表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化&コミカライズ】闇堕ち聖女は戦渦で舞う  作者: アトハ
11章 ディートリンデ砦の戦い
61/107

奪還、ディートリンデ砦

 そうして戦闘が始まった。


「これも主のため――お覚悟!」


「うわっ、なんだこいつ!?」

「おのれ、ちょこまかとっ!?」


 ライラが手にした魔道具を翳しながら、縦横無尽に戦場を駆け回る。

 彼女が振り回すのは、祖母の形見だという愛用の刀。久々の戦場で思う存分刀を振るえるとあって、随分と活き活きとしている。


「ほら、行きなさい。フローラ!」

「あー、もう! これで完全に反逆者じゃない――なんで、こんなことに!」


 一方、リリアナはそんな命令を下し、フローラが敵兵に挑みかかる。

 おとりのような扱いであったが、従属紋による命令を受けたフローラは、リリアナには逆らえないのである。


「ヒィィィ!?」

「あー、もう! それぐらいでビビらない!」


 ひゅんひゅん飛び交う魔法を前にして、フローラは半泣きになっていた。

 これまでは聖女として、ぬくぬくと後で指揮を出していただけだったのだろうが、これからは最前線でバシバシ働いてもらうとしよう。



「リリアナもライラも……、おとりみたいなことさせてごめんなさい」


 ――作戦のため、私は特務隊の仲間と別れてある場所に向かっていた。


「アンデットの血涙湖、ね……」


 私は、ごくりとつばを呑んだ。

 試しに近くに落ちていた小石を投げ込むと、じゅわっという音を立ててまたたくまに蒸発していく。不死のはずのアンデットを溶かし、その生命を奪うから名付けられた恐ろしい湖。果たして、どうにか潜れるだろうか。


「セイントプロテクション!」


 私は、細心の注意を払って防御魔法を全身にまとわせる。

 静かに手を触れ、何ともないことを確認する。



「……よし」


 恐る恐る湖に潜り、私は全身がどうもないのを確認する。

 強烈な酸でできた湖だ。流石に恐ろしく思ったが、少しの間なら問題なく防御魔法で耐えられそうだ。


 イルミナが見せたという電撃戦。血涙湖を通じたディートリンデ砦への奇襲――私は、それを再現しようと考えたのだ。


***


 湖の中を潜り、私は砦に向かって移動する。

 血のように赤い湖はどことなく不気味で、視界も悪い。私は迷わぬよう慎重に進み、



「ぷはあっ」


 私は、砦の傍と思われる場所に上陸する。


「早く終わらせないと。リリアナやライラたちに被害が出る前に――」


 静かな決意とともに、私が砦に向かって歩き出したとき……、



「まさか本当にここに現れるとは――イルミナさんの予想は見事ですねえ」


 一人の男が、目の前に現れた。

 更には私を取り囲むように、数百の王国兵が姿を現すではないか。


 ――読まれてた!?

 静かに焦りながらも得物を取り出し、私は武器を男たちに真っ直ぐ向ける。



「どうして、ここが!?」

「あの人数を相手に、馬鹿正直に突っ込んでは来ないだろうと。それよりは奇襲を――私が使ったのと同じルートを使うはずだと、イルミナのやつが予測したのですよ」


 ディアベルと名乗った男は、聞いてもないのにペラペラと喋りだした。

 王国兵たちが、じりじり、と距離を詰めてくる。イルミナ――またしても奴に、一杯食わされたというのか。


 状況は、あまり良くはない。

 この人数とイルミナを相手にするのは、極めて分が悪い――しかし、警戒しつつ周囲を見渡しても、その姿は見当たらず。いったい、どこにいるのだろう?



「くっくっく。まさか、こうも俺に都合良く事態が進むとはなあ?」

「どういう意味ですか?」

「また地下で可愛がってやるよ。大人しく投降しな?」


 ディアベルが、薄ら悪い笑みを浮かべた。


 その顔には、よくよく見れば見覚えがあった。

 以前は、もっと小さな部隊のリーダーに過ぎなかったはずの男。私たちが一度は助け、何故か罰せられることになった――そして、地下での取り調べに面白半分で加わっていた……、



 そう、まさかあなたとここで会えるとは。


「あはっ、随分と昇進したみたいですね?」

「何がおかしい?」

「だって、可哀想じゃないですか。せっかく偉くなったのに――ここで呆気なく殺されちゃうんですから」


 私はそう言いながら、一気に近くに居た兵士に斬りかかる。

 支援魔法が多重がけされた私の鎌は、あっさりと周囲に居た数人の男に血の華を咲かせ――それが開戦の合図となった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼コミカライズはじまりました▼
lzmac5arhpa97qn02c9j0zdi49f_1ad4_p0_b4_4zqc.jpg
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ