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【書籍化&コミカライズ】闇堕ち聖女は戦渦で舞う  作者: アトハ
13章 ブリリアントの要塞都市の戦い
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激変する戦況

 戦況は激変した。

 魔族にとっては猛毒となる結界に阻まれ、魔族たちはたちまち窮地に陥っていた。更には追い打ちをかけるように、


「悪しき魔族を滅せよ!」

「神の加護は我らにあり!!」


 レジエンテの兵士たちが、一気にブリリアントになだれ込んできた。


「いったい、どこにあんな兵力が!?」

「隠匿魔法!?」


 レジエンテの兵力が、予備兵力としてブリリアント要塞都市の周囲に待機。タイミングを見計らって、一斉になだれ込んできたのだ。



「嘘……、だろう?」

「嵌められたっていうのか、俺たちは!?」


 おとりを買って出た魔族たちは、瞬く間にパニックに陥った。

 結界により力を封じられ、結界から吹き出している毒に体を蝕まれ、到底、満足に戦えない状態。その矢先の敵の増援である。



「落ち着くのじゃ!」


 混乱に陥る魔族たちに、呼びかける者が居た。

 和服衣装に身を包んだ狐耳少女――ライラは、毒に苦しむ仲間たちを視野に入れながら、


「アリシア様なら、この程度は予期しているはずなのじゃ!」

「で、でもよう?」

「我らがここで崩れたら、作戦はおしまいなのじゃ。今こそ聖アリシア隊の底力を見せるときなのじゃ!」


 そう勇ましく呼びかける。

 更には持っていた治癒の魔道具が、結界の毒の治療にも使えることを発見し、味方を鼓舞していった。



「アリシア様が、作戦を成功させるまで!」

「俺たちが、ここで倒れる訳にはいかねえ……!」


 再び闘志を燃やした魔族たちは、不利も顧みず、王国兵たちに決死の抵抗を続けるのだった。


***


「くっ……、厄介な!」


 私は焦りながらも、自分とアルベルトを守るように浄化魔法を放つ。じわじわと体を蝕む毒を打ち消し続ける必要があり、そう長くは持たない対処法だった。



「完全に、やられましたね」


 待ち伏せ。

 こちらの策が読まれている。



「随分と好き勝手やってくれたもんだ。だけど――」

「ええ。このままやられる訳にはいきません」


 どうして、こうなったのか。

 考えるのは後回し。このままでは、魔族たちはまともに戦えない。またたく間に全滅してしまうだろう。



「覚悟……!」

「舐めるなっ!」


 突っ込んできたレジエンテの兵士を、アルベルトが豪快な魔法で吹き飛ばした。位置は完全に割れてしまったが、もう出し惜しみはできない。


 一旦、制御装置は後回し。

 結界の魔術式を分析した私は、そのコアがブリリアントの中央部にあることに気がついていた。


「アルベルト、リリアナ。付いてきて下さい!」


 まずはこの結界をどうにかしなければ、戦いにもならない。

 私たちは、結界の中心を目指して走り出すのだった。


***


「ほら、早く治癒魔法をかけなさい」

「はあ、はあ。まったく、なんって人使いの荒い!」


 私は、フローラに命じて、パーティに治癒魔法をかけさせた。


 魔力はできるかぎり温存したい。腐っても聖女であるフローラは、毒を浄化する魔法を得意としていた。この状況で逆らっても死ぬだけだと悟ったのか、彼女は予想に反して素直に従っている。



「アリシア、良くそんなに動けるね?」

「魔女といっても、元は聖女ですから。結界の効果も薄いのかもしれませんね」

「うらやましい限りだよ」


 この中で一番つらいのは、アルベルトだろう。

 大粒の汗を滲ませ、それでも辛さを顔に出さないように、薄っすらと笑みすら浮かべてみせた。


「それにしても、アリシアは凄いね。この状況でも結界を分析して、そのコアの場所を特定するなんて」

「すいません。ここから魔力を送り込んで破壊できればよかったのですが……」

「相変わらずとんでもない発想をするね、君は……」


 アルベルトが、静かにそうため息をつく。


「本当に、君が味方で良かった――」

「それは私もです。こんな状況でも希望を失わずに居られる――隣にアルベルトが、頼れる仲間が居るおかげですよ」


 同時に、死にたくないと強く思ったのも、ここに居る全員の、そして魔族たちのおかげだ。

 こんなところで諦めてなんて居られない。



 私たちは、入り組んだ路地を駆けていく。


「貴様らを倒せば、戦争は終わりだ。死ねえええええ!」

「次から、次へとっ!」


 次々と襲い来る兵を一刀両断し、私は道を突き進む。



 魔力の流れを辿るように。

 急いで、だけど冷静に。



 そうして駆け抜けた先で……、


「あった。これが、この結界のコア!」


 それは見たこともない大きさの魔石。

 要塞都市のちょうど中央部――すなわち魔方陣の中心に、魔力を供給するための魔石が設置されていたのだ。


 まずは、あの魔石を破壊する。

 その後、結界を打ち消すための魔力を注いでやれば、この局面を打開できる……、



 降って湧いた救いの糸。

 一瞬、注意力が欠けてしまったのだ。ふらふらと吸い寄せられるように近づいてしまい……、



「アリシア様、危ないっ!」

「アリシア!」



「……へ?」


 私が、振り向くと同時、


「いらっしゃい、お馬鹿な魔女さん?」


 そんな声と同時に、視界に映ったのは白銀の少女。レジエンテの王女にして、最前線で指揮を取る少女の名は、



「あなたは――イルミナっ!」


 完全に死角からの一撃。

 体制を立て直す間もなかった。狂気的な笑みを浮かべたまま、イルミナは天高くから舞い降りると、



「がっ、何……を――」

「さようなら」


 手にした短刀で、私の胸を深々と突き刺した――

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