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聖女、忠実な侍女を仲間にする

更新間隔、空いてしまってすいません。

新章スタートです・・・!

 神聖ヴァイス帝国を恐怖のどん底に叩き落とした宣戦布告の数日後。

 私──アリシアは、自室で落ち着かない日々を送っていた。


 魔王からは「今度こそ城でゆっくりしてよ」と言われている。

 戦力として戦争でこき使われることも覚悟していたし、何ならそれを望んですら居た。しかし実際は、完全なる放置である。

 それならせめてと訓練室に向かったが、なぜか幹部総出で「アリシア様はお休み下さい!」と止められる始末。

 一体、私は何を求められているのだろうか。



「失礼します」

「は~い。……って、リリアナ!?」


 そんな日々の中、突如として部屋を訪れたのはリリアナだった。

 フローラにより従属紋を刻まれ、ミスト砦の戦いでは人質に取られた私の大切の相棒だ。徹底的にフローラたちに痛めつけ、最後には私の精神干渉魔法でボロボロにされていた。

 そんな彼女の無事な姿を見て、私は心底ホッとする。

 安心したと同時に──


「リリアナ? なんですか、その格好は?」


 私は、まじまじとリリアナを見てしまう。


 彼女は、なぜか侍女の服を着ていた。

 ブロンド色のショートヘアに載せられたカチューシャが、とても似合っている。

 しかし特務隊の制服を見慣れた私にとって、違和感しかなかった。



「その……。少しでもアリシア様の役に立ちたくて──」

「立ちたくて?」

「私をアリシア様の専属侍女にしていただくように、魔王に頼みこんだんです!」


 恥ずかしそうにリリアナ。


 ──私が魔王城で時間を持て余している間に、何とたくましいことを!?

 驚愕の目で、私はリリアナを見つめた。



「アリシア様のお世話が出来なくなるのは残念ですが、旧知の者が身近に居た方がアリシア様も安心するだろう、との魔王様の判断でございます」


 リリアナに続いて入ってきた侍女──アンネと言うらしい、がそう言った。

 いきなり立場を奪われる形になるが、それがアリシア様のためになら、と不満を口にすることもなく、率先してリリアナの教育係を引き受けたらしい。



「ごめんなさい。結局、私はまったく主人らしいことが出来ませんでしたね。仕えていて面白い主人では無かったですよね」

「はあ……」


 私の謝罪に、なぜかアンネは頭を抱える。


「今のアリシア様は、我が魔導皇国の王妃なんですよ? そのように侍女に謝る必要なんてありません。もっと贅沢三昧を尽くしても罰は当たりませんよ」

「そう言われても……」


 前世は、殆どの時間を聖女として魔族との戦いに費やしたのだ。

 立派なお城の中より、兵士が入り乱れる戦場の方が落ち着いた。ふかふかのベッドより、簡易的に布を敷いて野宿した方がよく眠れる気がする。

 困惑する私とアンネを、リリアナがちょっぴり呆れた顔で見ていた。


***


 その後、気を遣ったアンネが退室し、私とリリアナは2人きりで部屋に残された。



「アリシア様、本当に申し訳ありませんでした──」

「もう今更、王国に戻ることは出来ませんよね。ごめんなさい、リリアナ。私のせいで、すっかり巻き込んでしまって──」


 思わず謝罪を口走った私だったが、同時にリリアナまで深々と頭を下げていた。


 ──あれ? 

 何を謝られているのだろう。


「アリシア様が大変なときに、一人あのような場所に置き去りにしてしまいました。結局、力及ばず、お救いすることも出来なかったばかりか、怨敵に捕らわれアリシア様の邪魔になってしまいました」

「そんなに自分を卑下しないで下さい」


 あの時の私には、王国に仇なす魔女の疑いがかけられていたのだ。

 巻き込まれることを恐れて、私から距離を取るのは当たり前の判断だろう。


 ──そんなことより………。

 力及ばず、って何のことだ?



「リリアナ? あなたはあれから、何をしていたのですか?」

「もちろん、アリシア様を救い出そうと……」


 何でもリリアナは、特務隊で有志を募り、聖女様・奪還大作戦を企てていたらしい。というか作戦は決行され──アッサリと捕まり、気がつけばフローラの奴隷にされたとのこと。

 思わぬ行動力を見せたリリアナに、頭がくらくらした。



「何やってるんですか!」

「アリシア様!?」

「なんで、そんな危険なことをしたんですか!? 私の処刑は覆りませんでした。私のことなんて、放っておいて幸せになって欲しかった……」


 いきなり声をあげた私に、リリアナは目を丸くした。

 しかも特務隊のほとんど全員が、有志として立ち上がった?

 いったいあの人たちは、自分の命を何だと思っているのか。


「ぶつぶつ。これは、まとめて後で大説教ですね。私のために命を賭けるなんて、あまりに馬鹿けてますよ」

「たとえアリシア様に怒られても、私たちは同じことをすると思います。大切な人の危機を黙って見過すなんて、どうしても出来ませんから」

「リリアナ……」


 真摯な顔で、リリアナが言う。

 決して曲げられない意思を感じる。

 ──リリアナの頑固さには、困ったものだ。



「そういえば身体はもう大丈夫なのですか?」

「はい、心の傷は癒えるのは早いんですよ。フローラには従属紋も解除していただきましたし、もう大丈夫です」

「フローラが、素直に従属紋を解除したのですか?」

「はい。魔王さんの説得(・・)もあって、快く(・・)解除して下さいましたよ」


 宣戦布告の"自白"といい、魔王はいったいどんな手を使ったのだろう。

 聞くのがちょっぴり怖くなる。



「アリシア様、どこまでもお供します。これから、よろしくお願いします」


 リリアナは、その場で深々とお辞儀をした。

 恐らくはアンネが仕込んだのだろう。

 思わず見惚れてしまうほど堂に入った一礼。

 


 ──良いのだろうか?

 私の胸に押し寄せるのは、そんな迷い。

 もう、どうしようもなく巻き込んでしまったけれど。

 王国を滅ぼすための戦い。それはきっと、超えてはならない最後の一線だ。


 そう。今の私は聖女ではない。王国に牙を剥く魔女なのだ。

 私は、これからも私の道をゆく。黒い心に身を任せた自分のためだけの戦いだ。

その先に何もなくても、私がその道を引き返すことは無いだろう。


 リリアナのことは、今でも大切な仲間だと思っている。

 こんな暗い道に突き合わせて良いのだろうか?


「リリアナ? 今の私たちは、明確な王国の敵です。祖国を裏切ることになります。──本当に良いんですか?」

「覚悟の上です。この心は、とっくの昔にアリシア様に捧げておりますから」


 私の弱気な言葉に返ってきたのは、迷いの無いそんな誓い。

 そうして魔王城での生活が、本格的に始まろうとしていた。

という訳で2章スタートします!

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