少年の始まり
~物語の始まり~
住宅街が立ち並ぶ中、とああるごく普通な一軒家から大きな物音が響いていた。
家の中には10歳にも満たない少年が身体中を赤く染め、肩で息をしながら呆然と立ち竦んでいた。少年の手には赤く染まった刃物が握られていた。
「はぁ、はぁ……」
少年は荒い呼吸を繰り返しながら目の前にある光景を見つめる。
真っ赤に染まった30代後半の男が床に寝そべり、身体の至る所に傷跡があった。傷口からは今もなを赤い液体が流れ出していた。
男の近くには服が乱れた、髪が長く手足が細い12,3歳の少女がいた。
少女は自分の体を抱きながら、少年を見つめ口元を邪悪に吊り上げ、言葉を紡いだ。
「————」
「ッ!?」
それを聞いた少年は——
少女を見る。
倒れている男を見る。
自分の手に握られている物が何なのかを理解した瞬間、少年は頭が真っ白になり、何も考えられなくなり、手に握られていた刃物が地面へと落ちる。
混乱渦巻く少年の視界に、笑みを浮かべる少女が映りこむ。
それを見た少年は理解した。いや、理解してしまった。
理解した少年は生気が抜け落ちるかのように、瞳から光がなくなり、意識が途切れるのだった。
これは世界に絶望した少年が繰り広げる物語。
少年が何を成し、世界にどんな影響を与えるのか——。
少年が紡ぐ神話が、今幕が上がろうとしていた。