囚われの魔王様
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魔王の心臓の行方。
それは、アルベルトなりの対策だった。
魔族にとっての心臓。
それは致命的な弱点であり、敵地に渡るにあたって守ることは最重要だった。
アリシアを人質に、魔王をまんまと呼び寄せたシュテイン王子。
次に狙うのは、心臓をすべて奪って、不完全だった支配の術式を、完全なものにすることだろう。
何が何でも防がなければならない。
先手を取って、心臓は魔王城に置いていく――もちろん、戦力的には大きく弱体化するだろうが、それは必要な措置だった。
かくして必要な準備を終え、アルベルトはニルヴァーナの砦に出向いた。
たちまち王国兵に取り押さえられ、彼はシュテイン王子とイルミナの元に連れて行かれることとなる。
「心臓が、ありませんわ……!」
「貴様! 心臓はどこにやった!!?」
思った通りだ。
憤怒に染まったシュテイン王子の顔を見て、アルベルトは余裕の笑みを浮かべる。
「さてね。どこかに忘れてきちゃったみたいだよ」
そう、すっとぼけた。
「貴様ァ!」
「やれやれ、血が登りやすいのも考えものだねえ。駄目だろう、捕虜には優しくしておかないと」
へらへらと笑うアルベルトは、隙を伺っていた。
シュテイン王子だけなら、すぐにでもその首をねじ切れる自信があったが、隣にたたずむ少女は油断ならない。
それにしても、まさかこんな方法を取ってくるとは……。
やっぱりあの時、確実に仕留めておくべきだったか。そう考えていたが、
「……おまえは、誰だ?」
魔力の波長が違う。
気の所為かと思ったが、やはり違和感が強い。
不思議に思って、そう尋ねたアルベルトに、
「ふふ、何のことですか? 私は、イルミナですわ」
涼やかな笑みで、少女は、そう答えるのだった。
アルベルトには、魔力を封じる拘束具が取り付けられた。
目隠しをされ、そのまま王都に運ばれていく。
普段のアルベルトなら、この程度の拘束具は力ずくで取り外せただろう。しかし心臓を置いてきた今は、並の魔族と同様の実力しか発揮できないのだ。
「――さてと、しばらくは、大人しくしておくとしようかな」
精々、油断しておいて欲しいものだ。
どう転ぶかな。
アルベルトは見たこともない運送用魔導機の中、平然と眠りについたフリをするのだった。
「この状況で、よくもまあ眠れますわね」
「言葉に気をつけろ、ニセモノ。戦争を続けるための象徴の役割――最後まで担ってもらわなければな。バレるような真似は許さんぞ」
「やれやれ、怖いですわ」
シュテイン王子とイルミナ(?)は、ぺらぺらと緊張感なく喋り続けていた。
聞き耳を立てている魔王に、気がつくこともなく。
「それでも、ふてぶてしいですわね。敵地のど真ん中で、こうして眠っているなんて」
「ふん。蛮族には、命の危機すら無いらしいな」
彼らは、油断しきっていた。





