」
いつものように教室のはしで刺繍の準備をしていると声を掛けられた。久下先輩目当てのリーダー格の女子だ。いつもベタベタと先輩に触っている。
「部員だから」
そうとしか言いようがない。
「あんたみたいのが手芸部に入ってるのがおかしいわ!」
なんでこんな奴に自分を否定されなければならないのか、姉仕込みで暴力を振るいたくなったけどそれでは部に迷惑かけるし退部になるかもしれない。それは絶対に嫌だった。
真面目にしている女子達が怯えている。こんなことに関わらせてごめんね
「・・・別にいいだろ」
私はそんな口が上手いわけじゃない。反論もできなかった。
「迷惑なのよあんたみたいな不良がいると」
「久下先輩に迷惑かけているって思わないのっ」
「普通に教えてもらっているだけだろ・・・」
他の連中まで言ってくる。
「あんたが一人でいるからわざわざ久下先輩がお情けで声を掛けているのがわかんないのっ」
そんなことないと叫びたかったけど、もしかするとそうかもしれないと思ってしまう。一人ぼっちで同級生と話もしない私は先輩たちの迷惑ではないのか、邪魔だと思われているのかも。
「だいたい全然上達してないじゃない。私の方が上手いわよ」
「あ、止めろっ」
深く考えていた一瞬の隙を突かれて持っていた途中の刺繍を取られる。
「ほらみんな見て、この不細工なのっ。あれだけ教えてもらってこんな。きゃあっ」
「止めろって言ってんだろうがっ」
取られたことと馬鹿にされたこと自分でも下手だと思っていることに感情が一気に怒りに傾いた。
取られた刺繍をむしり取るように奪い返す。
ガタンッ!
その時、勢い相手を押してしまい倒してしまう。
「大丈夫○○ちゃん!」
「いったーい」
「怪我させたっ」
「ひっどーい」
「暴力振るうなんてひどいっ」
「そうよ!」
「出ていきなさいよっ」
「「「出、て、け。出、て、け」」
その後はあちら側の思い通りだ。私には味方してくれる友達はいない。ここに私の居場所はなかった。暴力振るう気力もわかない。湧いたとしても久下先輩にこれ以上嫌われるようなことはしたくなかった。
刺繍の枠を掴んで我慢し、あとはカバンに突っ込んで出ていこう二度とここには来ないそう覚悟した。
ガラララ
「はいそこまで」
ドアが開いて現れたのは今一番会いたくない久下先輩だった。
その顔は無表情。
「「「久下先輩っ」」」
「わたし彼女に押し倒されたんです」
「教えてあげようとしたら生意気だって」
「こっちは親切にしてあげたのに酷いわ」
「そーよこんな子とは一緒に部活動できません」
「退部にするべきよ」
「「「そーよ」」」
何も言えない。
久下先輩は教室に入った瞬間に奴らに囲まれて嘘にまみれた言葉を矢継ぎ早に掛けられる。彼女らにも優しかった先輩は信じるだろう。私は恰好が不良だし誰とも話さないし、これで私の初恋とようやくできた大切な手芸も無くなった。
あれ顔が濡れている感触がある。
「はいはい、どいてどいて」
久下先輩がこちらにやってきた。もしかして直接責められるのだろうか、なんで私には酷いことが起きるのだろう。そんなにもこの人を好きになってはいけなかったのだろうか。
「阿久津さん」
声を掛けられて思わず目を閉じ体も縮める。
「阿久津さん顔を上げて」
優しい声に聞こえるのは私の気のせいかもしれない。でも部の後輩として初恋の人に最後はちゃんと顔を向ける。
久下先輩は困った笑みを浮かべていた
「はいこれで拭いて可愛い顔が台無しだ」
綺麗なハンカチを渡された。迫力のある虎刺繍されてるけど。そこで自分が泣いていることに気付いた。
「あのでも拭けないです・・・」
「いいから、男のハンカチは女の子の泣いたときようだから」
きざな言葉だけど心がキュンッと鳴ってしまう。ありがたく目元を拭かせてもらった。
「なんでそんな奴にハンカチを渡すんですかっ」
私に倒された女子が叫ぶ。
「私はその女に倒されたんですよっ。普通私に渡すべきです」
「そうです、おかしいですっ」
また騒ぎ出す女子達。
「あ~ごめんそこの子達俺の後ろの方に寄ってもらえる?うん、そこでいいよ。ちょっと見ると怖いことになるからさ」
久下先輩はそんな彼女達を無視して真面目な子達を私の方に移動させた。
「阿久津さん達これからちょっと怖いかもしれないけど君達には危害はないから安心して」
その顔は笑顔だ。
「さて、いろいろと言っているけど何様なのかな君達は?」
うるさい彼女達の方に振り向いた久下先輩の声は氷のように冷たかった。
一瞬でうるさかったのが止まる。
「俺はドアの前で聞いていたんだけどさ、それでも君達の味方をすると思う?」
彼女達は顔面が蒼白になった。まさか聞かれているとは思っていなかったのだろう。よく考えれば久下先輩が入ってきたタイミングは良すぎた。
「そこの君倒されたって?人のモノを無理矢理取ったら反撃されるなんて当り前じゃないか。いいよ人に広めても阿久津さんに押されて倒されたって言いふらしなよ。その分俺が君が散々阿久津さんをバカにしたうえで人のモノを取って奪い返されたときに倒れて、それを捏造して俺に話したことを学校中にバラしてやるからさ。どうせするつもりだったんだろ?わかるんだよ集団作って馬鹿な事をする奴の考えなんて」
「あ、ああ・・・」
「そっちの君は教えてあげようとした?良く咄嗟に嘘を吐けるよね感心するよ。感心してくれたお礼にご両親に伝えてあげようか、あなたの子供は人を落とすために簡単に嘘を吐ける子ですって。どんな顔をしてくれるかな」
「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「そっちの君は親切にしてあげたのにか、なら俺が君に親切にしてあげよう。君の突き倒すのがいいかな?それとも常に嘘を吐いたほうがいいのかな?それが君の親切なんだろう」
「・・・」
「なんだよ阿久津さんを同じようにしたんだろう。自分がやり返されるのはダメなのかよ」
はあとため息を吐く久下先輩。
「わ、私達は手芸部の為にしたんですっ!」
一人が声を上げた。
「彼女は私達に混ざらないで手芸部の輪を乱しました」
「一人だけ久下先輩を独占しようとしましたっ」
「それを私達は注意しただけですっ」
「それなのに彼女は私達よりも下手なんですよ」
「わざと下手なふりして久下先輩に相手してもらおうとしてしているんです」
「いき過ぎたのは悪いですが原因は彼女ですっ」
チャンスとばかりに彼女達は発言する。
確かに私はまざらなかった。
「ふむそれが何か問題でも?」
「「「「え、」」」
久下先輩は首を傾げた。
「別に部活は仲よくする場じゃないよ。集団行動する部もあるが手芸部は基本自分の好きな手芸をするだけだ。仲良くなるのは必ずしも必要ではないよ」
何を勘違いしているのかなと呟く久下先輩。
「俺を独占とか言っているけど君達に教えている時間が圧倒的に多かったからね。阿久津さんには基本を教えてあの縫い方を習得したら次のをて感じだから、君達の様に同じことを十分おきに聞いてくるような馬鹿な事は一度もないから」
彼女達の顔が赤くなる覚えがあるのかもしれない。
「阿久津さんが下手といったけどさ」
恥ずかしい、あれだけ久下先輩と江田先輩に教えてもらったのにちゃんとした作品は一枚も出来ていない。
「君達はどれだけ上達した?阿久津さんは基本の縫い方だけでハンカチ一枚を縫い潰してから次の縫い方を学んでいるぞ。なあ阿久津さんいま縫っているのは何枚目?」
「えっと15枚目です」
後ろにいる真面目な子達が騒ぐ。ごめんなさい下手だから基本でいっぱいいっぱいなの。
「で、でも私達のほうが上手い・・・」
「だから上達と言っただろう?聞いてないのか阿久津さんは上達しているぞ、あと半月もすればお前達なんて超えるんだよちゃんと俺と純先輩は全員をみているからな。お前らは入部してから少しも上達してないんだよ」
「な、ならこれから練習すれば」
「できるのか?全然手芸に興味ないのに。部活動の大半が俺にまとわりつくだけのお前らがか?勉強するより苦痛だぞ。俺も自分の作品もあるから今までの様には教えるつもりはないしな」
私には無理だ。何の楽しみもないのに続けるなんて
「俺のせいだと考えて甘くしていたのが間違いだった。手芸に興味が無いなら退部しろ。それが君達のましな道だ。ちゃんと興味がある部活に入部した方がいい。今なら俺も手助けするから」
久下先輩の声が優しくなる。自分が王子様をしたせいで彼女達を歪めたと感じているのかもしれない。
「いやです・・・」
沈黙していた彼女達の一人が顔を上げる。
「退部なんてしませんっ!辞めさせることもできませんよねっ!」
「そうよ辞めないわっ!」
次々に声が上がる。その目はおかしくなっていた。真面目な子達を怖がっていた。私も姉の友達の不良より怖い。
久下先輩がヤバい方にいったかと呟いていた。
「これは何?」
そこに感情が無い声が響いた。
開いたままのドアに立っていたのは江田先輩だ。
「貴光これ何?」
トテトテと久下先輩に近づく江田先輩。そして久下先輩がそのまま片腕で抱きかかえる。しっかりと首に手を回している。こんな状況なのに羨ましいと思った。
「純先輩」
「なに?」
「ごめんなさい。俺のせいで手芸部はダメになりました」
「・・・そう」
「だから退部しましょう」
「わかった」
「「「は?」」」
私だけじゃない。真面目な子達も久下先輩にまとわりつていた子達も二人の会話についていけなかった。
「退部させることは確かに出来ないけどな、俺達が退部出来るのはありなんだよね」
久下先輩がこちらを振り返る。その顔はいつもの楽しそうな顔だ。
「ごめんなみんな俺達二人は手芸部を退部することにした。そして新しく新手芸部を創ろうと思うけど、どう入部しない?今度はちゃんと手芸部として活動できるようにするからさ」
「こっちに来い」
たぶんだけど真面目な子達もこう思っているはずだ。
この二人スゲェーと。
勿論私達の答えはお願いしますだ。
さすがにここにいるのは嫌なので私達は移動することになった。一度適当な教室に入り久下先輩が許可を貰ってくるそうだ。
呆然と事の成り行きを見る女子達を残して私達は出ていく。
「俺はなちゃんと部活動をするならこんな強引な手は使わなかったよ。でもお前らは俺に王子様を求めてるだけだったよな。ファンクラブをしたいなら俺の知らない所でやってくれ」
そう言って久下先輩はドアを閉めた。しばらく歩くと教室の方から泣き声が聞こえてくる。
「貴光やりすぎ」
江田先輩が久下先輩の頭を叩く。
「俺も穏便にしようと考えてたんですけどね。阿久津さんを追い詰めていたんで、ついやっちゃいました」
「ん~それならしょうがない」
久下先輩は私の為に怒ってくれたんだっ!彼女達には悪いけど嬉しさが湧いてくる。
「頑張っている大切な後輩をいじめられるのはこんなにも気分悪いもんだとは思わなかったですよ」
「焼却処分」
物騒なことを江田先輩が言っているけど大切な後輩と言われた私は天にも上る気持ちでそれどころじゃなかった。
彼女達と私を分けたのはたった一つ。私は初恋もしたけど部活の手芸も頑張った。最初は久下先輩に気に入られるためだったけど、いつのまにか手芸も楽しくなった。ただそれだけのことだ。
「阿久津さんも押し倒したけど手を出さなかったね偉い偉い」
久下先輩が頭を撫でてくれた。
「はぅ・・・」
「阿久津さぁーんっ!?」
私は興奮しすぎて意識が遠のいていった。
「精進が甘い阿久津」
修行します江田先輩。
阿久津さんは不良っぽい真面目ボッチでした。純先輩は阿久津さんの恋心に気づいています。ただし上から目線の師匠になってますが(;・ω・)
ハンカチは阿久津さんの宝物に。
さすがに可哀想なので貴光は女の子達のフォローはしましたよ洗のゲフンゲフンで。(;・∀・)
ソフィよ最初にメインヒロイン風に登場できたのに最後まで読まれて登場したこと覚えている読者様はいるのか?
筆者なんて投稿寸前にあ、ソフィがいると気づいたぐらいだ( ;∀;)




