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神殺しの英雄譚《ジェノサイド》  作者: 漆原 黒野
第1章 勇者召喚編
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第6話 産業ギルド

 

 ジュウージュウーっと、大通りを歩いていたら、そんな音と共に美味しそうな匂いが香ってくるため、自然と匂いの先へと足が傾き始める。

 匂いの根源では、串に肉を刺し、タレをたっぷりとつけた焼き鳥に似た食べ物が売られていた。

 少し気になった秋人は肉を焼いているオッサンに話しかけてみた。


「なぁ、オッサンこれ何の肉?」

「オッサンって……。これはチキンバードの肉を焼いて、店自慢のタレをつけた食べ物だ。1本どうだい?」


(チキンバードって……。見た感じ鶏っぽいな。つまりこれは日本で言う所の鶏でこっちではチキンバードか。元の世界と名称が違うな。他にも名称が違う物があるかもしれないから、ボロが出無いよう気を付けないとな)


「ちなみに一本いくら?」

「一本8コルだよ」

「じゃあ2本買うから15コルにしてくれ」

「まいど!」


 秋人は国王から貰った大銅貨1枚をポケットから出し、オッサンへと渡す。

 銀貨を受け取ったオッサンはレジみたいなところから、お釣りの銅貨8枚、鉄貨5枚を出して秋人へと渡す。お釣りをポケットにしまってから、注文した焼き鳥みたいな物を受け取る。


 ちなみにこの世界のお金の単位はコルと言って、1コルを日本円に変えれば大体10円くらいなものだ。つまり15コルと言う事は日本円で150円の事を示す。


 お金の価値を説明するとこんな感じだ。


 鉄貸・・・・1コル・・・10円

 銅貸・・・・10コル・・・100円

 大銅貸・・・100コル・・・1000円

 銀貸・・・・1000コル・・・1万円

 大銀貸・・・1万コル・・・10万円

 金貸・・・・10万コル・・・100万円

 白金貸・・・100万コル・・・1000万円

 魔金貸・・・1000万コル・・・1億円


 と、なる。

 まぁ、白金貨以上は大きな商談か国同士ぐらいでしか使われないか。

 それと、白金貨、魔金貨にはそれぞれ特殊な魔法が込められているため偽造や複製は不可能だ(byナビ)。

 一応、これは世界共通の硬貨だ。それに加え国自体の硬貨も有している場合がある。

 そして秋人は王宮から出る時に大銀貨8枚と銀貨15枚、大銅貨50枚を貰っている。日本円にして100万円になる。

 大体コルを10倍したものが日本円になると考えれば分かりやすいだろう。

 余談だが、一般成人男性の平均月収は大体大銀貨5~8枚程だ。まぁ、貧富の差が激しいから一概に言えないが。


(食べるか)


 他の客に邪魔にならないように隣に移り、まずは一口。


「……美味いなこれ」


 焼き鳥モドキは普通に美味しかった。

 そしてもう一口。


「焼き加減もいいし歯応えもしっかりしていて美味い。何よりこのタレが良いな」


 そう言って秋人は残りの焼き鳥を食べ進めた。




 焼き鳥を食べ終わった秋人は目的地〈産業ギルド〉へと向かう。

 何故かと言うと、馬車の予約をするためだ。秋人は次の街の〈シュトリアの街〉を目指している。そのため馬車の予約をしに産業ギルドを目指していると言うわけだ。

 この世界で馬車に乗るには大体3つの方法がある。

 1.事前に産業ギルドに行って予約する。

 2.当日に行って少し多めにお金を渡して乗る。

 3.商人に言って乗せてもらう(これはあまり期待出来ない)。

 今回秋人は1の産業ギルドに行って、馬車を予約することを選んだため、産業ギルドを目指して歩いていると言うわけだ。

 ちなみにこの世界の交通手段は馬車が主流だ。他の街を目指すのにも馬車だし、街の中を移動するのも馬車だ。日本で言うところの車や電車だと思ってくれればいい。

 余談だが、馬車以外にも空を飛ぶ船とか、転移装置などもあったりする。まぁ、お金がものすごく必要だが。


 産業ギルドに向かいながら、右上にある透明で決して視界の邪魔にならないようになっている”地図”を見る。これは【メニュー】の中にある【マップ】の機能だ。もちろんこれを見れるのは秋人だけだ。

 そこには秋人を中心として大体30m程の地図が映し出されている。あ、これを見ているのは秋人であって、ナビが見ているのは最大の地図だ。秋人が広範囲の地図を見たところで、近くに何があるのか分からなくなってしまうため、拡大の地図を見ているといわけだ。

 それに秋人が見ていなくても、ナビが見ているため安心なのだ。


 この【マップ】には様々な機能がついてる。

 例えば、検索機能。この機能は自分が探している物を検索すると、それがどこにあるのかが分かるという便利機能だ。


 例・・・武器屋と検索すると武器を売っている店が地図上に表示される。さらにここに珍しい武器と付け加えれば、武器屋の中から珍しい武器が売っている店が表示されるのだ。


 他にも色々とあるがその説明はまた今度にするとして、今大事なのは【マップ】の機能の一つとして敵、味方などを色分けをしてくれる機能があることだ。

 色分けするとこんな感じだ。


 矢印→自分・仲間(秋人が認めた者)

 緑の丸→味方

 青の丸→中立

 赤の丸→敵

 黄の丸→魔物

 白の丸→死体


 まぁ、何が言いたいかと言うと、秋人に見つからないようにして建物の影や人に紛れて追ってくる2つの赤色の丸(・・・・)があると言う事だ。

 赤色、つまり敵ということだ。


(まぁ、普通に考えて城から追い出した奴をそのままってことはないよな)


 ちなみに追ってきている二人は【隠密】やら【気配遮断】などのスキルを使っている。だが秋人の【マップ】はスキルを使っていようが問題無く表示されるため意味をなさない(固有スキルは除く)。

 後をつけられているからと言って、秋人が怯えるという事は無い。それに城を追い出された時点でこうなることは予想出来ていたため驚くような事ではない。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 産業ギルド、そこは人が一杯居て、大きかった。

 形はよくある言い方で表すなら中世ヨーロッパ風と言った感じで、色は緑を基調として所々に黄色などの色が入った建物。建物の上のほうでは産業ギルドのシンボルのマークが飾られていた。

 マークの絵柄は、中心に丸机があり上にはコインと食べ物? があり、両脇には人がいて紙を広げている様子のマークだ。


「それにしてもでかいな」


 秋人は産業ギルドを見上げて、思わずそんな呟きが漏れ出た。そんな漏れ出た秋人の言葉に返す者がいた。


「そうだろ! そうだろ! 初めて見る奴は大抵そう言うからな! まぁ、俺の自慢の場所だから当たり前だがな! ガハハハーーー!」


 声を掛けてきた者は身長2mを超す巨漢の男だった。腕の太さなんて直径30cmもありそうな感じだ。さすがに無いか……。それが全部筋肉だという事は一目見れば分かる程の凄まじい迫力がそこにはあった。


(体格だけならドワーフに見えるけど……この身長でドワーフはないよな?)


 秋人は隣に立つ凄まじい迫力を気にする事無く気軽に話しかける。


「あぁ、本当に凄いな。で、あんた誰?」

「ん? あぁ、俺か。俺はな、なんと、な~んとこの産業ギルドのギルド長の”ガンド”だ!」


 隣の男がギルマスだと聞いて、目を見開く秋人。


「……オッサンが産業ギルドのギルマス? 冒険者ギルドじゃなく?」

「ガハハハ! よく言われるけど俺は正真正銘この産業ギルドのギルマスだ! まぁ、書類の整理なんかは他の奴がやってるけどな!」

「あぁ、納得だわ……」


 うん、この巨体で書類の整理しているところなんて想像できない。ていうか普通にキモイわ。


「それでお前は何しに来たんだ? 良かったら俺が見てやっても良いんだぞ?」


 と、ニヤニヤした笑みを浮かべながら聞いてくるガンド。イラっとくるが別に大したことでも無いためスルーする。


「別にいいよ。ただの馬車の予約だけだから」


 そう言って歩き出す秋人。


 産業ギルドへ入っていく秋人の後ろ姿を見つめながら一人佇むガンド。


(ふーん、あれが追い出された勇者ね……。嫌な予感がするな。とりあえず見張りを付けて様子見かな? いや、それは俺の仕事じゃないか。”ジンバ”の奴らが何とかするだろう)


 そう結論付けたガンドはチラリと横目で人混みに紛れている二人組を見る。


「あいつは分かっているのかね?」


 片手で頭を掻きながら、秋人の後を追うようにして産業ギルドに入って行くガンドだった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 産業ギルドに入った秋人の最初の感想は「役所みたい」だった。

 受付があって待ってる人達がいる。ほら役所だろ?

 中は静かとは言えないがそこまでうるさくはなく、左右の壁際には上へと続く階段があり、職員はかなり多い。


(さてと、馬車の予約ってどこで出来るのかな?)


 秋人は少し考えたが結局分からないという結論に至り、近くにいる職員に話し掛けることにした。あ、ナビに聞かないのはただの気分と少しの興味だ。それに折角異世界に来たんだからこちらの人との繋がりを築いたほうが良いと思ったからだ。


 秋人は一番近くに居た気になる(・・・・)女性職員に話しかけた。

 女性職員の容姿は、スレンダーで胸は無いがスラっとしていて美しかった。髪は長くはなく肩らへんで揃えられている。色は黒に近い赤色、姿勢も良く大人びて見える。ぱっと見22,3歳ぐらい、身長は162cm程の人間の女性。


「あの、シュトリアの街までの馬車を予約したいんですけど、どこの受付へ行けばいいんでしょうか?」

「馬車の予約ならば、まずあちらにある魔機(まき)(魔道具と機械が混ざったもの)から番号札を取ります。番号が呼ばれましたら受付の上に書いてある番号の1~6番ブースに行っていただければ良いですよ」


 そう説明し終えた職員は秋人に笑みを向ける。


「あ、これはご丁寧にありがとうございます」

「いえいえ、これが仕事ですから」

「そうですか。では」


 軽く会釈をして、番号札を取りに行く秋人。


 その背中を見つめながら職員、”シーナ”は思う。


(……嫌な雰囲気ね。早めに始末(・・)した方が良いかな?)


 そう思った瞬間、背中に言い知れぬ悪寒が走り抜けた。


(……)


 秋人が考えていた人脈の大事さを知るのは、まだ先の事だった。


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