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俺の過去は不安定  作者: デンセン
小学生編
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1.出会いはいつも緊張感あり


 心臓がバクバクと鳴っているのを止めることが出来ない。

 背中に冷たい汗が流れているのもわかる。


「本当に大丈夫?」


私の手を握ってくれている母が心配そうにこちらの顔を覗いてきた。

 その顔は私が最後に見た疲れ切って皺の増えた母でなくまだ二十代でコロコロと笑うのが素敵だった若い頃の母だ。


「大丈夫だよかーちゃん。もう小学生なんだよ大丈夫だって」


 なるべく明るく言うと母はホッとしたようで歩き出した。

 いかんいかん母を心配させてはならない。


「でも友達のいる班でなくていいの?こっちの班は知ってる子は誰もいないよ」


 母は更に言ってくる。それに私は明るく大丈夫大丈夫と繰り返す。

 

 これは仕方ない。子供の頃の私は人見知りで甘ったれたガキだった。そのせいで後々に結構な負の遺産を抱え込むのだ。今回はそれを絶対に避けたい。


 しばらく歩くと私の前に数人の小学生と一人の大人の女性がいた。

 小学生は高学年女子が二人、そして私と同い年の女の子が一人。大人の女性はその女の子の傍に立っていた。

 

 私は諸々の事情で父方の実家に引っ越すことになった。幸いに学校は変わることはなかったのだが、登下校の班は変更せざるをえなかった。

 そして今日から新しい班の集まる場所に母と一緒に来たのであった。


「おはようございます」


「「おはようございます!」」


 母が挨拶すると高学年の子たちが一斉に挨拶を返す。女の子は女性の後ろに隠れた。どうやら女の子の母親らしい。

 

 母は女性に軽く頭を下げる。相手も軽く下げた。


「今日からみんなの班に入れてもらうことになる子よ」

 女性が小学生たちに説明してくれた。

 

 ちょうどいい。今が自己紹介するにはいいタイミングだろう。

 私は母から手を放し高学年女子たちの前に出た。


「今日からお世話になります久下貴光です。一年生ですよろしくお願いします!」


 舌足らずだが元気よく言って頭を下げた。

 内心はかなり恥ずかしいが、相手に好印象を持たせる子供を演じなければいけない。

 自己紹介を母がしてもよかったのだが、私にはこの後にもする予定があるため、自分から進んでしたわけだ。

 

 頭を上げると女の子たちの黄色い歓声が放たれる。

 ふふふ、この頃の私は上級生キラーであった。当時は姉ちゃんたちが遊んでくれるやったー!ぐらいにしか思っていなかったが。

 

 もみくちゃにされる私。肉体年齢的にも精神年齢的にも小学生には興奮しませんからいくらでも可愛がって構いません。あ、高い高いは止めてください。高所恐怖症なので。

 

 私が可愛がられている間に母親達は挨拶を済ませていた。同級生の女の子はまだ母親の後ろにいる。

 

 いけないけない本命のやることを忘れかけていた。

 上級生たちにすいませんとことわりをいれ、私は女の子の元に行く。

 それに気づいた女の子の母親が女の子を私の方に押し出した。

 慌てる女の子。

 私が彼女の前に立つとすごく困った顔でこちらをチラチラと見ている。

 長く伸びた綺麗な黒髪、整った顔。学年どころか学校で一番の美少女になる女の子がそこにいた。


 心の中に色々な感情が浮かぶが最後に蓋をしたのは一つの感情だ。


「久下貴光です。今日からよろしくね」


 怖がらせないように落ち着いた声で、表情もはにかむぐらいで挨拶をすれば相手に悪い印象は与えないだろう。意識的にしないとへらへらした顔になるから後でちゃんと練習しておこう。

 

「あ・・・うあ、み、みやこで・・・す」


 彼女は恥ずかしそうに小さな声で応えてくれた。


「うん、みやこちゃんだね。可愛い名前だね」


 素直に可愛いと思う。


「ねえ久下さん。貴光君は本当に一年生なの?あの顔大人が子供らしくて可愛いとか言ってる様に見えるわよ」


「ちょっと前に熱出して寝込んだら、あんな風になったのよ・・・。病院連れて行った方がいいかしら」


 主婦二人が不穏なことを言い出した。


 私はロリコンではない。普通に子供は可愛いのだ。

 よって主婦二人に説得しなければならない。失敗すると病院行きなんて嫌です


「本当に可愛いのを可愛いと言わないでどうするのですか。みやこちゃんの名前は響きがいいし。長い髪は綺麗で顔も人形のように整っていますよ。これを可愛いと言わないでどうするのですか」

 

 うん。まさに正論だ。

 おや?何で主婦二人は生温かい目でこちらを見るんだ?

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