王太子妃の阻止、成功
両親からの言葉は、俺の意見の否定だった。
それはそうだろう。
俺はここまで、感情論を基にした発言しかしていないのだから。
俺たちの婚約が政治である以上、感情論が通用しないのは分かりきっている。
また、彼女の悪行についても『俺が女一人を御しきれない』と見る風潮がある。
婚約者というのは、そういう立場なのだという事だ。システィナの悪行は俺の責任にもなる。
「陛下にはいくつか考えて頂きたいと思います。
まず、現時点での彼女の振るまいが王妃となっても改善されなかった場合、我が国の不利益となること。
イジメを行う性根の腐り具合はまだ許せる範囲ですが、それを隠すことも出来ない稚拙さは国の顔となる王妃に相応しくないことは明々白々。その点は誰もが共有できる認識であると考えます。
また、妃殿下の言う「まだ若い」はいつまで通用する話でしょうか?
我らはまだ王位や爵位などといったものを持たぬ若輩者ではありますが、それでも尊き血を引く者と自覚し、すでに責任を持つ身であると思っています。彼女はいつまで、その自覚が無いことを許されるのでしょうか」
俺の責任の話は横に置き、前提条件をしっかり認識してもらわないといけない。
今の彼女が王太子妃、俺の伴侶として失格であるという認識を持ってもらうところから話を進めねばならない。
俺の目的は「婚約解消」ではなく、「今のシスティナを王太子妃にしない」なのだ。婚約解消はあくまでも手段である。そこを誤解してはいけない。
この一点に関して言えば、誰もが頷く話でしかない。
「学園を卒業するまでだ。
だが、忘れるな。現時点であの娘はお前の婚約者なのだぞ。それは、ノルド公爵の娘との婚約という話なのだ。
後ろ盾はどうする。ノルド公爵がお前を王太子として認めるのは婚約があるからこそだ。お前は張りぼての王太子になりたいのか?」
言質一つ目、ゲット。
学園卒業までにイジメを行う性根を改善できなければ、婚約解消は成ると言わせられた。解釈のしようにもよるが、これで最悪を回避することは可能だ。
幸先の良いスタートとしか言いようがないな。
ただ、そのついでに小言も貰う。
親父が言いたいのは「俺が自分でどうにかしろ」「どうにも出来なければ王太子の地位から降ろす」という事だ。
まぁ、アレが王太子妃になれないという意味であれば、どういった意味でも構わないがね。
俺はここで視線を少し母親である王妃と、ノルド公爵、システィナの父親の方に向けた。
言葉は出さない。
ただ、視線を向けた意味は通じるだろう。
この二人はシスティナの教育を行っていたのだから、今回の件についても責任がある。
だから責任を取るか取らないか、そこをはっきりしてもらおう。