魔女王は頑張る普通の女の子なのです
魔女王璃子視点
「お姉ちゃん達に聞きたいことがあります」
貴お兄ちゃんがいると二人がポンコツになるので座敷から出ていってもらいました。ハッキリと邪魔と言ったら泣きまねしながら出ていきました。
お姉ちゃん達は心配そうにしていますが、貴お兄ちゃんはそのくらいで落ち込むような神経をしていません。しばらくしたら冷たいデザートでも持ってくるでしょう。
「あの・・・聞きたいことが」
恐る恐る手を上げるみやこお姉ちゃん。
なぜ恐る恐るなんですか?
二人とものぼせかけたのだから正座なんてしなくていいですよ。ソフィお姉ちゃん正座が上手ですね。貴お兄ちゃんのマネですか、たしかに貴お兄ちゃんの座り方は綺麗ですもんね。
手で発言を促す。
駄目ですね、この時点で怒らないと私を無意識にでも上と認めたことになりますよ。
「どうして璃子ちゃんはそんな凄い恰好をしているの?」
「そういえば旅行の時は普通の恰好でしたね。どうです可愛いでしょう?」
胸を張って見せびらかす。
「独特だけど可愛い」
『悔しいけど似合っているわ』
「はいソフィお姉ちゃん、なんとなくわかりますが日本語で話して。ペラペラですよね。社長と普通に会話しているのを旅行中に聞いてます。ここは日本ですよ、そろそろ貴お兄ちゃんに甘えないでください」
睨んでも私は平気ですよ。
「わかったわ。これでいい?」
ソフィお姉ちゃんは日本人の発音で言葉を発した。
普通に話せるのにそうしなかったのは貴お兄ちゃんに甘えるためだろう。みやこお姉ちゃんは驚いていない。二人の時は日本語なのかもしれない。気持ち悪い。
「それで構いません。それでこの格好ですが貴お兄ちゃんが私の為にデザインして作ってくれたんです。たしか半年ぐらい前ですか。見たことが無かったのはお姉ちゃん達には見せる価値がなかっただけです」
嫉妬の視線が私に刺さる。
私にはそよ風のようなものだ。
「羨ましいのですか?でもお姉ちゃん達もいっぱい貴お兄ちゃんから貰っているじゃないですか」
私は知っている。二人の着ている服の殆どが貴お兄ちゃんからのプレゼントだということを。二人の為に考えて作られたことを。
私の服はおねだりしてモデルとしての服で作ってもらったものだ。お気に入りと伝えて他にも作ってもらった。
二人の様に無償ではない。
モデルも会社でのお手伝いも全て貴お兄ちゃんに女として認められるためにしている。普通の女の子だった私は頑張って努力して結果を出してようやく褒められるのに、お姉ちゃん達はただ傍に居るだけで褒められる。
羨ましくてたまらない。
「いいですよね甘えるだけでなんでもくれる男って、少し前にテレビで言ってましたね。たしかアッシー君?メッシー君でしたか?ああなんでもくれるから貢君でしたね」
「璃子ちゃん!」
「璃子!」
二人が私の服を掴んできた。
やめてほしいな貴お兄ちゃんに貰った大切な服が破けちゃう。
「どうして怒るんですか?」
「私達はたか君のことをそんな風に思ったことは一度もないっ!」
「璃子、あなたはタカのことをそんな風におもっていたの?」
お姉ちゃん達は甘いなぁ。
貴お兄ちゃんが優しく幸せの殻の中に閉じ込めたせいなのかな。
「私は思ってませんよ。お姉ちゃん達がそう思っているともかんがえてはいません」
「なら、どうしてそんな酷いことを」
「会社の人達はそう言ってますよ」
私がその殻を壊そう。
「「え?」」
「知らなかったんですか?かなりの人が言ってましたよ。貴お兄ちゃんはどうして二人にいろいろとするんだろうって」
叩いて割ってあげる。
「確かに二人は可愛いです。日本を探しても上位にいると思います。モデルを続けている私だからわかります」
踏んで細かい破片にしてあげる。
「でも可愛いだけなんですよね」
排水溝に水で流してあげる。
「二人は貴お兄ちゃんに何かしてあげたことはありますか?あ、好きとか愛ではなくて他の事です」
そして逃げ道を塞いであげる。
「まさか愛だけで貴お兄ちゃんの横に立てるなんて言わないでくださいね。相手は将来が有望では済まないくらい凄い人です。お姉ちゃん達には並び立つ為のものは何がありますか?」
力が入っていない二人の手をどかす。
よかった服は破けていないようだ。
お姉ちゃん達の顔は青白くなっていた。
貴お兄ちゃんや他の人なら二人の可愛さにここで止めて慰めるだろう。
でも私はそんなことはしない。
「全然違うことを話しちゃいましたね。ええと、そうそうお姉ちゃん達に聞きたいことがあったんです。どうしてアメリカから帰って来ないでドイツに行ったんですか?」
「それはママが私達に経験を積ませてあげるって・・・」
「うん、将来たか君の傍に居るには必要だって」
二人の目に少しだけ力が戻る。
「社長ですか、あの人は貴お兄ちゃんを心配していますからね。二人を鍛えたかったんでしょう」
あの人は先を見て動いてますから、素質を伸ばさない二人が心配だったのでしょう。
「で、人に言われて付いて行って何か経験になりましたか?社長の傍にただいただけではなんの役にも立ちませんよ。そんなことなら会社で掃除でもしていた方がまだマシです」
私は専務の傍で必死に学びましたよ。小学生なのに。
「お姉ちゃん達は人に言われるがままにしか動けないんですね。だからドイツに流されてのこのこ付いて行って、貴お兄ちゃんが危ないときにそばにいられないんですよ」
「たか君が!?」
「タカがどうしたの!?」
また詰め寄って服を掴まれる。もう!本当に破けたらどうするんですか。
「会社の事で精神的にかなり追い詰められたみたいです。貴お兄ちゃんを助けてくれた人から聞いたので確かな情報です。あ、私もその場にいられなかったのでお姉ちゃん達と同じですね。でもその後はなるべく傍にいましたけど」
常葉さんには感謝しかない。
聞いた内容から私にはどうしようも出来なかった。
貴お兄ちゃんから学んだことも、社長から教わったことも、モデル業や専務に鍛えられたことも何の役にも立ちそうにもなかった。
私は何の力もない小学生だった。
「どうしてお姉ちゃん達は貴お兄ちゃんの傍にいてくれなかったんですか?人に言われて将来の為に動くことが大切だったんですか?もしかして社長のせいにはしませんよね。自分から動かなったくせに」
これはただの八つ当たりだ。
アメリカに行くよう誘導したのは私、貴お兄ちゃんを独り占めしたかったから。お姉ちゃん達がいると近寄ることも難しい。
中学生と小学生というだけで途端に距離が遠くなる。
私も貴お兄ちゃんに甘えたい。もっと傍に居たい。
私の我儘が貴お兄ちゃんを壊しかけた。今も少し壊れていると思う。だって黒くなったから。
でもお姉ちゃん達が傍に居れば今回の事にならなかったかもしれない。
なんでいなかったの?私のせいだ。でも一緒にいたかったのだ、お姉ちゃん達がいないのが悪い、ごめんなさい、お姉ちゃん達なんか嫌い、ごめんなさい。私は努力したの、お兄ちゃんが好きだから、お姉ちゃん達みたいになりたかったから
「ごめん、ごめんね」
「私達が悪かったわ璃子」
いつの間にかお姉ちゃん達に抱きしめられていた。
あれ?何で私は泣いているのだろう。
「私しっかりするからごめんね」
「璃子に認められるお姉ちゃんになるから」
お姉ちゃん達は泣きながら強く抱き締めてくれる。
貴お兄ちゃんに恋をした。
でも最初はお姉ちゃん達に憧れたからだ。
貴お兄ちゃんにお姉ちゃん達みたいに綺麗にしてほしいと願った。何でも叶えてくれる魔法使いに。
私はやさしい魔法使いが好きになってしまった。
普通だった私は憧れたシンデレラたちを追い続け、魔法使いを求める女の子になった。
だからみやこお姉ちゃん、ソフィお姉ちゃん。私を失望させないで、お姉ちゃん達は私の目標なのだから。
璃子ちゃんはどんなに魔女王になっても中身は普通の小学生の女の子です。
最初はお姉ちゃん達を説教しようと考え、嫉妬して二人を貴光から引き離そうとし、八つ当たりして、すがりました。
お兄ちゃんは欲しいがお姉ちゃん達と仲が悪くなるのも嫌。
普通の子供です。(*´ω`*)
まあ、元凶は貴光です。
一番の被害者は魔女王璃子ちゃんですね。




