決別の義
春日山城 柿崎邸
景家「母上ただいま帰りました」
母「おかえりなさい。あら、背中の可愛い女の子はどなた」
綾「えと、おはつにおめにかかりますははさま。かげいえさまのつまになります綾です。こんごともよろしくおねがいします」
母「かわいらしい子ね。あなたのお嫁になるの?」
そういって綾を抱きしめてた。
景家「母上、綾は為景様のご息女ですよ」
母「そうなの。あなたも長尾の一門」
景家「えっと、父上は」
母「利家様なら外に出てますよ。私は怒ってませんよ」
景家「母上は何もおっしゃらないのですか」
母「私はかまいませんよ。小雪、綾さんと景家の部屋に行ってなさい」
小雪「わかりました。綾さん行きましょう。若様のものを物色しましょう」
綾「えと、よろしいですか」
景家「綾の好きなようにしな」
綾「小雪さんについてきますね」
母「あなたはそこに座りなさい。少し話をしましょう」
居間に座るように指示された
母「さっき言ったように私は怒ってませんよ。父上は怒ってるみたいだけど」
景家「やっぱ怒ってるんですか」
母「父上は、武士として恥ずかしいとか嘆いていますよ。いつから裏切るのを決めたんですか」
景家「もしかすると、その場で決めたかもしれないじゃないですか」
母「いいえ。あなたは賢明な子です。いきなり裏切るようなことはありませんし、私たちを逃がすために忍びを使たではないですか」
景家「そうです。母上の言う通り上杉定実に会った時に決めました。あれの元にいても飛躍することはできない、そのために長尾に付きました」
母「後悔はしない」
景家「はい。後悔はしません。私には夢があります。この柿崎家を天下の名家にすることです。そのためなら、どんな決断でもします」
母「そう。ならあなたの自由にして夢をかなえなさい」
景家「はい。必ずやかなえて見せます」
母「楽しみに待ってますね。予定があるからここに来たんでしょ。すぐに予定を済ませて帰りなさい。もう、私たちとは会ってはいけません。今生のお別れです」
景家「それは言い過ぎでは」
母「あなたの決断にはそれほどの意味があるわよ。決意を持って決断しなさい」
そんな決断できるわけがない。天下か両親か
景家「母上たちの決断は固いんですか」
母「そうですよ」
景家「わかりました。母上今生のお別れです。私は天下を取って見せます」
母「そう。良かったわ。こんなので決意が鈍っているようでは、天下なんか夢のまた夢です。小雪たちを呼んできますね」
両親を捨てた。血のつながりのあるものすべてを切り捨てた。ここまで来たら後には下がれない