第3話 秋人のステータス
所変わって秋人は今王城の個室にいる。全員のステータスが見終わった後、国王がこんなことを言ったからである。
「皆の衆。こたびは勇者召喚で疲れたであろう。こちらで一人1部屋、用意したので存分に休んでくれたまえ。それとメイドと執事を付ける。何か困ったことがあれば言うといい」
それでメイドに案内されて今の状況になったわけだ。
(さて、これからどうしようかな? やっぱり今はステータスを確認しといた方が良いかな?)
秋人はステータスを確認するため、自分に【鑑定】を使うのだった。そしたら頭に直接ステータスが浮かび上がってきた。
名前 桐ケ谷秋人 年齢 17 性別 男
種族 人間
職業
レベル 1
体力 120
耐性 200
筋力 120
魔力 150
魔耐 180
敏捷 130
運 25
スキル 言語理解 成長速度倍増 疾走 自然回復 話術 打撃耐性 痛覚軽減 観察 直感
固有スキル 無敵 状態異常完全無効 滅殺魔法 ステータス倍増 メニュー(鑑定 偽装 アイテムボックス マップ ナビ)
加護 ????
(これはいくらなんでもチートすぎるでしょ。まぁ、俺が強いに越したことはないか)
あ、ちなみに何でステータスを誤魔化したかと言うと、秋人はこの城? 国? を出て行くつもりだからだ。「こいつは使えない」と見せといた方が、厄介払い的に追い出してくれると思ったからだ。
まぁ、可能性として殺される事も視野には入れているが、最悪【無敵】を使えば何とかなるだろうと思い、ステータスを誤魔化したのだ。
(まぁ、とりあえずそれぞれの効果を確かめとくか)
そう言って秋人は其々のスキルを鑑定していった。
スキル
言語理解・・・異世界の言語が分かるようになる。
成長速度倍化・・・成長する速度が2倍になる。
疾走・・・一時的に走る速さが速くなる。
自然回復・・・怪我などの自然回復速度が上がる。
話術・・・詐欺、交渉などがしやすくなる。
打撃耐性・・・打撃が効きにくくなる。
痛覚軽減・・・痛みを感じにくくする。
観察・・・注意深く物事が見れる。
直感・・・第六感が冴え渡る。
固有スキル
無敵・・・すべての攻撃を無効にする。
状態異常完全無効・・・すべての状態異常を無効にする。
滅殺魔法・・・消す。
ステータス倍増・・・すべてのステータスが2倍になる。
メニュー・・・以下のものが使えるようになる。
(鑑定・・・物を鑑定できる。人、魔物などのステータスが見える(レベル差があると見れない)。
偽装・・・見た目を変えられる。ステータスを書き換えることが出来る。
アイテムボックス・・・物を入れることができる。入れられる量は「魔力」量で変わる。ただし生物は入れられない。
マップ・・・自分を中心に半径5kmの地図が見られる。
ナビ・・・疑似人格を持ったナビゲーションシステム。)
(とりあえずスキルを見て見たけど、これはすごいな……。特に【無敵】【状態異常完全無効】【ステータス倍増】は馬鹿げてる。それにこの【滅殺魔法】もよく分からないけどやばそう……。とりあえず【ステータス倍増】以外の3つをもう少し知りたいかな……)
そう思い秋人はもう少し詳しく見れないか試したところ——
無敵・・・身体に害ある攻撃がきた時に発動(任意で発動可能)。すべての攻撃を無効にする。それが神の攻撃だとしても無効にする。
状態異常完全無効・・・身体に害あるものを無効にする。ただし無効にするだけであって、それその物が消えることはない。(例:人が飲めば死ぬような毒を飲んだとしても、毒と言う成分をなくすことができるだけであって毒と言う液体がなくなるわけではない)
滅殺魔法・・・触れたものを消す。それが神だとしても消せる。
「………………………………………………………………………………………………………………………………………は?」
………………………。
「ははああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
え? なにこれ?
え、え、え、なにこれ?
え、何? 俺神殺せんの?
なにそれやばくない? やばいよな?
それに俺に攻撃効かないんでしょ? そんでもってこっちは1回でも当たれば殺せんでしょ?
なにそれやばくね?
すごくね?
「あ、でもデメリットとかあるかもしれないか」
『デメリットなどはありません』
その声は唐突に秋人の頭の中に響き渡った。
「え!? 何!?」
秋人は辺りを見渡すがあるのは家具のみ。秋人以外誰もいないはず。それなのに声が聞こえる。
「……遂に俺もおかしくなったか? いやでも待て。此処は異世界だ。不思議な声が聞こえてもおかしくないんじゃね?」
『色々考えているところ申し訳ありませんが、私はスキルの疑似人格です』
……あ、あぁ、確かに【メニュー】の中にそんな物があったな……。
「……あったなそんなの」
『先程のマスターの疑問、デメリット等になるものはございません』
「え、マジで!? 使い放題なの!」
『いえ、使い放題ではありません。【無敵】はマスターの体力が続く限りしか使えませんし【滅殺魔法】はマスターの魔力が切れてしまえば使うことはできません。【状態異常完全無効】はバシップのようなものなので、そういった意味では無限かもしれませんが他の2つ【無敵】と【滅殺魔法】は決して無限ではありません』
「へぇ~、そいうもんか。確かに使い放題だとやばいもんな。てか【無敵】を使うのに体力使うの? でも説明にはそんな事書いていないけど?」
『それは当たり前の事だからです。「魔法を使うには魔力が必要」といった感じで誰もが知っているため説明には書かれていません。説明が無駄に長くなってしまいますからね。まぁ、どうやって使うかを調べれば、その辺のことも説明してくれると思いますけど』
「なるほど。あ、そういえばこの加護の【????】はなんだろう? とりあえず鑑定っと」
????・・・誰かの加護。
「え、それだけ? う~ん、なぁこれ何?」
『これは……。すみません私でも分かりません。一体何でしょうかこの加護……?』
「まぁ、分かんないものはしょうがない。とりあえずこれは置いとくか」
この時の秋人は知らなかった。この加護がどれほどやばいものなのかを……。
それから一通りステータスを確かめ終えた秋人は、これから何をするかを考えていた。
「今はとりあえず……何しようか? 寝るには早いよな?」
『ではマスター。私に名前をいただけないでしょうか?』
「名前? お前って名前ないの?」
『……えぇ、ありません』
(間があった?)
「そうだな。一応確認だがお前って女だよな?」
この【ナビゲーションシステム】の声は凛としていて艶のあるソプラノ声で、それを崩さないおっとりさも兼ね備えた最高の声なのだ(秋人的に)。
正直に言えば俺の好みの声だ。
そう声的には女なのだ。
でも世の中にはいるんだよ。男だけど声が女ぽい奴って。世界は広いからな……。
これで男とか言われたらさすがの俺も引く。たぶん飯も食えないくらいには引く。
『……私の声に関してはマスターが一番好きな声になっていますので』
なるほど。だから俺の好みなわけか。
そもそも【ナビゲーションシステム】に性別があるかどうか曖昧だよな? まぁ、それはいいか。
性別の事は一旦置いとき、秋人は【ナビゲーションシステム】の名前を考え始めるのだった。
マンガやアニメとかではこいうときはどんな名前があったけ?
まぁ、厨二的な名前ならすぐ出るんだけどな……。
う~ん、やっぱりマンガやアニメとかのをパクるのはダメだよな? ……ダメ、だよな?
他の名前って言っても思い浮かばねー。
てか、もういっそのことナビでいいんじゃね?
「……てか、もういっそのことナビでいいんじゃね?」
『マスターがそう仰るのでしたら、これからは”ナビ”とお呼びください』
「え……」
(やべ! 声に出してたか。どうしよう……。えーい、言ってしまったものはしょうがない。押し通してしまえ!)
「ナビがそれでいいんなら、それで良いと思うよ?」
『はい、大丈夫です。ありがとうございますマスター』
「うん、そっか。じゃあこれからお前はナビだ!」
『よろしくお願いしますマスター』
名前を決め終わった秋人は喉の渇きを感じていた。とりあえず洗面所で水を汲み、喉を潤す。
(いちいち声に出すの面倒くさいな。ラノベとかではよく心の中で思えば伝わるって感じだったな……。試してみるか)
そう思い至った秋人は心の中でナビに問いかけるように喋ってみる。
『あーあー。こんな感じか? おーいナビ聞こえてるか?』
出来た。
やれば出来るもんだな。
『……聞こえています。流石ですね。教えてもいないことを自力でやってみせるとは……。それに普通は直ぐには出来ないものですが……。流石としか言いようがありません』
『え、そうなの? まぁ、楽になるだろうと思って、やってみたら出来たって感じだけど?』
『……多分、出来るイメージが固まっていたからだと思います』
『そんなもんか』
喋る事も無くなり、二人の間に沈黙が包み込んだ。
そもそもスキルだからと言って、知らない相手と話すのは難易度が高いと思う。秋人自身もコミュ障でもあるし……。
そんな空気に耐えかねてかナビが声を発する。
『……この後何をしますか?』
『そうだな……。まずはこの世界のことを教えてもらおうかな。常識とか習慣とか世界情勢、後は冒険者についてかな』
『分かりました』
それからしばらくの間、この世界についてナビに教えてもらった。そろそろ勉強に疲れてきたころ、扉を叩く音が聞こえてきた。
『コンコン』
「はい、どうぞ」
「失礼します」
入ってきたのはこの部屋まで案内をしてくれたメイドだった。
部屋に入ってきたメイドは扉から3歩程歩いて、綺麗なお辞儀をして口を開く。
「お食事の用意ができましたのでお呼びいたしました」
「あ、はい。今行きます」
そう言って秋人はベットから起き上がり、メイドの後について行くのだった。