第2話 ステータス確認
今秋人達はこの国の王様に会うため、謁見の間に続く道を歩いている。
秋人は先程のお姫様と佐藤の会話を思い出していた。
簡単にまとめるとこんな感じだ。
1
Q、自分達は元の世界に帰れるか?
A、今は無理だけど魔王を倒せば元の世界に返せる。
2
Q、自分達には魔王を倒すための力はあるのか?
A、あります。
3
Q、これから自分達はどこで暮らせばいいのか? また、食事はどうすればいいのか?
A、この国、エルスラーン王国が責任もって引き受ける。
簡単にまとめるとこんな感じだ。
(「魔王を倒せば元の世界に帰れるって」いかにもありがちなやつだな。それに魔王を倒したからと言って元の世界に帰れる保証はないし、あったとしてもなんで俺がそんなことやらないといけないんだよ)
そんな事を考えている秋人。
正直お姫様の話は胡散臭さすぎる。もしかしたら秋人の早とちりで、本当に魔王を倒したら元の世界に帰れるのかもしれない。だけどそれは秋人には関係のない話でもあった。
(帰れるにしろ帰れないにしろ、俺は好きに生きさせてもらうけど)
秋人は口角を上げニヤリと笑みを浮かべるのだった。
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所変わって謁見の間にて、秋人達は国王に向けて頭を下げているところだ。
国王は言ってしまえば爺いだ。年相応に皺が広がり足腰が細い、老人だ。だがそこから発せられる威圧感は本物だ。初対面の秋人でも、これが一国の王と言われれば納得するほどの威厳がそこにはあった。
シーンと静まり返っている部屋の中で存在感を大きく感じるそれは、否応にも緊張感が高まっていく。
国王は部屋を一通り見回して、口を開いく。
「面を上げよ、勇者達」
各々が顔を上げ国王を眺める。
そんな中で先頭に立ち堂々と国王に向かって、佐藤が口を開く。
「国王様、我々はこうした場には縁がなかった者です。そのため多少のご無礼はご了承ください」
「よかろう」
(すごいな……。一国の王相手でも普通に話してやがる。とりあえずこの場は佐藤に任せたほうが良さそうだな)
横目で周りを見てみれば秋人と同じように、ここは佐藤に任せるような雰囲気になっていた。
「勇者達よ、今この国は魔族によって危機に晒されている。そのため勇者達には魔族の王、魔王を倒してもらいたい。魔王を倒すために必要な物はこちらで用意しよう。それとお主達には何不自由無く暮らせるように手配する。どうかこの国を救ってくれ、勇者達よ」
と、覇気を漲らせながら説明する国王。そんな国王を見て秋人は確信する。
まぁ、あれだね。なんていうかテンプレだね。
勇者を召喚してその力を自分達の物にしようとしている感じの、あるあるパターンですね。
この国”だけ”を救ってほしいわけだしね。人類を救ってほしいのではなく「この国”を”救ってくれ」って言ったもんな。
え、細かいって? それはそうだろう、仮にも一国の王だぞ。分かりにくいような言い回しだってするだろ。
例えば、他の国が落とされた時、勇者達がなんか言ってきたら「この国を救ってくれと言っただろ。他の国なんか知らん」的な感じで言い訳ができる。
まぁ、そんな事言ったら勇者達が反抗するだろうけどそんな事になる前に何とかするだろ。よくありがちな奴隷にしたりしてさ
と、勝手にこの国の評価を決めつける秋人。
秋人の気持ちは分かるには分かるが、しっかりとした情報も無しに決めつけるのはやや早計すぎると思う。まぁ、勇者召喚をしてる時点でダメだとは思うけど……。
そもそもこの国がどいう立ち位置だろうと、秋人には関係の無い話である。秋人はこの世界で好きに生きようと決めたのだから。
そんな事を考えていたらなんか話が進んでいた。え、デジャブそんな事ないよ、気のせいだよ。
どうやら今からステータスを見るみたいだ。
ちなみにこの世界でステータスを見るにはよくある〈ステータスカード〉や専用の水晶的な物が必要だ。あとは【鑑定】や【オープン】【チェック】などのスキルで見ることができる。
今回は水晶で一人一人のステータスを見て、記録を取る形式だ。そのため秋人達は5列に並んでいる(水晶が5つあるから)。
(お、まずはリア充共がやるみたいだな。どんな感じのステータス何だろう? あいつの場合「ザ・勇者」って感じがするからな)
名前 佐藤勇 年齢 17 性別 男
種族 人間
職業 勇者
レベル 1
体力 150
耐性 150
筋力 150
魔力 150
魔耐 150
敏捷 150
運 150
スキル 言語理解 成長速度促進 身体能力向上 指揮 話術 光魔法
固有スキル 神聖魔法 聖武召喚 運楽上 限界突破
加護 聖神 善神 運神
(本当に勇者だった……。それにしてもこのステータスは凄いな。向こうのお偉いさん方も驚いているし)
「おぉ! これは凄いですな!」
「さすが我らの勇者様だ!」
「これでレベル1ですか! 将来が楽しみですな!」
記録を取っている人達は興奮気味にあれこれと喋り出す。佐藤は困惑気味に興奮している人達を見ながら当然の疑問を口にする。
「……あの、これってそんなに凄い事なんですか」
「これは失礼しました。一般的な大人のレベル1の人の平均は20~30なのですよ。稀に50~80ぐらいの人はいるのですが、さすがに佐藤様程の者はいないです。それに固有スキルが4つもあることなんてあり得ません。普通は1個でも持っていれば御の字です。それに加えて加護がある事自体が凄いのにサトウ様は3つもお持ちになっています。さらに【運】は最大で100までのはずですが、150となっています。これは凄い事なんですよ。さすがは勇者様でありますな!」
(分かりやすいけど話が長い。次は……お、柏崎みたいだな。あいつはどんな感じなんだろう? 見た感じだと近接型だよな?)
名前 柏崎武 年齢 17 性別 男
種族 人間
職業 狂戦士
レベル1
体力 250
耐性 200
筋力 250
魔力 20
魔耐 150
敏捷 60
運 51
スキル 言語理解 成長速度促進 剣術 体術 剛撃 身体能力向上 精神統一
固有スキル 重量操作 爆撃力 暴狂激
加護 戦神
(なるほどこっちも凄いな)
あとはリア充メンバーの木下と源だけを紹介しとく。他を紹介するのは面倒くさいからな。
名前 木下咲耶 年齢 16 性別 女
種族 人間
職業 魔法士
レベル 1
体力 60
耐性 70
筋力 50
魔力 500
魔耐 120
敏捷 70
運 73
スキル 言語理解 成長速度促進 水魔法 風魔法 回復魔法 魔力軽減 詠唱省略
固有スキル 絶対標的 魔限伸上 魔彩魔素
加護 魔神
名前 源雫 年齢 16 性別 女
種族 人間
職業 魔法剣士 侍
レベル 1
体力 230
耐性 100
筋力 140
魔力 230
魔耐 90
敏捷 280
運 58
スキル 言語理解 成長速度促進 刀術 剣術 体術 疾走 瞑想 精神統一 氷魔法 水魔法 身体能力向上
固有スキル 自己昇華 氷結剣 静止世界
加護 氷神 敏神 武神
(おぉ! さすがリア充グループのメンバー、凄いステータスだな。その証拠に記録をとっている奴がさっきからうるさい。少しは黙れ)
「おぉ! さすが我らの勇者の仲間達ですな!」
「全くですな! これでこの国は救われます!」
「ミナモト様はサトウ様と同じで3つも加護をお持ちですね!」
(「我らの」って別にお前らのじゃないだろ……)
あ、ちなみに年が16と17がいるのは誕生日が来てるか来ていないかの違いだから。
そして次々とクラスメイトの人達がステータスを確認していき、ついに秋人の番となった。
(さてさて確認する前に少しやらないといけないことがあるんだよね。……よし出来た。さてみんなどんな顔をするか楽しみだ)
そして秋人は水晶に手をかざした。
名前 桐ケ谷秋人 年齢 17 性別 男
種族 人間
職業
レベル 1
体力 25
耐性 35
筋力 20
魔力 25
魔耐 30
敏捷 20
運 25
スキル 言語理解
固有スキル
加護
(これが俺のステータスだ! どうだ驚いたろ! その証拠に記録をとっていた人が固まっているぜ!)
ちなみに職業が無いのは別に秋人だけではなく、あと5,6人はいる。
「……」
「これは……」
(さてさて、どんな反応してくれるかな? ここはお約束の通り、馬鹿にしてきてくれると面白いんだがな)
と、秋人が下らないことを考えている間に正気に戻る者達が現れ始めた。
「……これはどいうことでしょう?」
「しょ、少々お待ちください」
と、記録を取っている者が大急ぎで、どこかへ走り去ってしまった。
「……大丈夫かい桐ケ谷君?」
「……気にすることないぜ」
意外にもクラスメイト達は秋人の事を慰めるような言葉を掛けてきた。思っていた反応と違うため、少し困惑気味に顔を強張らせるのだった
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ここは先程まで勇者達がいた広間。
そこに怪しげな影がいくつかあった。
「……殿下あの者をどうしますか?」
影の一つがそう言葉を投げかける。
「そうだな……。他の者達はどう思う?」
周りを見渡し意見を求める殿下と呼ばれる男。
殿下の質問に影の一つが発言を求めるように手を上げ、頭を上げる。
「私は始末したほうが得策かと。ステータスが低い者を養う意味がありませんぞ」
「では殺しますか?」
「それは不味いですよ。あの少年がクラスというもので、どんな立場にいるかわかりません。迂闊に手を出せば勇者達にどのような影響を与えるか未知数です」
「では、あの少年の面倒を見ると言う事ですか?」
「しばらくはそうしたほうが良いかと」
「なるほど。……それでどのようにしますか殿下」
影に問われ、考え込むように顔を俯ける。そして考えがまとまったのか殿下と呼ばれる男は顔を上げ、影達を見つめ口を開く。
「……しばらくは様子見といこうか」
「分かりました。そのようにいたします」
そうして影達は姿を消していくのだった。