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明日の風になれ

あっという間に三月になった。なんか、バレンタイン後は早かったような気がする。忙しかった二月も終わり、もうすぐで春になる。

あれから、沙智は急いで有森君にチョコを渡した。有森君は「遅いバレンタインだな」ってテレ笑いしてた。返事は決まってるけどホワイトデーにちゃんと返事する。そう沙智に言ったんだって。


「冴子!」

海野君が私を呼ぶ。

「あ、海野君…」

「今日の数学と日本史のテストどうだった?」

「ん―、まぁまぁだったかな。海野君は?」

「オレはバッチリ。オレは数学と日本史に関しては八十点以上が目標だしな」

海野君は自信満々に答える。

「海野君数学と日本史は点数いいもんね。羨ましいよ」

「そうか? 数学は計算だけだし、日本史とか社会は覚えればいいだけだしな」

「そんな簡単に言うけど苦手な教科は上手いこといかないよ」

頬をふくらます。

「そうだよな。オレも英語と国語は苦手だしな」

今回の学年末テストは図書室で一緒に勉強したんだ。海野君て数学と日本史の教え方が上手くて、私ってば尊敬しちゃった。「今からどっか行くか?」

「うん。アイスクリーム食べたいからアイスクリーム屋さん行こうよ」

「お前、太るぞ」

海野君がコツンと軽く私の頭を叩いた。

「いいの。海野君がいれば太ってもいいもん」

「はぁ?」

海野君はわけがわからないような表情をするけど、私はお構い無しなの。

「早く行こうよ!」

そう言うと、私元気いっぱいに走ったんだ。


遠回りだった私の恋。好きになってはいけない。好きになるのはやめよう。そう思った時もあった。そんなことなかったんだね。海野君と出逢ったこと。海野君を好きになったこと。無駄にしないようにしよう。

もし、海野君と出逢わなければどうなってただろう? 海野君以外の男の子と出逢っていたらどうなってただろう? 思うことはあるけど、今は海野君じゃなきゃダメなの。今のこの想い、大切にしよう。



「お前、食べるの遅い」

アイスクリームを食べ終わった海野君が、私を見ながら言う。

「海野君が食べるのが早いんだって」

「遅くてもいいか。そういえば、冴子に言っておかなくちゃいけね―ことがあるんだ」

「……?」

「有森と磯部さんの事なんだ」

「どうしたの?」

「実はな…」

真剣な表情の海野君。

何か会ったのかな?

「あの二人、恥ずかしがってデートしね―んだ。もう一度、デート設定してやってくれよ」

「いいよ」

「じゃっ、頼んだ」

海野君は真剣な表情から笑顔になった。

あの二人が付き合うまですぐそばまでやってきてる。ただ、勇気がないだけだよね。




夜、早速沙智に電話してみたの。

「デートしなよ―」

「で、でも…っ」

「も―。両想いだから大丈夫よ。いけるってば。進展のないカップルだな」

「何が進展のカップルよ。まだカップルじゃないよ―」

沙智が電話の向こうで顔を赤くしながら言ってるのがよくわかる。

「もうすぐでカップルになるんだからね。チャンスを逃しちゃダメよ、沙智」

「わかってるよ」

「沙智、逃げたらダメだよ。逃げたら後悔しちゃうんだから…」

「ありがとう、冴子」

沙智はビックリしたみたいだったけど、私は精一杯沙智に伝えたい事を言った。

逃げたら後悔する。必ず上手くいく恋なんてない。だからこそ後悔もしたくないし、諦めたくない。上手くいかなくても頑張りたいもんね。






三月十四日、ホワイトデー。私と沙智は、海野君と有森君からそれぞれお返しをもらって、晴れて沙智と有森君はカップルになったんだ。お返しの包み紙を開ける沙智をいとおしそうに見つめてた有森君。そして、二人はデートするって言って、駅のほうへと向かった。

「二人、カップルになって良かったな」

海野君は嬉しそうに笑顔で言った。

「そうだね。安心したよ」

「オレ達も有森達に負けないくらいのカップルにならなきゃな」

「うん。学校一仲のいいカップル…なんてね」

「ハハハ…それいいな」

「でしょ? 沙智達は第二のカップル」

「学校一のカップルじゃなくてもオレ達らしくいこうぜ」

「そうだよね。私達らしくいこうね」

私は海野君に微笑みながら言う。

片想いだった時の私。両想いになった瞬間の私。そんな自分を好きになりたい。自分を褒めてあげたい。片想いの時、海野君がいなければ頑張らなかったと思う。石水さんだって転入してこなければ何もなかった。

頑張った分だけ結果がでるって言うけど、恋だけは通用しない。そう考えてたから恋で頑張ることはしなかった。頑張らなきゃ、好きな人が取られちゃうんじゃないか。ずっと思ってた。石水さんという恋のライバルが出来るまで、頑張るフリを必死にしてた。“フリ”をすることは辛いだけで、結局何も出来てない。しんどいだけだもん。そう気付いたのはいつからかわからないけど、石水さんが転入してからバレンタインまで私頑張ったんだ。

私達の恋は動き出す。この先、辛いことがたくさんあるかもしれない。私達は頑張ってみせる。出来るとこまで…。

明日は明日の風が吹く。嫌なことがあっても明日の風になれ――。


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