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15 激闘の答え





 観客の声、重機の衝突、それに闘技の結末。

 いろんなものが、すべてを揺らした瞬間だった。


 そして、今は互いにその鼓動を停めるユンボーとアイアンペッカー。

 高まりきった熱が未だ冷めやらぬ中、俺は操縦席のドアを開け、粘っこいジェルの塊からブニョ、と身を乗り出す。

 ダッ、と重機から飛び降りたらコンクリ地面は硬く、お察しの通りな痛む足にちょっと悶えた。


 突き立ったままの破つりピックと、それに繋がる肘までのアームを横目に、よれよれしながらコンクリフィールドを駆ける。

 速度を落とす足の先には、アームを折るアイアンペッカーが上部機体の操縦室をこっちへ向け、横倒しで転がる。


「特に心配して、ここに来たわけじゃないからな」


「敗者への仕打ちでも行うつもりかね」


 少しだけ色をつけたジェルの中には、四方のベルトでがっちり操縦席に体を固定したままのボブマッチョ。

 機体が横転しているのだから、当然、真面目な顔に見える横向きのおっさんと話すことになる。

 なんというか……シュールさを感じてしまう。


「そうして欲しいなら、俺が遠慮してやる義理もない……ないが、そんなくだらないことするかよ」


 それにスライム化するジェルに包まれるマッチョなんて、進んで関わろうとは思わん。

 だから、前言撤回。逆に遠慮させてくれ。


「ま、それはそれとして」


 一歩踏み出し、襟を正す。 


「俺は重機乗りとして、あんたに敬意を払う。あんたは俺に――俺には見えていなかった、重機の更なる可能性を見せてくれた。そして、獣騎に大切なものが何かを俺に気づかせてくれた。そのきっかけになった」


 心からそう思う。

 今ははっきりとした言葉にできないが、俺はボブとの闘いで湧き立つ想いに駆られている。

 それは自分の未熟さに向き合う悔しさでありつつも、未来へ向かうためのみなぎるような力だ。


『ふーむ。私が後進を育てる立場になってしまうとは……認めたくないものだな。だが、自分に代わる若者を送り出すというのも悪くない。はっはっはっ』


 大きな笑い声に小さな背中を押され、俺は前に進む。

 俺は立ち止まれない。俺は振り返れない。

 俺が、俺達が目指すのは、もっと先にある。


「だから、いちいち拡声器を使って喋んなって……」


 俺はこの愚痴で、既に勝者の名が会場中へ響き渡った後の、ちょっとした一幕を閉じることにする。

 もちろん、壮絶とも言えた決勝戦の闘いの末、讃えられた者の名は俺の名である。

 ただし、この勝利は俺一人では届かなかった高みだ。


 だから俺は、走っている。


 この勝利を急ぎ仲間の元へ運ばなくちゃいけない。

 喜びを分かち合うために、感謝の言葉を贈るために。





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