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【書籍化&コミカライズ】闇堕ち聖女は戦渦で舞う  作者: アトハ
10章 魔王様の大切な人
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魔道具って便利ですね!?

「ここを、こうして――こう!」

「な、なるほど!」


 数時間後。

 私は――研究棟の面々と、魔道具の術式について熱く語り合っていた! 時間は深夜になろうとしていたが、私も研究員たちもすっかり夢中になっていた。



「いっそのこと威力だけを求めるなら、もっと術式を増やしても良いかもしれませんね?」

「そ、そんなことをしたら、扱い間違えると自爆してしまうのでは!?」

「ふっふっふ、そこはですね――」


 実のところ、魔道具いじりは数少ない私の趣味である。

 闇魔法を中心に栄えた魔族の魔道具は、私にとっては物珍しく興味は尽きない。



「さすがは王国の聖女! 魔術式にここまで精通しておられるとは……!」

「褒めても何も出ませんよ? 私も魔族の術式をこの目で見られて、とても楽しいです!」

「はっはっは、そうだろう、そうだろう!」


「アリシア様、そろそろお時間が――」


 リリアナが、おずおずと声をかけてきた。

 

 あっと、いけない。

 明日も訓練があるのに、ついつい夢中になり過ぎてしまったようだ。



 ここに来た、当初の目的は――

 記憶を頼りに、私は空中にいくつかの魔術式を描き出した。


「その……、こんなものを作って欲しいのですが――」


 私がここに来たのは、魔道具を新調するためだ。

 私がせっせと作って特務隊のみんなに渡していた魔道具は、王国での事件で失われてしまったのだ。またイチから作り直していては、時間がかかりすぎる。確かな腕を持つ者の助けが欲しかったのだ。


 研究棟と言いつつ、作っていたものはシンプルな魔術式が刻まれた爆弾のみ。最初は魔道具作りを任せることに不安もあったが、今は、ここに居る研究員たちの腕は確かなものだと確信していた。


「見たことのない術式ですな。それは?」

「以前、私たちが使っていた魔道具の術式です。できる限り小型化して、せっかくなので量産できればと――」


 報酬は、特務隊の経費から落とすとして……。

 私の提案に、研究員たちはあんぐりと口を開いていた。


 さ、さすがに、こんな急な依頼は迷惑ですよね。



「それは――王国の聖女の魔道具の術式!」

「企業秘密なのでは? 我々に教えても大丈夫なのですか!?」


 と思ったら、全然、別の理由だった。


「私たちは、ともに王国と戦うパートナーじゃないですか――知ってる知識を提供するのは当然ですよ」

「そう、……そうだな」


 思えば、王国では足の引っ張りあいに巻き込まれ、真っ当な成果は、誰にも認められることはなかった。どうしてあの人たちは、誰も大切なもののために協力しようと素直に思えないのだろう。


 私にとっては、当たり前のこと。

 それでもフレッグは、しみじみとうなずき、



「依頼、たしかに承った。我々が、できる限り協力しよう」


 と力強く言い切るのだった。



***


 数日後。

 私の執務室には、研究棟の面々が寄越した魔道具のサンプルがいくつか届けられた。



「アリシア様、どうですか?」

「少々のチューニングは必要そうですが――バッチリです。私たち用の術式と――こっちは……、魔族用の物ですね」


 私が、魔道具を手に取ると、リリアナが恐る恐るといった表情で手に取った。


 それは簡素な金属板に、魔術式を刻み込んだだけのシンプルな作りだ。おそらくは試作品なのだろうが、彫られた魔術式の精度は十分に見える。


「リリアナ、どう思いますか?」

「はい。相変わらずアリシア様の術式は美しいなと――」

「いや、そうじゃなくて……」


 大真面目な顔でボケるリリアナに突っ込みつつ、



「使い物になると思いますか?」

「真面目に分析するなら――アリシア様の規格外の魔道具に比べれば、どうしても効率は下がりますが……、十分だとは思います」

「やっぱり、使い慣れた魔道具が一番ですからね」


 リリアナの大げさな褒め言葉は置いておいて、たしかに私も自分で作った方が扱いやすいとは感じていた。

 それでも、実戦で使えないことはないと思う。



「よし、そうと決まれば行きましょうか!」

「……どこに?」

「まずはライラたちに、魔道具のありがたさを理解してもらわないとね」

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