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仲直り出来るかな

熱が出で倒れてから十日、四日間休んで、学校に来れて六日目。

まだなんとなく体がダルイ。

気持ち的にも、学校に行く気がしない。

学校に行く途中、引き返そうとするくらい。

病み上がりのせいじゃない。六日間、享平とは一言も口を聞いてない。岡崎さんとは相変わらず仲が良い享平を見てると、どうすればいいのかわからない。私達、これで終わりなの…? すごく最悪だよ。このまま終わるなんて嫌だよ。会わないほうがいいって言ったのは私からなんだけど、このまま放っておくとマズイよね。

享平と話したいのは、やまやまだけど岡崎さんがいる。二人共、あのことで怒ってる。わかってる。わかってるよ、私が悪いってこと。

…当分、二人で会わないほうがいい…

私から言ったけど、やっぱり同じクラスだと顔を会わすし、嫌でも視界に入ってしまう。正直、この先、どうしたらいいかわからない。




「最近、享平と仲良くないな」

沙智と有森君と三人で話してたところに、突然、有森君が言う。

「そ…そうかなぁ?」

笑ってごまかしたんだけど、二人にはバレバレ。

「ケンカしたの?」

「ううん、違うよぉ」

「でも、ここのところ、二人の様子が変だよ」

沙智が疑いの目を向ける。

実は、熱で倒れた時の出来事を二人には話してない。

「全然、変じゃないよぉ」

そうごまかす私の瞳には、享平と岡崎さんのツ―ショットが映る。

このままでいいの? 岡崎さんに取られちゃうよ。享平を岡崎さんにあげちゃうの? 冴子、どうするの…?

「岡崎さんってば、海野君にくっついちゃって…」

「確かにな。享平が好きだって有名だもんな」

「元気のないのは、あの二人のせい?」

「まぁね」

「あまり気にしないほうがいいんじゃない?」

「そうだよね」


ホントの事、言えない。六日も話してない事。私が熱で倒れた日から、私達の関係がギクシャクし始めた事。

岡崎さんと仲良くしてる享平。そんな享平を遠くから見る事しか出来ない私。享平に近付けないのが、とてももどかしい。やっぱり二人で会わないほうがいいなんて言わないほうが良かったかな? もう享平とは仲直り出来ないのかな? 仲直り出来たら、強がりなんて言わない。自分が苦しい事はきちんと言う。そう決めた。だから、享平と仲直りしたい――。






沙智と駅前のケ―キ屋さんに来たの。私はショ―トケ―キとミルクティ―。

「ねぇ、沙智は陸上部のマネージャーとか考えた事ないの?」

「突然…どうしたのよ?」

しんみりとした私の質問に、沙智はビックリする。

「うん…ちょっとね」

「あるよ。でも、陸上部のマネージャーって大変みたいだからね」

「そっか…」

「海野君とケンカした?」

「まぁ、そんなところ」

「ケンカは仲良くするためにあるんだよ」

「そうよね」

そう言いながらうつむいてしまう。

「海野君はきっと冴子の事わかってくれるよ」

「ありがとう、沙智」

「いいのよ。秀明も心配してるんだからね」

「ごめんね。二人に心配かけちゃって…」

「全然いいんだって。早く食べよう」

生クリームが私の不安も溶かしてくれる。二人が心配してくれてるから、早く仲直りしなくちゃね。

「ここのケ―キ屋さん、美味しいよね」

100天満点の笑顔を沙智に向ける。

「元気になって良かった。私、冴子のその笑顔好きなんだ」

「沙智…」

「元気ない時に冴子の笑顔見ると、私も元気になれるんだよね。冴子の笑顔とここのケ―キ屋さん好きだな」

窓の外を見つめながら、沙智はゆっくりとした口調で言ってくれた。

私ってば恥ずかしくなってきちゃう。

「海野君も冴子の笑顔好きだと思うよ」

「そ…そうかなぁ…?」

「私はそう思うよ」

沙智は窓の外から私に目線を合わせて言ってくれる。

笑顔…。享平は私の笑顔は好きですか…?







それから、三日が経ってまだ仲直り出来てない。時間が経つと仲直りしにくくなってくるのに、未だに行動に移せてない。

その日の放課後、有森君を介して享平に中庭に呼び出されちゃった。

大体の話は想像つくけどなんだろう? 気になっちゃうよ。

中庭に着くと享平は来てて、私が近付くと下を向いていた顔を上げた。

「冴子…呼び出してごめんな」

「ううん、いいよ」

何事もなかったように首を振るけど、すごくドキドキ。

「話があってさ。もう一度、やり直してくれないかな? 自分自身せっかく冴子とより一層仲良くなりたいのに、冴子から二人で会わないほうがいいって言われてショックだった。冴子が熱で倒れて休んで、学校に出てきても同じクラスなのに話せない、会えないなんてかなりキツかった。だから…もう一度、一からやり直したいって思ってる」

今までに見たことのないような真剣な享平。

享平の気持ちはちゃんと私の心にも伝わってきた。

「いいの。あの時は私が悪かったんだし、頭を冷やしたかったから、あんなこと言っちゃったんだ。ごめんね」

私もストレートに自分の気持ちを享平に伝えた。

「オレも悪かった。キツい事言って…」

「全然いいんだよ」

この前の事、思い出したら涙が出てきそうになる。

「ホラ、そんな泣きそうな顔するなって。辛くなるだろ? 仲直りの証に握手しようぜ」

享平は顔を赤くしながら右手を出す。

私も享平につられて顔を赤くして、右手を出す。

「これからも仲良くな!」

「うん! 私は強いから大丈夫よ」

「強いなんて言葉使うなよ。そんなの、冴子に似合わね―よ」

享平の言葉に目を丸くしてしまうけど、

「そうだね。早く教室に戻ろう」

「オゥ!!」


強い。そうだよね。私には似合わないよね。

私と享平、仲直り出来たよ。


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