可愛い可愛い日向さん
衝動書きです。
本当に深く考えないでください。
私は可愛い。それはもう、とっても!
私の姉はとってもかっこいい。
私は可愛いものが大好き。
私は姉より男前な人を知らない。
だから、付き合う人はかっこいい人がいいな。
私より可愛くない人よりずっといい。
ーーー
私の背中が壁にぶつかる。
ずり込むようにして座り込むと目の前にいる女子三人が悔しそうに顔を顰めた。
うふふ。
そうでしょう?
可愛い仕草でしょう??
私は少し下げていた顔を上げる。
上目遣いでうるうるの瞳を彼女達に向けた。
「なんで...?」
私はぷっくりと瑞々しい唇の前に丸めた左手を当て首をほんの少し傾げた。
ぱっちり二重に長いまつ毛がよく見えるように頭をほんの少し前に力なく下げ、もう一度ゆっくり瞬きする。溜まっていた涙が一粒、芸術的に頬を濡らす。我ながら完璧だわ。
「あんたねよくそんなこと言えるわね!」
そう言って代表格の金髪ギャルがぎりっと音がするくらい歯ぎしりした。
見なくてもわかるわー。
醜いわね。見たくない。
極力三人の顔を見ないように今度は顔を萌え袖で隠した両手で隠す。
「っ!私達言ったよね!拓海くんにはもう、近付くなって!なんで事してくれたのよ!」
「優花!落ち着いて...。」
「落ち着いていられるはずないでしょ!!」
「分かってる、けど...」
「こいつのせいで、拓海くんは...!」
「友香、言っても無駄よ?私も優花と同じくらい怒って居るんだから。」
「玲奈...もちろん、私も怒ってるよ?でも、ここはちょっと...。」
そう、ここは放課後の教室。
クラスメイトは半分くらい帰ってしまったけど、まだ人が疎らにいる。
「篠原が、どうかしたの...?」
私は両手を下げて心底心配そうに尋ねた。
三人はうっと一瞬気まずそうにする。
「あの、よく分からないけど...その、私、何かした...?」
ゆっくりと少し震える声でそう言うとクラスの何処からかため息が聞こえた。
私に見とれてるのね。わかるわ。
私はとっても可愛いもの。
三人は本当に何も知らなさそうな私にどうすればいいのか迷っていた。
私が上目遣いで彼女達を見たが、彼女達はないも言えず時間ばかりが過ぎていく。
それを壊したのは、慌ただしい複数の足音だった。
「おい、何してるんだ!」
どうやら、件の篠原が来た。
三人は気まずそうに彼を見ている。
「あの三人が、日向を突き飛ばしたんだ!」
「すごい形相で追い詰めていたんだから!」
クラスメイトの何人かも同意して口々に篠原に告げ口する。私がやられていた時に助けてくれなかったくせに、こんな時ばかり仲間の振り、ね?
「やめてくれ...!日向は何も悪くないんだ...」
え...なに?
なんか始まっちゃったんだけど...。
「まだ、言ってなかったの?」
玲奈がそう言うと、篠原は頷いた。
ため息をついた玲奈が優花を引っ張る。
「ごめんなさい。私の早とちりみたい。」
友香がそう言って頭を下げた。
しかし、瞳の奥には怒りが潜んでいる。
凄く怖い。
「えっと、説明、してくれる?」
首をゆっくりと横に傾げて上目遣いのまま友香を見つめた。
とにかく説明が欲しい。
どういう状況なのかさっぱりだ。
「それは、拓海くんから聞くべきね。早く言ってくれる?」
怒りをにじませた玲奈の声に臆するというよりは緊張した面持ちで篠原は私の元まで来た。
「...好きです!俺と付き合ってください、日向さん!」
そう言って座り込んでいる私に手を差し伸べた。
ないこの茶番。
「...えっと、私、男ですよ...?」
そう言って戸惑うと、篠原は顔を赤くしたまま答えた。
「それでも、美しいあなたが好きです!」
ぎゅっと目をつぶった篠原は確かにイケメンだ。
白馬に乗ってそうな王子様には違いないが、私の恋愛対象は女性である。全くときめかないし、むしろキモイとすら思ってしまう。
「すみません、私、恋愛対象は女性なんです...。」
そう言って顔を下げる。なんで男に公開告白されなくてはならないのか。
恥ずかしくて仕方ない。
「それでも、好きなんです!お願いです、付き合ってください!」
私は髪の毛が醜くならないほどの激しさで首を振る。
男と付き合うなんて絶対嫌。
今日は厄日だ。
利用されてるとはいえそれなりの関係を気付いていた彼女らには突き飛ばされて、男に告白され嫌と言ってるのに全然引下がる気配がない。
もう、やだ...
ぽろと涙がこぼれ落ちる。
泣きたくなのに...反射的に涙が流れた。
「ちょっと、何してるの?日向さん、嫌がってるでしょ?さっさと立ち去って。」
私の目の前に庇うように誰かがたった。
私は目線を上にあげた。
「月影さん...?」
私が呼ぶと彼女は私の方に振り返り、立たせてくれた。
「春。ハルでいい。」
そう言って薄く笑う。
「ありがとう、ハル。」
ハルに感謝の念を含めて笑う。
急な展開についていけなくて泣いてしまったあとを隠すようにすぐに顔を下げた。
「...別に。こっち来て。」
さりげなく涙を拭いてくれたハルにすごくときめいた。す、スマートだわ!
「そんな、俺はまだ...。」
そう言って縋るように篠原がこちらに来る。
キモイ...!
咄嗟にハルのシャツの端を掴んでしまう。
春はそれに気付くと優しく私の手をシャツから離した。
拒絶されたと思ってハルを見るとまっすぐ私を見ていた。
信じてと強く瞳で語りかけられている気がして咄嗟に頷いた。
ハルは立とうとする篠原の顔を思いっきり足蹴りした。
「キモイんだよ。日向、怖がってんだろうが。」
こちらにまで冷気を放出しながらハルが多分篠原を睨みつけているんだと思う。
篠原はすっかり顔を青くした。...いや、蹴られた右顔は真っ赤だが。
「俺、諦めないから!」
篠原はまっすぐ私を見る。
え、諦めて...
「ちっ、二度と来んな。」
ハルは私の手を引いて教室をさる。
私は大人しく彼女について行った。
ーーー
「あの、ハル...。」
靴箱の前まで来て私は彼女を引き止めた。
「あ、ごめん。大丈夫?」
ぶっきらぼうに彼女がいうのが可愛くて私は笑った。
「ふふ、ありがとう。すごくかっこよかった。」
私がそういうとハルは顔を少し赤らめ微笑んだ。
うん、可愛い!
「あのね、ハル。私、ハルと友達になりたいな。ダメ、かな?」
顔を覗き込むように必殺上目遣いでそう言うと彼女は手で鼻と口を隠した。顔は真っ赤。
効果は抜群ね。
「いいよ。私が守ってあげる。」
今度は照れくさそうにそう言って笑った!
かわいい!
かっこいいのに可愛いとか反則!
「えへへ。よろしくね、ハル!」
私がハルの手をとって握るとハルもはにかみながら笑ってくれた。
嬉しい!
絶対手放したりなんてしないよ、私の姫様?
日向 秋は可愛いを追求したむしろ女子な男の娘です。
合気道もやってるので弱くないです。
ただ、暴力は可愛くないと思ってるので滅多に使いません。
自分が可愛い事を小さい頃からよく知っています。また、可愛い自分が大好きです。
今は女装していますが、最近ハマってるだけで大きな意味は無いです。