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【書籍化&コミカライズ】闇堕ち聖女は戦渦で舞う  作者: アトハ
14章 みんなが過保護過ぎるのですが!?
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暇です・・・

「アリシア様、1ヶ月は絶対安静です!」

「そうだよアリシア、訓練なんて許さないよ!?」

「僕たちなら大丈夫です。アリシア様は、休憩を取るのがお仕事です」


 リリアナが、いつになく恐ろしい形相で。

 アルベルトは、氷の彫刻のように美しい笑みで。

 ユーリは、うるうると涙を滲ませながら。


 三者三様、私をベッドに押し戻す。

 ……どうしてこうなった!?


***


 ――ハッ!?


 目を覚ました私――アリシアは、一生の不覚と絶望した。

 どうやらここは魔王城の救護室。戦地で意識を失い運び込まれるなど言語道断。

 幸い、戦いは勝利を収めたらしいが、あり得ない大失態に私は穴があったら入りたい気持ちだった。


 幸い傍には、忠臣、リリアナの姿。

 彼女なら、きっと私と同じ気持ちだろう。そんな訳で、


「明日から、訓練に戻ります!」


 私は、キッパリと宣言。


「!?」

「なまっていたのかもしれません。明日からは、訓練量を10倍、いいえ100倍に! まずは1週間は不眠不休で動ける体力を手に入れないとですね!」

「――魔王様! アリシア様がヤバイこと言い出しました!?」


 リリアナはあんぐりと口を開けると、即座にアルベルトを呼びに走り出し――


 ……あれ?

 と思う間もなく、ドタバタとアルベルト、何故かユーリまで引き連れてリリアナが戻ってきた。

 で、冒頭に戻る。



 どうも私は、戦いから実に数週間もの間、眠り続けていたらしい。

 激闘続きで、体が休息を求めていたのだろう。

 ダイモーンまでの全力疾走に、ディートリンデの戦い、ブリリアントでは結界解除に、イルミナの毒――たしかに、ちょ~っと無茶をしたかもしれないけど。

 それだけ馬鹿みたいに眠り続けたなら、もう休憩は十分ではないだろうか?


「大丈夫ですって! ほら、リリアナ? 私、昔から体だけは大丈夫でしたよね!?」

「アリシア様? 聖女チートで、無理矢理どうにかしていたのは大丈夫とは言いません!」


 どたばたと、リリアナとやり取りしていると、



「アリシアは、いつもこうなの?」


 アルベルトは、ちょっぴり呆れたような顔を見せた。

 最初に見せた動揺はすっかり押し隠し、いつものように飄々とした笑みを浮かべている。


 ここに居ると、やっぱり落ち着くな――

 そう感じるのも不思議だったけど、心は嘘を付かない。

 私が、ぽけーっと2人のやり取りを眺めていると、ぱちりとアルベルトと視線が合ってしまった。



「~~!?」


 やっぱり、どうにも落ち着かない。

 変な病気だろうか?



「アリシア、本当に無事で良かったよ。君に何かあったらボクは――」

「私は死にませんよ。王国を滅ぼすその時までは」


 冷静さを取り繕う。

 いつもと同じような案じる声が、何故かくすぐったかった。



 私はつとめて、軽い口調で言い返す。


 同時に、私はこの生き方を変えられないと思う。

 たとえあそこで死んでも、きっと後悔はしなかっただろう。

 同時に、アルベルトが死んでしまったらと想像したときの、胸を裂くような絶望も鮮明に思い出せる。

 なんて私は、身勝手なのだろう。


「アルベルト、皆さんは無事でしたか?」

「戦争で犠牲者が出るのは仕方ない。だけど結界が解除されたおかげで、ブリリアントを落とせたんだ。被害も最小限で済んだと思う――アリシア、お手柄だよ」

「そう、ですか……」


 おとり部隊に加勢できたら、また状況は変わっていたのだろうか。

 浮かない気持ちで、そう頷きつつ、



「私、この戦い方はやめませんからね。同じことがあれば――きっと同じことをしてしまいます」


 嘘は付けない。そう告げる。

 私にとって、あの場面で、そう行動する以外は考えられなかった。

 復讐――戦争の果てにある者を、私は未だに渇望している。同時に、戦争を終わらせるため、一緒に戦った仲間を生かすため。

 結局、捨てたつもりでも、そんな生き方は私に染み付いていたのだろう。



 予想通りというか、アルベルトは静かに目を閉じていたが、


「やっぱりアリシアは、アリシアだね。本当に――美しい生き方だよ」

「え?」


 しみじみとこっ恥ずかしいことを言い切るアルベルト。


「アリシア、無茶はしないでって言っても――無駄だよね……」


 苦笑するアルベルトは、随分と私のことが分かってきたように見える。

 私が、誤魔化すように笑おうとして――ふと……、



「もし無茶して、大変なことになっても――アルベルトなら守ってくれますよね?」


 いたずらっぽく。

 半分以上は冗談で。

 私が、そう笑いかけると――



「守るよ。何を捨てても」


 あまりにも真剣な答え。

 真面目な顔で見つめられ、私はついつい顔を背ける。



 また、変なことを意識してしまった。

 私とアルベルトは、ただの同盟関係で、ただのパートナーで、良いライバル関係で――ああ、どれもこれも、イルミナが変なことを言ったせいだ。

 よし、次に会ったらぶった斬ろう。



「アリシア様、どうやったら休んでくれますかね?」

「ワーカホリックなんですよ、アリシア様……」


 一方、ど失礼なささやきを交わすのはユーリとリリアナ。

 救護室の中は、今日も平和だった。


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