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神の欠片の降り注ぐ刻   作者: 布良瑞芽
1/6

-序章-

ただの学生のただの趣味です。厨二病な物が好きで書き始めてしまいました。厨二ちっくなバトル異能物を書いていけたらと思います。

序章ー物語が始まる前のお話しー


「主神殿,貴方は甘すぎる.世界のすべては神が支配していなければならない,あなたの甘さはもう終わらせなくては」

一振りの刃物が振り下ろされ、一つの意識が砕け散った。

この物語は最も世界に愛され,最も世界を愛した原初の神の最後から始まった.





--------------------------------------------------------------------------------





真っ暗な何もない空間でなにか声が響いているような気がする。

「・・・能力・・・世界を・・・友を・・・・」


「pipipi pipipi pipipi」


「ん・・・」



閉められたカーテンの隙間から気持ちのいい光が差し込む早朝の空気に,無機質な電子音と眠たげな少年のうめき声が響いた。


「あれ、目元がぬれてる?」


青年が不思議に思うと同時に少年の心に一抹の寂しさのようなものがこみ上げる。


「なんだか不思議な夢を見ていた気が、するな」


「pipipi pipipi pipipi」


アラームのスヌーズ機能が働き、再び部屋に電子音が響き渡る。


「あっ、いけね。電車逃しちまう」


そういうと少年は学校に行くために気持ち急ぎながら着替えを開始する。

少年は黒地によくわからない英数字の描かれたシャツに、何の変哲もないGパンというあまりセンスの感じられない服装に着替えはじめる。

そして男性にしてはやや長い黒髪を鏡の前で軽く整え家を出た。

少年は学校へは電車で通学しているらしく駅に向かって急ぎ足で歩き始めた。

少年の家から駅へは直線距離ではそうたいした距離はない。だがその丁度中間に森と呼ぶには少々小さいが林と呼ぶにはやや大きい、木々の生える箇所があるため普段はぐるっと迂回して駅へ向かっていた。


しかし今日は寝起きに感傷に浸っていたためか時間がなく、近道を選択するのであった。



「あーもう、こっちの方が早く駅まで到着するとはいえやっぱ足元わるいなぁ」


なんだかんだ器用に木々の間を抜けながらそうぼやく少年であるが、春先のこの季節はまだましなほうで、夏になれば小虫が大量に発生する。すると、この近道の利用さえ困難になることを思えばまだ我慢もできるというものである。

急ぎ足で近道を行く中、少年は摩訶不思議な光景を発見する。

木々の感覚がやや他の場所より開けている一角に、垂直に水面のような波紋が広がっているのを発見したのだ。


「なんだこれ?水面?なわけないか」

「じゃあこういうのでお決まりな別の世界への扉とかそんなんですかね?まっさか、いやでもこれ」


時間がなかったはずの少年は、頭の片隅で今日の授業は遅刻かーなんて考えながら目の前の不思議な光景に近づいていく。

少年は比較的様々な種類の書籍を読むがその中でも特にファンタジー小説やSFミステリーを好む。そのため、ついこの不思議な光景に魅入られてしまったのも仕方ないのかもしれない。


しかし、この手のお決まりを知っているはずの少年は、興味本位で近づいていく物語の主人公達の末路を悲しいかな失念していた。


「おー、ほんとに異世界への扉みたいだな〜どうなってんだこr」


波紋に手を伸ばした少年を待っていたのは当然のようにお決まり展開。当たり前のように波紋に飲み込まれるのであった。







一面に広がる膝ほどの丈の黄金色の植物のカーペット。その中心に垂直に波紋が揺らめいている。


「いてっ、なんだここ」


その波紋から突然吐き出された姿がひとつ。やはりというべきか先ほど木々の間の波紋に飲み込まれた少年であった。


「なんだよ、まじで異世界への扉だったわけかよ。いやそれともただ単にどこか別の場所に飛ばされただけかもしれないよな」

興味津々の少年はここでとある懸念事項に気がついてしまう。


「あれ、でも俺こんなとこ来ちゃってどうすればいいんだ?普通異世界系はご都合展開も一緒のはずなんだけどそもそも回りに草しかないじゃん・・・」


少年はぼやきながら出てきた波紋に戻れないか後ろを確認した。


「なんだ・・・あれ・・・」


振り返った少年の目に飛び込んできたのは先ほどまでの不思議な波紋などではなかった。

少年からおよそ4,500mほど先だろうか?一面景色が同じな為しっかりとした距離はわからないがとにかくそいつはそこにいた。

そいつは全身をメタリックな灰色に鈍く光らせ,クモのような、しかし5本しかない脚を順番に振り回していた。

そして一拍おいてから青年はいまさらのように身を低くかがめ現状を整理する。


(へんてこなゲートに吸い込まれたと思ったら周りが別の場所で目の前には唐突に化け物か・・・)


「よし、今後のことはおいておくとして逃げよう」


ほんのわずかに悩んだ後、迷うことなく結論を出した少年は膳は急げとばかりに身を屈めたまま移動を開始しようとする。


しかしそこで少年の目に予想外な、いや、ある意味想定していた光景が映りこんだ。

先ほどから暴れる化け物の足元に一人の少女が踊るかのように脚を、おそらくはあの化け物の攻撃であろうものをよけていた。


その少女を一言で表すならば、とにかく「綺麗」な少女だった。さほど大きくない、むしろ小さめな身長に透けるように白い肌、澄んだ空色の瞳、そして何よりも際立っているのは輝くようにゆれる腰ほどまである白銀の長髪。


「綺麗・・・だ・・・」


少年はつい先ほどまで逃げようとしていたことも忘れ、無意識につぶやき見とれていた。

しかしそんな少年の目の前で攻撃をかわし続けていた少女はついに化け物の脚に当たってしまう。当然少女はバランスを崩し吹き飛ばされてしまう。そして少女の姿が少年の視界から消える。草のせいで詳細はわからないがおそらく倒れてしまったのだろう。


突然だがここで先ほどから登場している少年について語っておこう。

この少年はありていに言えばごくごく「普通」の、何か特徴を挙げるのならば「なんにでも興味を持ち、そして普通の範囲内でどんなことでも器用にこなす」そんな少年だった。

そしてこの少年は基本的には「心優しく、仲間を大切にする、しかし、代わりに他人には興味を示さず、そしてなにより自分を最も大事にする」そんな少年だった。

そのため普段の少年であったならば、見とれている状態から気がついたならば、心の中では少女に謝りながらも即座に逃走を再開していただろ。

しかし、この時少年は逃走を再開しなかった。どころか、むしろ化け物に向かって駆け出していたのだ。

もう一度確認しておくがこの少年は通常ならば、知り合いならともかく見ず知らずの少女のために自分を危険にさらすような人間ではない。

ではなぜ少年はここで駆け出してしまったのだろうか? 


しかして、理由は別にたいしたものではなく、ありていに言えば一目惚れと呼ばれるものだった。

それまで特に恋心など感じたこともなかった少年であったが、この時、人生初の恋に落ちてしまっていたのだった。


少年は駆ける。

だがしかし、駆け出した少年はまだ気がついていなかった。

どうして4,500mもはなれた先にいる少女の姿を、さほど目がいいわけでもない少年が一目惚れしてしまうほど鮮明に見ることができたのだろうか?

どうしてこれだけ離れていた距離が、ほんの数瞬でグングン縮んでいくのだろうか?

どうして忘れていたはずの今朝の夢の内容を思い出し、そして、理解しているのだろうか?


思い出した夢の中では確か、こんな声が聞こえた。


「あなたに我が能力を分け与えよう。もうさほど力のない我が身なれど、滅びる定めならば我が体を授けよう。 お願いだ心優しき者、世界を、私の大切な友を守ってやってくれ。」


少年は無我夢中になって草原を駆ける。

その速さは人間の足が叶えられる速さではなく、まさに一陣の風のように。

少年の手にはいつの間にやら水が逆巻き、剣の形をとって凍結する。


「うぉりゃあああああああああああああ」


無我夢中の少年は、ものの1秒もかからずに化け物の目前まで近づき、見ず知らずの少女を助けるべく巨大な化け物へと突撃する。


「グチャ」


そう、文字通り「突撃」する。

少年の駆ける速さはそれはもう素早く、当然そんな速さで見るからに硬そうな化け物のメタリックボディに突撃しようものならどうなるかはわかりきっていた。

少年はいつの間にやら手に持っていた剣を振るうこともなくただただ化け物に衝突して爆ぜた。

幸いだったのはこの青年の願いであった少女の救出は、化け物がバランスを崩したことで一応成功した。


「あれ・・・こん、な・・・はずじゃ・・・」


しかしそれを確認することもなく化け物の脚からずり落ちた肉塊、もとい少年の意識はそこで潰えた。



夢と同じ、いやどこか夢とは違う暗闇でまた何者かが語りかける。


「神の、友の意思を継ぎし者よ、死するでない。汝の器に肉体の構築を」



「んぁ・・・」


うっすらと開いた瞼の間からまぶしい太陽の光が差し込む。


うめき声の発信源である先ほど肉塊、もとい少年が木々の間で、五体満足で目を覚ました。


「あれ、俺どうなったんだ?さっきの化け物は・・・夢だったのか?」

「あっそれにあの女の子大丈夫だったんだろうか?」


ここで少年は自身が地面の上に寝転がっているはずなのにやけに頭の辺りが心地よいことに気がつく。


「あ、目が覚めましたか?」


少し上を見上げれば至近距離に先ほどの少女の顔があり、なにやら話しかけられているではないか。


「え、あ、さっきの、無事だったんですね!?」

「それはこっちのセリフです!いきなり現れたと思ったら一瞬でグロテスクな光景になるんですもの」

「やっぱりさっきのは夢ではなかったのか、俺やっぱり死んだんですかね?」

「何言ってるんですか?生きてるじゃないですか。私も死んだものとばかり思っていたのに、あれを倒して確認してみたら怪我ひとつない姿で寝てるんですもの」


少年は一目惚れした美少女の膝枕を堪能しつつもここで1つの疑問が思い浮かんだ。


「あれを、倒す?あれってのはさっきの化け物のことか?」

「ええ、世界獣のランクB--ね。あれならあなたが寝ている間に私が倒したわよ?」


なんでもないかのように話す少女であるが、少年はこんな可憐な少女が、あんな見るからに強そうな化け物を倒したことを信じられずにいた。


「本当に倒しちまったのかよ。それにここ・・・さっきの草原ではないよな?俺の家の近くだ」

「あぁ、いきなり現れたと思ったらあなたのお家の近くに門がつながってしまっていたのね。あの草原なら世界の主が死んだことで崩壊して消え去ったわ」

「世界の主って、あの化け、っ・・・」

「あれ、どうしたの?やっぱりどこかわるいわけ?」


すこし驚きながらも心配してくれる少女の姿を見ながら、一度肉体的には「死亡」して、一時的に忘れていた大量の情報が青少年の頭にフラッシュバックする。そう、夢の中で与えられていたはずの世界と神と、そして自身に宿った欠片の情報が。

目の前でオロオロする少女を安心させるようにぎこちなく微笑みながら少年は思った。


(あぁ、これは今日は学校は休みだな)


「いや、大丈夫だよ。体調が悪いわけではない。さっきのが世界の主だってのと、後はまぁ、それから他のいろいろも思い出して困惑してただけだ」

「思い出した?」

「ああ、世界に何が起こっているのかとか、あと君がなんなのかもわかった」

「わかったって・・・、もしかして【世界の意思マスタールール】?」

「ああ、たぶんそれだと思うぜ」


若干きめ顔で言う雪奈に対して、やや悩むような素振りを見せながらも少女は口を開く。


「じゃあ私はなにも説明しないわ。代わりにあなたにこう聞くことにするわね」



「世界を、神様の親友を助けてあげてくれる?」


「いやだ、っていいたいとこなんだがな、いいぜ。本当なら神とやらに頼まれてもそんなのごめんなんだがな、君の目的も同じだんだろ?」

「ええ、私は世界を助けてあげなきゃいけない。私は主神様が友を救う為に最後に使わした者だから」

「じゃあ俺は世界は助けない、だけど君を助けるよ」

「ほぇ、えっと、それは  ありがとう?」


少年のかっこつけた物言いに疑問符を浮かべながらも、少女は少し頬を染めながらお礼をいう。


「とりあえず自己紹介だよな、俺は九条雪奈くじょうせつな、神の欠片を継ぎし者だ」

「ふふっ、その自己紹介なかなかいいね」


少女は口元も隠しながら少年の、いや、雪奈のちょっとかっこつけた自己紹介をからかい7割本音3割でそうほめた。


「私はスフィア、主神様から最後の願いを託された天使です。よろしくね、雪奈さん」


そうしてここに|少年の意図(淡い恋心)など気づかれぬまま、一組の天使と継承者のペアが誕生した。





--時は少し経ち、某地区某団地


先ほどの二人は場所を移し、雪奈の家でテーブルを挟んで座っていた。


「あれ?雪奈さんは一人ぐらしなんですか?」


スフィアは椅子に座りちびちびとお茶を飲みながらそんな質問をした。

それもそのはず、雪奈の家はどう見ても一人暮らしではない一戸建てだというのに今現在、どうにも周りに二人以外の気配がないのである。


「あぁ、いや、俺んちは4人家族だぜ?父さんは仕事が忙しいとかでなかなか帰ってこないけど普段は母さんも妹もいるよ」 


「でもこの家から気配がしないように思うんですが?」

「当たり前だろ?もう昼近くだぜ? 二人ともとっくに仕事と学校だよ」


「なるほど、確かにそうですね」


「まぁそんなことはおいておいてだ。今俺が得たこの情報が正しいのかを知りたい。スフィアもいろいろ知ってんだろ?現状を整理しようぜ」


目の前のスフィアの顔をチラチラ見ながら雪奈が本題を切り出した。


「うーん、もしかしたら私のほうがいろいろ知らない可能性もあるけどね。お互いの情報を交換するのはいいことだと思う。そうしようか」

「とりあえず俺からだ、さっき頭にいきなりはいってきた情報を整理がてら話すな。間違ってたりしたら教えてくれ」

「まず最初に世界になにが起こっているかだ」

「俺の頭に響いた情報によれば、つい昨日、いやもう今日なのか?どっちでもいいが昨晩に神が、それも最も原初の神である主神が殺された」


「うん。その通りだよ。ついでにいうとその主犯はおそらく二人いる準一等級神、副神のうちの一人よ」


この答えに雪奈はやや驚いたような表情を浮かべる。


「え、そうなのか?その情報はなかったぞ」


「うーん、じゃあやっぱりお互いで持ってる情報が少し違うみたいね。どんどん話していって」


「おう、そんでその神が、あー主神のほうな。その主神が死ぬ間際に自分の体と自分の能力をバラバラにして神域の外に放った」


「そう、そしてもともと主神様とつながっていた神域は崩壊を始めてるわ。でも今は崩壊前の封印状態みたいになってるの。これは他の、たとえば、首謀者の副神にも予想できなかったみたいで今は封印状態の神域に閉じ込められてるって感じね」


「なるほど、それでまだ俺のとこにきてないのか」


「あれ、そこはわかってるんだ」


「おう、神ってのはこの神域ってのの中でなきゃ十全に力を発揮できないんだろ?でも、今の神域は封印状態であとは崩壊を待つだけだ。んで、新しい神域を作るのに主神の体が必要なんだろ?」


「そうなの、だから神域の封印がとけたらおそらく雪奈を襲いにくるでしょうね」


「なるほど。なぁ、その神域の崩壊ってどのくらいで起こるんだ?」


「うーん、確証はないけどたぶん主神の封印がかかってるわけだし短くても数年は保つと思うけど・・・」


やや思案顔になりながらも不安をにじませる雪奈にスフィアが声をかけようとする。しかし、それよりも早く割り切った表情になった雪奈が話し出す。


「確証はないけど・・・か。じゃあその数年の間になんか対策練らなきゃならないわけか。んで、その主犯の副神ってのはなんでまた上司の神様殺しちまったんだ?」


この切り替えの早さにスフィアはやや驚きながらも少し微笑み情報を話していく。


「その答えの前にこの事件が起こる前の世界のあり方についてって知っている?」


「いや、俺が持ってる情報はこの事件後のことだけだな」


「そう、じゃあ簡単に説明するけどね。世界はもともと原初の世界しかなかったの。この原初の世界に最初にいたのが主神様ってわけ」


「その原初の世界ってのが頭に響いてきた神様の声が言ってた友ってやつか」


「うん。そうだと思う。それでね、最初は世界は一つしかなかったんだけど時が立つにつれて世界が増え始めたの。って言っても原初の世界の中にまた世界が生まれる感じかな?そして世界が増えるとともに神も増え始めた。そしてどんどんどんどん世界が増えていくとそれぞれの世界に神でない意思を持つものが現れ始めたの」


「それって人間のことか?」


「そうだよ。実は人間以外にもいろいろいるんだけどね。ここまではよかったんだけど増えた神様たちはだんだんと力をつけ始めてね、世界やそこに生まれた意識体を自分たちが管理していないと気がすまなくなってきたの。だけど主神様は世界を、友を管理するなんてのはいやだって意見だったわけ」


「あぁ、それで一番力持ってるやつが反対意見なのが面倒になってばっさりやっちまったのか」


「簡単に言っちゃえばそうね」


心底あきれた表情になる雪奈になんだか話していた自分も恥ずかしいような気になってくるスフィアであった。


雪奈は頬を染めるスフィアに軽く見とれながらも状況整理を続行する。


「よし、ここまででとりあえず世界についてはわかった。次は俺に起こったこと事態についてだな」


「さっき私とお話してたときに【世界の意思】については理解してたよね」


「おう、俺の頭に響いてきたこの情報の出所ってとこだな」


「【世界の意思マスタールール】は原初の世界の意識みたいなものが起こしている奇跡みたいなものね」


「ちなみにだ、俺の体が治ったのもこの世界の意思の力の一つらしい」


「ああ、なるほど。それでグロテスクから一瞬で治ったのね。でもなんで世界の意思で体の再生を?」


「それがどうやら俺には神様の体の一部が宿ったらしい。それで友を助けようとしてって感じじゃないか?たぶん・・・」



やや自信なさげに言う雪奈であったが、本人の中ではなぜかほぼ確定事項のように感じていた。


「それで体を治してもらえたわけね」


「いや、正確にはこれは治療じゃない。どうやら俺が死ぬときに俺自身にたまっていた神の力を、世界が勝手に使って体を再構築したらしい」


「再構築・・・って治療と何が違うの?


いまいち要領を得ない雪奈の説明に疑問符を浮かべたスフィアがかわいらしく小首をかしげながら質問をする


「・・・、ああ、まぁ簡単に言うと殺される前よりもなんならコンディションがいい」


またしてもやや見とれていた雪奈であるが、すぐに切り替えそう答える。


「それってすごいじゃない!治癒の上位互換ってことよね!」


やや前のめりになり興奮気味に話すスフィアの顔が雪奈に近づく。お互いに顔が赤くなっているのだが、しかし、悲しいかな理由はスフィアは興奮から、雪奈はもちろん照れからである。


「あ、あぁ確かにすごいんだが、一緒にもらった情報だとこれ完全オート発動で自由には使えないみたいなんだ・・・。しかも俺の中の神の力にストックがなければ発動しない。そのうえ発動したらごっそり力を持っていかれるみたいだ」


「なんだ、自由につけたりするわけではないのね」


離れていくスフィアの顔をすこし残念そうに眺めながら、雪奈は次なる情報を話し出す。


「今の【肉体再構築メタモルフォーゼ】、の他にさっき話してた神様の体の欠片と神様の力の欠片がある。まず俺に宿った神様の体はどうやら瞳らしい」


「瞳って目のことよね?そんなふうには見えないけど?」


瞳を覗き込もうとまたしても近づいてくるスフィアに、雪奈は喜ぶやら照れるやらで大忙しである。


「ああ別に普段から神様の瞳ってわけじゃない。通常使用時は神様の瞳の力をすこし目に宿すって感じかな。ほい、【|神の瞳(ゴッドアイ】)」


そういいながらなにやらつぶやき、実際に目に力を宿して見せる雪奈、すると雪奈の右目にうっすらと魔方陣のような模様が浮かぶ。


「あ、ほんとだ。すごくそれっぽいわね!これで何ができるの」


「うーん具体的にはわからないんだがとりあえずすごくよく見えるぞ。あと見た物の情報も少し読み取れるみたいかな?それになんか力の波みたいなのも見えるや」


「へぇ、なかなか便利そうじゃない」


|(透視とか使えればなぁ)


目の前のスフィアの体をチラチラ見ながらそんなことを考えてしまう雪奈であるが、彼はまだ気がついていない。この偉大なる神の瞳は服程度なら見ようと思えば内側の情報を見られることを。

思いはしても実際に試さない辺り良識があるのは雪奈の長所といえば長所であった。度胸なしといわれればそれまでだが。


「ん?いきなり黙り込んでどうしたの?」


「ああぁ、いや、なんでもない。でもこれ見てるだけでもそこそこ疲れるみたいだし常用はできないかもな」


「そうなんだ。じゃあ重要なときだけちょっと見るようにしないとね」


雪奈は結局服の内側を見ることなく瞳の模様を消してしまう。


「次は俺に宿った神様の力の欠片のほうだな。こっちはどうやら二つあるらしい」


「一つは肉体強化の【獣を宿し者ビーストテイマー】だよね?」


スフィアはさも当然のように雪奈にそう聞いた。

これを聞いた雪奈は数瞬ぽかんとしたのちスフィアの想像していたのとは異なる回答をした。


「なんだ?そのびーすとていまー?ってのは?」


「え、【獣を宿し物】じゃないの!?」


「お、おう。俺の能力は【氷水の支配者ブリザードマスター】と【神速の二重動ダブルスピード】だぞ?」


驚くスフィアに少々たじろぎながらも雪奈はそう答える。


「【獣を宿し物】がないってことはハードな戦闘は無理そうね」


残念そうにつぶやくスフィアであるが雪奈はあわてて意見をいう。


「いやいや、でも【氷水の支配者】は水の仮想生成に完全生成、凍結からこまかなコントロールまでできるし戦えそうじゃない?」

「うーん、でもやっぱり肉体のスペックは大事だと思うのよ」


なおも残念そうなスフィアに、雪奈は役立たずといわれている気がして、あせりながらもう一つの能力の説明をする。


「い、いや、でもさ【神速の二重動】は自分の関係する動きを二倍速にできるんだぜ?これ絶対強いだろ」

「二倍速は強そうだけど・・・基礎スペックがね・・・。あれ?でも雪奈さん私の前に現れたとき明らかに二倍とかって速さじゃなかったですよね?」


そうスフィアに言われて初めて雪奈は自分が力を使ったときのことを思い出す。


「うん?確かに。ああ、この能力どうやら重ねがけができるらしい」


「重ねがけ!?すごいじゃない!じゃあものすごく速く動けるってことよね。確かにそれならぜんぜん戦えそうだわ!」


うれしそうに話すスフィアにこう言われ、気分を持ち直した雪奈であるが、一つ大事なことを伝え忘れていたことを思い出し気まずそうにこういった。


「えぇっとさ、スフィア」


「ええ、なにかしら?」


「この能力、確かに重ねがけできるんだけどさ。重ねがけすると体にかかる負荷も乗倍されてく・・・」


「え、じゃあ結局重ねがけできないってこと?」


「い、いやーたぶん4倍?いや8倍までならがんばればいけないこともないような気がするなぁ・・・なんて」


「うーん、まぁそれなら十分なのかしら?」


「お、おう、たぶん十分だ」


「心配ね・・・」


「・・・」


お互いにしばし無言になってしまう。しかしここでも雪奈は切り替えの早さを発揮して割り切った表情で話し始める。


「ま、俺の情報はこんなもんだ。スフィアは主神が最後に世界を救ってくれって願って送り出した天使なんだよな?」


「うん、そうだよ。私は主神様の天使の最終個体郡のうちの一人。情報を整理したところで一応もう一度聞いておくね」


スフィアはやや不安そうに雪奈に先刻したのと同じ質問をする。


「世界を助けてあげてください」


これに対して雪奈も先ほどと同じ答えを、今度は先ほどよりもかっこつけて答えた。


「おう、君が望むなら、俺は君を助けるよ」


「ふふっなにそれ」

「いいだろ別に」


「じゃあ神域崩壊前にいろいろ準備しなきゃね」


「おう、俺もがんばる時ががきたのかね」


お互いに照れくさくなり小さく噴き出しながらも、こうして始まった二人の物語は、これから数年後、神域が崩壊して世界に神の力が降り注ぐ中紡がれる、神々と人との戦いの物語へと続いていく。


ー序章(説明パート)終了ー



ここまで読んでいただきありがとうございます。こちらは序章ということで本編も書き次第あげていこうと考えているため、もし気になりましたらそちらも読んでいただけるとうれしいです。

また、いかんせんこのようなことは初めての試みなため、もしよろしければアドバイスや感想等いただければ幸いです。

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