移ろい
垂れこめた雲から
光が割れたら
僕はもう帰る時間
風が海を
触れるように渡った
打ち上げられた藻には
干からびるのを
待つばかりの思い出が
こびりついていて
幾度も陽に
洗われていくのだろう
隅々まで
暖められていくのだろう
潮騒には翼があって
ただ駆け抜けていく
白波と白波の合間
砂に書いた
伝言ほど
確かな伝え方を
僕は知らない
波の跡に
細い流木で引く
線と曲線
組み立てられ
いつか旋律となる
やがて
雨は降るのだろう
掻き消えていくほど
確かな
さようならを
僕は知らない