合流、成長、そして嫉妬
本日、もう一話投稿するかもしれません。
かもしれません(笑)。
翌々日、ユーニがやって来た。
「こっちです、こっち。」
「やほ、フーヤ。
・・・え、すごい。
どういう事?」
早速リアに気付いたようだ。
情報を得た日から、俺達は隠れるように人を避けた。
リアを見せるわけにはいかなかったからだ。
もっとも、しばらくすれば然程の問題でもなくなる。
プレイヤーには、NPCの名前を使う人々が一定数いるからだ。
彼らは外見も徹底的に似せる。
そういったプレイヤーだと思われれば良い。
リアの場合はリア本人なのだから、似るも何も無いが。
そして本人だから、ロールプレイも完璧!
問題があるとすれば、彼女がそれを理解して、受け入れられるかだ。
いつか話さないとな。
まずは、ユーニに事情を話す算段をつけなくては。
「えっと、かくかくしかじか。」
「わかるわけないでしょ!」
ち、駄目か。
「彼女は私の友人、ユーニ。
こちらはリアさん。
仕事を受けた後、そのまま同行しています。
二人共、よろしく。」
二人は挨拶し合い、握手を交わした。
おお、握手を交わしたぞ。
エモーション出来たな。
その後はリアには狩りを続行してもらって、その間に事の次第を説明する。
「あのクエストはやった事無いけど、そっか。
動き出しちゃったんだね。
だから、兄貴のせいだって言ったんだね。」
「まあそんなとこ。
しばらくは一緒に行動すると思うよ。
放ってもおけないしさ。」
「そうだね。
兄貴達にとっては四日に一度の私だけど、出来るだけ協力するよ。」
リアの休憩時間には、彼女も交えて色々話をした。
女の子のユーニがいると、やはり話が弾むようで、リアは楽しそうに笑った。
さらに採集も捗り、下級魔法力回復薬が結構な数で量産出来た。
「ありがとうございました、ユーニ。
次は四日後ですね。
また場所を移動しているかもしれません。」
「その時はリラ?」
「そうですね。
あちらの方が都合良いでしょう。」
「了解。
それじゃ、またね。」
リアと一緒に見送る。
こちらも夜なので、宿へと引き上げた。
今日も部屋は一つとしておく。
今日の狩りで、リアのレベルは十二となった。
順調だ。
明日からは回復薬を併用するつもりなので、さらに早くなるはずだ。
そろそろ魔術レベルを上げるべきか・・・。
ファイア・ボールが使えれば、さらに上の魔物も狙えるしな。
次の成長はそっちに回そう。
そして俺達は、残虐なるボーリガスの前に立っていた。
こいつを倒すクエスト、連続性のものだったんだが、報酬が武器だった。
何となく修行の一貫で受けたのだが、この思い付きに感謝。
だから今は、二人でパーティーを組んでいる。
強化も万全。
早速増刃で斬り込む。
二撃三撃と斬り、突いたところで、リアのファイア・ボールが炸裂した。
彼女には、俺が三回攻撃したところで一発撃つように言ってある。
それならほぼ敵意は取られないし、安全だ。
俺にとってはボーリガスなど格下も良いところだし、負けようが無い。
その攻撃は一撃たりともかすめる事は無く、こちらの攻撃は風属性による斬り傷まで付いてずたずたに刻んでいく。
そして三発目のファイア・ボールが焼いた瞬間に、ボーリガスの生命力は尽きた。
ばったりと倒れ、生命活動を止める。
「やりましたね!」
「お疲れ様。
これで依頼達成ですね。」
まずはドロップアイテムを確認してみる。
リアは、自分の目で確認する必要があるので、ボーリガスを見ている。
あちらは、目欲しい物は無かったようだ。
こちらは、ブーツを落としたようだ。
もちろん未鑑定なので、特殊効果確定!
よし、まずギルドへ行こう。
鑑定窓口の、この間とは違うお姉さんにブーツと銅貨百枚を渡すのだが。
銅貨を並べていると、お姉さんとリアがお喋りを始めた。
「この間持ってきた依頼、どうなった?」
「フーヤさんがやってくれました。
その後勧められて、私も冒険者になったんです。」
「そうだったの!
最近見ないから、どうしたのか心配してたのよ。
まさか一人で行っちゃったんじゃないかって。
でもフーヤさんって、女の子なのに強いのね。」
「そうなんですよ。
今はお師匠様をお願いしてるんです。」
君らね・・・。
リアはどうやら、俺の事を女の子だと思っているらしいな。
後で教えておかないと。
渡す物を渡したら、待ち時間の内に依頼の報酬を受け取りに向かう。
依頼人は、武具店のグラフさん。
「倒してくれたのかい、ありがとう!
これでメルへの輸送も再開出来るよ!」
この依頼は、ヒルトからメルまでの街道に現れたゴブリンの一団を掃討する、と言うものだった。
この一団の頭目が、ボーリガスだったわけだ。
ゴブリンを五体倒すと続けて依頼が発生し、追加で八体倒す事になる。
そして一度帰ると、ボーリガス討伐の依頼に繋がる。
ボーリガス自体は依頼を受けずとも一定時間ごとに出現する。
だから、戦うだけなら依頼は必要無い。
今回は依頼でもらえる武器が目当てなので、こうして受けたのだ。
報酬は好きな武器種を一つ選んで獲得する。
この時、ランダムで特殊効果が一つ確定で付くらしい。
依頼書に書いてある。
と言うわけで、二人共杖を選んだ。
もちろんリアのためである。
付く効果がランダムであるならば、二つもらって選べた方が良いに決まっている。
もらった杖を見てみると。
俺の方はシンプルに魔力増加一だ。
無難だが悪くない。
リアの方は炎属性ダメージ追加だ。
しかしこれ、実は勘違いし易い効果なのだ。
杖に付いていると炎系魔術の威力が上がるように見えてしまうが、実際には叩いた時に炎属性ダメージが追加される、と言うものだ。
故に、杖に付いててもいらん。
「ははは、お嬢さん外れを引いたね。
いいよ、引き取るから。」
外れの杖は、金に変わった。
そんなわけで魔力増加一の杖が、リアの新しい武器となった。
強化魔術使う時は借りよう。
能力値の最大は二〇だ。
だから、俺の魔力はこれ以上上がらない。
それは装備品まで含めての最大値だ。
たが俺には護符がある。
どうなる事やら、楽しみで仕方ないな。
再び冒険者ギルドへ。
リアがそろそろレベル二〇になるはずなのだ。
経験値を振らせてみれば、見事に二〇となった。
ならばここで、二次職への転職が出来る。
転職やダブルクラスの獲得は、この建物の中なら何処ででも出来るシステムになっている。
当初は窓口があった。
だが大混雑で苦情が入ったらしい。
タイミングが悪かったのもあったのだろうが、NPCに話しかけてそのまま悩む者が多かったのだ。
窓口周辺は冒険者に溢れてしまい、本当に足の踏み場も無くなった。
結果、NPCに話しかける事すら出来ない冒険者が生まれてしまった。
しかもそんな状態だから、用が終わっても出れないのだ。
急遽、今の形になった。
今では笑い話だ。
ちなみに出られなくなったのは俺だ。
リアは早速ステータスを開いているのだろう。
何も聞いて来ないと言う事は、困る事も無く順調に進んでいるのかな。
リアを見ていると、職業が魔術師から炎術師に変わった。
「おめでとうございます、リアさん。」
「ありがとうございます!」
炎術師の特性は、炎属性魔法の効果を上昇させる事と、受けた炎属性を無効化し、そこに使われた魔法力を吸収する事だ。
これは味方からの魔法にも当然発揮されるため、炎属性の魔法をわざと放って魔法力を渡す、などの手段にも使われる。
この場合は名前の色は変わらない。
魔力の上がる杖を手に入れて、炎術師の特性も備えて、リアの攻撃力が充実して来ている。
次はダブルクラスに何を取るか、だな。
そんなこんなで時間が過ぎて、鑑定のお姉さんに呼ばれて窓口へ。
「体力増加二、ですか。
なかなか良い拾い物でしたね。」
体力が二も増加すれば、リアの体力もかなり持つようになるだろう。
長距離の移動も楽になるな。
当然のように、リアに渡す。
「え?
でも私は杖をもらいましたし・・・。」
「遠慮は要りません。
さあ、どうぞどうぞ。」
にっこりと受け渡す。
有無は言わせん。
これでリアの体力は八から十になる。
それでもまだ俺より低いからな。
この後はリラまで歩きなんだし、リアにこそ必要だ。
リアの代わりに配置されたNPCを、リアを宿に置いて覗きに来た。
名前はエミリア。
微妙に似せて来やがったな。
話しかけるのは怖いので止めておく。
また村に連れて行って、のパターンが無いとも言えない。
そそくさと去って、宿へ戻った。
そして再び漁村リラ。
相変わらず冒険者の影は無し。
女連れで現れた事にやたら驚かれたが、慌てて否定する。
ちなみにリアの男性の好みを聞いたところ、筋肉だそうだ。
俺は完全に除外だな、畜生。
それからどうにも言い出せなくて、ずるずるとここまで。
あんな事聞きゃ、言い難くなるよなあ。
「こんにちわ、ミナさん!
また来ちゃいました!」
「フーヤさん!
いつでも歓迎ですよ!」
今日は俺にとって使い道の無い薬草を渡しに来たのだ。
ミナは喜んで買ってくれた。
「そちらの方は?」
「はじめまして。
フーヤさんに師事させていただいている、リアです。」
「弟子のつもりじゃなかったんですが、まあこの際良いかと。」
「お弟子さんでしたか!
どうぞよろしくお願いします!」
何か一瞬、背筋が冷えたのですが・・・、ミナさん?
彼女はにこりと微笑んでいる。
案外嫉妬するのね、覚えておくわ・・・。
七話、異変において。
マナの説明を変更しました。
考えていた効果と違う事書いてて焦りましたわ・・・。




