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13 鋼の息吹!



 動けない俺と間合いを図るアイアンペッカー。

 重機のそうだが、その操縦室の中の人影も体勢を整えているのがわかった。

 重機は作動チェックのような動きを見せ、ボブマッチョは座席のベルトと何やら戯れている。

 一時的な猶予に、ひしひしと感じるヤバさが増すばかりの俺。


 こっちは若干反応が悪いが、アームは起きる。バケットも返る。

 操縦席のランプは点灯し、計器の針はぐるぐる状態であるが、あいつの言うようにエリッタたちの技能のお陰で、辛うじてユンボーは機能を維持できている。

 しかし、機動力の低下が著しい――というかゼロだ。

 ユンボーを動かそうと文字通り足掻くが、駆動音ばかりが高鳴り、ピクリとも歩けない。

 さあ、どうやって闘う!? とひたすらに頭を痛める中、準備が整ったんだろうよ。


 アイアンペッカーのアームが、ぐうん起こされた。

 上へと真っ直ぐに伸びる鉄の腕。

 その先のピックが太陽を指す。

 さながら、人が大空へ向かって指先を掲げるポーズといったところ。


『待たせてしまい申し訳ない。しかしもう皆さんはお気づきだろう。そう、これから私はその期待に応え、あの大技を繰り出そう』


 明らかに俺宛てじゃない告知に、闘技会場の熱が更にヒートアップした。


『ここに、アイアンプレスハンマーにて相手を打ち倒すことを宣言しよう。絶対的な優勢に甘んじることなくっ。私は敢えて、アイアンペッカーの最大闘技を使い、勝者の道を掴みとるっ』


 俺にはなんとも楽しくないこの頼もしい声に、闘技会場は本日最高の盛り上がりを見せた。

 観衆の声援に飲まれそうになる。いいや、実際飲まれた。

 淡々と眼前で行われた光景に、思考がおぼろげになっていた。


 両の履帯を失う俺にはもう鳴らせないキュラキュラ音を鳴らし、トリコロールの機体が再びこっちに近づいてくれば、破つりピックをコンクリ面に打ち付けた。


 俺の機体にではなく、俺の傍の地面へピックを穿つアイアンペッカー。

 その後、なんとそのアイアンペッカーの機体が、じわりじわり浮き上がっていったのだ。

 今俺は、操縦席の中から見上げている。

 仰ぎ見る空には、逆さでこちらを見下ろすボブ=アイアンペッカーがいる。


「マジ……かよ」


 まさか、こんな光景を目の当たりにするなんて、夢にも思わなかった。

 人間に置き換えるなら、人差し指を硬い地面へ突き刺し、その指を支点に片腕で倒立された感じ……。

 重機本体を持ち上げる出力にも舌を巻くが、敵ながら重機で逆立ちを試みようとする発想に驚嘆した。


 そして、我に返れば。


「だああ、どんな預言者よりもこれから起こる惨劇がよく見えるっ」


 上空の逆さボブマッチョはボディ・プレスよろしく、このまま機体アイアンペッカーごと俺に落ちてくる気だ。

 そして、その重機の落下パワーを集約してぶつけてくるのは頑丈な鉄板、排土板。


『やはりメカニックの恩恵だろう。あれだけのアイアンペッカーの攻撃を受けてなお、ユーの『ジェル』は私が思うよりもクリーンなままだ。だがしかし、私のアイアンプレスハンマーの一撃は、そのストロングな機体さえもレッドレベルに叩き伏せる衝撃がある。果たして耐えられるかな』


 ジェルがあるから、機械が丸ごとぺしゃんこってことにはならないだろうが、

重機の重量をすべて乗せた攻撃だ。すごい衝撃ダメージに決っている。

 ボブマッチョの言うように、一発でジェルレッドまっしぐらの可能性大。


 バケットでなんとかあれを受け止められないか!?

 いやいや到底無理だよな。そんな出力があれば今頃、軽く相手の機体を殴り飛ばしている。

 じゃあ、落ちてくる機体を払う感じで――いやダメだ。突き刺したピックを固定させた足場として、機体自体を叩きつけてくる技なんだ。だだ落ちてくる物をいなすのとはわけが違うっ。

 ならどうする? 俺はどうしたらいい?


『なるほど。今タクミがアームをバタつかせているのは、機体を引きずり動かす方法を取ろうとしているからだな』


 上からの余裕しゃくしゃくの声は、相も変わらず俺の行動を解説する。

 この場にいてはとにかくヤバいと一時退避を選択する俺は、荒業を敢行しようと藻掻いていた。

 もしここが土フールドなら、バケットを地中にズバっと差し込み固定。そこを支点に、ブーストを掛けた出力のアームで、ぐいっと機体を引き寄せれていた。

 けれども、ここはコンクリフィールド。

 肝心要のバケットが、


「くぬう、ツメが入らねえっ」


 バケットを刺そうとしても硬い地面から、カーン、カーンと弾かれる。

 何か引っ掛かりでもとガリガリコンクリ面の上を探すが、綺麗なそこに突起物など見当たらない。


「ヤベ、とにかく、ヤベえ」


 俺ピンチ、ピンチ、ピンチ、絶賛絶体絶命っ。

 どんだけ足元のペダルに力を入れても、機体はその場に留まったまま――良い的と化している。

 最大ヤベえ、マジでこのままだと――。


『さあ、タクミ。ユーもアイアンペッカーのいしずえになりたまえ!』




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