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私がバケモノなら、生み出したのは・・・

 私──アリシアが隠蔽の術を解除すると同時に、魔族の群れが王国軍の野営地を襲撃した。


 自らの有利を疑っても居なかった王国軍は、またたく間に大混乱に陥った。

 まともに組織立って反撃することもかなわぬ王国騎士団を、魔王軍が蹂躙してゆく。

 その様子を、私と魔王は砦の中から見守っていた。



「なにあれ。指揮系統がまるでなっていないね。まるで素人の集団じゃん」

「王国騎士団を中心に編成したのでしょう。実戦経験なんて、殆ど無かったでしょうからね。何だか、このまま攻め切れてしまいそうですね?」

「いいや、過信は禁物だよ。予定通り、しばらくしたら撤退させよう」


 そうしている間にも、各部隊から続々と報告が飛び込んできていた。


 各野営地に居る隊長が、突発的な事態に対応しきれていないようだった。

 統率の取れた動きを見せる兵はおらず、中には混乱のままにあっさり逃走する者まで現れる始末。混乱の中でこそ支えとなるはずの聖女・フローラは、遠く離れた本陣に引きこもったまま姿を現していないらしい。



「ねえ魔王さん、私も向こうに加わったら──」

「駄目に決まってるでしょう」

「あはっ、残念」


 私は、軽く舌を出す。


 それからしばらく経ち、魔王軍は予定通りに撤退を始める。

 王国軍を誘い出すための作戦だ。

 ──作戦は次の段階に移行した。


***


「はっはっは、聖女様の祟りだって! あいつらも、この状況でよくもまあ撤退理由を作り出したもんだね!」

「王国軍がここまで弱くて、こんなにも思い通りに動いてくれるなんて。予想外でしたね」


 撤退を始めた兵たちを見ながら、魔王は楽しそうに笑っていた。



 この作戦の最大の懸念は、王国軍が誘いに乗ってくれるかであった。

 しかし魔王軍が撤退していくのを見て、王国騎士団の指揮官は何も違和感を持たなかったらしい。「我らには、聖女フローラ様のご加護が付いている!!」などと声をあげながら、魔王軍の追撃戦に向かっていった。


「向こうは大丈夫なんでしょうか」

「あいつらを信じてあげてよ。まして今回は"聖女様"の加護はこっちにあるんだ。何も問題はないさ」


 魔族のことに一番くわしいのは魔王だ。

 彼がそう言うのなら、きっと大丈夫なのだろう。

 ──私は、私の戦場に向かうだけだ。



 フローラの居る王国軍の本陣の位置は、既に掴んでいた。

 圧倒的に優位な状態で、魔族を相手に引いてなるものかと意地を見せたのだろう。野営地が奇襲を受けても、フローラは本陣を下げることを選ばなかったようだ。


 その油断が、命取りになるというのに。

 私と魔王は、フローラを討つために戦場に向かうのだった。

 

***


「て、敵兵っ!」 

「ま、まさか──おまえは魔女・アリシア!?」


 最初に私たちに気がついたのは、見覚えのある近衛だった。

 シュテイン王子に忠誠を誓い、散々、地下牢では私に尋問を繰り返した男だ。



「あはっ! お久しぶりですね。そして、さようなら!」


 私は、一気に距離を詰める。

 反応を置き去りにして懐に潜り込み、巨大な鎌を一閃。声を上げる隙すら与えず、一刀両断する。



「慌てるな! 賊はたったの2人だ!」

「なんとしてでもフローラ様をお守りしろ!」


 腐っても王族を守る近衛隊。

 すぐに陣を組み、護衛対象のフローラを守ろうとする姿勢は悪くない。

 悪くないが──



「遅いっ!」


 私は、縦横無尽に戦場を駆ける。

 黒い風が吹き、漆黒の鎌が振るわれる。吹き上がる血飛沫。

 戦場に血の雨が降った。

 


 抵抗すら許さない圧倒的な実力差による蹂躙。

 向こうでは魔王が、見たこともない魔法を使って、これまたみるみるうちに敵を殲滅していた。


「ば、バケモノめ……!」


 怯えた近衛が、後ずさりながら私をそう称した。



 ──もし私がバケモノだとしたら、生み出したのは、あなたたちだ!

 人間を手にかけてしまった。

 少しは、心が痛むかと思っていたけど……。

 胸に押し寄せるのは、ただ少しの充足感だけだ。



「なんなのよ、何なのよあなたたちは──!」

「久しぶりね、フローラ」


 立ち塞がる近衛は、すべて斬り捨てた。

 逃げる敵は、すべて皆殺しにした。

 ──そうして、ついに私は、フローラの元にたどり着いた。

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