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神殺しの英雄譚《ジェノサイド》  作者: 漆原 黒野
第1章 勇者召喚編
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第17話 ゴブリン

 

 そして秋人達が現場に着いた時、戦いの火蓋が切って落とされた。

 ベートがゴブリンの群れに突っ込み、それをアリサが支援をする形だ。秋人は走りながら場所の確認、相手の数、力を見極めていた。


 そこは木々が無く空けた広場となっていた。広場はかなりの広さがあり、4、50m先まで木々が無く、十分に戦闘が出来そうだ。休憩小屋というのはそんな広場の中心にあり、今もなをゴブリンがそこから出て来ていた。

 そんな広場に居るのがゴブリンの大群。今確認できるゴブリンの数は凡そ30~40匹。その中に上位種と思われるゴブリンが7匹程。あ、上位種とは言っても〈ゴブリンジェネラル〉では無くて〈ホブゴブリン〉や〈ハイゴブリン〉〈ゴブリンガードナー〉〈ゴブリンソード〉〈ゴブリンアーチャー〉〈ゴブリンメイジ〉等だ。

 ゴブリンは人間の様に弓や剣を使うため、それぞれに特化した形に進化することがある。一応普通のゴブリンの進化形なため上位種となっている。


 鉄の武器などを持っているのも上位種のみのようだ。どうやって入手したのかは気になるところだが、今は気にしている暇は無い。他のゴブリンは木を適当に削って出来た棍棒を手に持っていた。


 あとは魔法が使えるゴブリンもいるみたいだが、あまり魔力の扱いが得意ではなく、そこまで警戒しなくても平気みたいだ。だからと言って油断すれば痛い目に遭うが。


 休憩小屋の中には、まだゴブリンが10匹以上もいるみたいだし、その中の1匹は上位種のようだ。

 小屋の中にいる奴と目の前にいる奴を合わせると、大体50匹近くのゴブリンがいると思われる。


『どんだけいるんだよ……。よくこれだけのやつを見逃してたな。それに食事はどうするんだ? これだけいたら食料なんて、すぐに尽きそうだけど?』

『それこそ女性を攫った理由では?』

『納得』


 そう言って秋人は、先に飛び出して行ったベート達の戦いを眺める。

 ベートは剣で片っ端からゴブリンを斬り裂いていく。走りながらゴブリンの頭を叩き斬るように殺し、体制を崩させてアリサに仕留めてもらうようにして戦っていた。お世辞にも剣の扱いが良いとは言えないが、それでもゴブリンを着実に倒して行く。

 そんなベートを援護するようにアリサが魔法を放つ。


(凄いな二人とも。たった1、2分で10匹近く殺しているんじゃないか? ベートのやつ結構強いな。正直見縊ってたぜ)


 そんな時一際大きな存在感を放つゴブリンが目に飛び込んで来た。


(あれがゴブリンジェネラル……?)


 背丈は2,5mにも及ぼうかと言う程大きく、そして横にも広い。醜い顔、臭い体臭、そして目を引く大きな剣。そして何よりも凄いのがその威圧感だ。ただそこに立っているだけなのに腰が引けてくる。王者の風格と言う物をヒシヒシと肌に感じる。


(……やばいな、あれ。今の俺じゃ絶対に勝てそうにないな)


 そう思わせるほどにその存在はすごかった。今この場に関して言えば、その存在は最強だった。

 あ、でも勘違いしないでもらいたいのが、秋人が【滅殺魔法】と【無敵】を使って戦えば、ゴブリンジェネラル如き雑魚でしかない。


 そしてゴブリンジェネラルの足元には倒れ込んでいる女性。幸い女性は服を着ており、何かをされた後では無い事が見て取れる。最悪の結果は避けられた様だ。

 意識はあるようだが腰が抜けて動けず、怯えた表情で今の状況を眺めている。


 とりあえず秋人は腰が抜けている女性を助け出すために走り出す。ゴブリンジェネラルとの距離が5m程を切ったと見た秋人は【疾走】を使い、一瞬でゴブリンジェネラルの目の前に現れ、勢いそのままゴブリンジェネラルの腹を蹴りつける、


「……ふッッッ!」

「グフゥ!」


 吹き飛んでいくゴブリンジェネラルを見つめながら地面へと着地する秋人。だが、その大きな身体相応に体重もあるようで5m程飛んだ所で止まり、こちらを睨みつけてくる。


(いてぇ! どんだけ固い皮膚してやがるんだ!?)


 思っていたよりもゴブリンジェネラルの皮膚は固く、攻撃をした秋人の方がダメージを受けている仕末だった。

 距離にして5m弱。ゴブリンジェネラルもやっと秋人の事を敵と認識したようで、油断なく大剣を構えている。秋人は女性を後ろに庇いながら慎重に剣を構える。

 そんな一触即発の状況に、割って入ってくる者の声が聞こえた。


「アキトそいつの相手は俺がする。お前は雑魚共を頼む」

「……分かった」


 戦闘体勢で構えていた秋人は出鼻を挫かれた様な気分に陥ったが、すぐに気持ちを切り替え場所を譲る。

 秋人もわざわざ痛い思いをしてまで戦いたいとは思わなかったのだ。


「アリサはアキトの援護をしてやれ。ミリアナは逃げられるなら逃げろ。俺達はこいつらの相手をしなくちゃいけねぇから守る事は多分出来ない」

「わ、分かりました。逃げられそうだったら逃げます」


 そう言うだけ言ってベートは走り出した。


(それって本末転倒じゃね? このミリアナってのを助け出せばそれで終わりじゃね? ……あぁその後村が襲われる可能性があるから、今の内に倒しておきたいのか。俺達がいるうちに。良いように使われてんな)


 とりあえず秋人は言われた通りに普通のゴブリンを倒すために意識を切り替える。


「とりあえずいつも通りで」


 視線をゴブリンに固定してそう呟く。そうれば答えが返ってくると知っているからだ。


「分かった。囲まれないようにね」


 ここ一ヶ月、秋人と一緒に旅をし、その過程で戦闘もこなしてきたアリサ。言わずとも考えていることはなんとなくだが伝わる。

 一ヶ月という短い期間(スパン)でお互いに命を預けられるまでに信頼し合う事が出来たのだ。


 そう言うや否や秋人は【疾走】を使い、見えない程の速さで駆け抜ける。もちろんすれ違いざまに”目”を斬って行く。そうすれば後はあいつがやってくれるから。


『風よ、我が敵を切り裂け【風刃(ウィンドカッター)】』


 風の刃を飛ばしゴブリンの首を刈り取って行くアリサ。その間にも秋人は【疾走】を使い、ゴブリンの目を潰していく。


 何故目だけを斬るかと言うと、剣の刃こぼれを出来る限り少なくするためだ。

 どんな者だろうと得物が無くなれば戦えなくなる(格闘家は別)。そのため秋人は最小限の攻撃で最大の効果を発揮できる攻撃、つまり「目潰し」で相手を翻弄し、アリサがとどめを刺す、という寸法だ。

 もちろん一流の者なら刃こぼれをさせないで敵を斬り裂く事が可能だろうが、今の秋人にはそこまでの技術が無い。そのため出来るだけ剣を長持ちさせる必要があるのだ。


(チッ、さっきの蹴りで足を痛え。さすが上位種だな。俺の蹴りなんか屁でも無いって事かよ)


 先程の秋人の蹴りは本気だった。なのに与えたダメージは大した事が無いときた。もちろんあの程度の攻撃で倒せるとは微塵も思ってはいないが、もう少し効いてくれてもいいと思う秋人であった。


 そう愚痴をこぼしていても何も始まらないため、秋人はゴブリンを倒すために走り出す。

【疾走】で駆け抜けるスピードを利用してゴブリンの目を潰していく秋人。時たま勢いを乗せて首を斬り裂いたりしながら。

 だがいくら【疾走】と言おうと連続使用には限界がある。そのため間々に休憩と言う名のクールタイムを挟む必要がある。もちろん敵がそんな隙を見逃すはずも無く、ここぞとばかりに押し寄せ、秋人へと攻撃を繰り出してくる。秋人とて戦闘は素人。多勢に無勢で一気に形成は逆転し、今度は秋人が斬りかかられる番だったが、これまた優秀な相棒が解決してくれる。

 秋人の動きに支障をきたしそうな時、アリサはその絶妙なタイミングで【回復魔法】を使い、秋人の傷を癒す。もちろんちょっとした傷で使うのではなく、ましてや重症になるまで待つのではなく、本当に絶妙なタイミングで回復させるのだ。

 アリサはギリギリを見極めるのが非常にうまい。そしてただ観戦しているだけでは無く、余裕がある時は攻撃の手助けをしてくれる。

 それは天性の物かあるいはスキルの力なのかは分からないが、まぁ、なんにしてもアリサは魔法士としては一級品と言う事だ。


 前と横から襲ってくる2匹のゴブリン。前のゴブリンは剣を、横のゴブリンは槍を構えている。どちらも上位種の様だ。数では無く質で勝負をしてきたようだが、この程度で秋人を倒せると思っているのなら舐められたものだ。

 秋人は【疾走】を使い一気に前にいるゴブリンに近付き、目に当てるように剣を横に振るうが、流石は上位種のゴブリン。自分の持っている剣を盾にして防ぎ、そのほんの少し出来た隙を狙うかのように横から来ていたゴブリンが、槍を突き出す。

 離脱は不可能と判断した秋人は無理やり身体を前に倒し、前にいるゴブリンを巻き込んで倒れ込む。秋人は倒れ込む勢いに任せてゴブリンの首に剣を差し込み、「グザッ」と音と共に首を貫通させる。

 秋人はゴブリンの死を見届ける前に、手から剣を放し、倒れる勢いに任せて前回りをする。そのすぐ後に槍の先端が倒れているゴブリンを貫いた。もう少し遅かったら貫かれていたのは秋人だったかもしれない。

 倒れ込んだ勢いで少し背中を痛めたが、気にせず立ち上がる。

 槍使いのゴブリンから距離を取り、秋人は周りの戦況を見渡す。


(……普通のゴブリンは30前後、上位種は5匹くらいか……。結構残っているな。ベートは完全に遊ばれてるし。まぁ、時間が稼げるなら、何でも良いか)


 そう、ベートは完全に遊ばれていた。剣を振るえど軽々と受け流され、遊ばれている。ゴブリンジェネラルから攻撃することはなく、永遠と剣を振るうベートを見て楽しむかのようにしていた。


(チッ、人の事にかまけている場合じゃないな)


 先程の槍使いのゴブリンと新たな普通のゴブリン5匹で秋人を包囲するかのように囲い、武器を構えている。

 さらにはアリサを囲むようにして普通のゴブリンが8匹、更に上位種2匹が、包囲している。

 更にそれら全体を囲うようにして逃げ道を塞いでいる15匹のゴブリン達。


(まぁ、回復手段を持っているアリサを狙うのは理に適ってはいるけど……。本当に面倒な事をしてくれるな……)


 頬に汗が伝うのを感じる秋人。

 いくらアリサだろうと限界はある。そもそもアリサは魔法士では無いのだ。どちらかと言えば商人に適性を持つ普通(・・)の少女に過ぎない。そんな少女に数十匹のゴブリンの相手をさせてる時点でおかしいのだ。

 そんな思考をしていると、こちらの隙を窺っているゴブリンが少しづつだが近付いて来ていた。


(……こうなったらしょうがないか。少しだけ俺の力を使うとしよう)


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