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10 獣騎乗りとは②




         ◇



 王都で開催予定の獣騎闘技本戦。

 その大会の規模は、”世界中の”との冠をつけても良いほどだと聞いている。


 俺が目指すのは大会優勝の席一つ。

 優勝賞品のこの世界からどこの異世界にでも渡れる「異世界旅行券」を手に入れるためだ。

 俺はこの旅行券で日本へ帰る。

 ただし、そこまでの道のりはあと少しだけ遠い。


 予選にあたる各地区の大会にて優勝した獣騎だけが、本戦が行われる王都へ旅立つ資格を得る。

 そこからが本番だと言ってもいい。


 あと一勝。

 三日に渡って行われたここでの大会決勝に勝てば、俺達は王都へ向かえる。

 俺の帰郷への更なる前進。


 やはり俺は、相手が誰だろうと負けるわけにはいかない。

 日本で、プレイするまでは死んでも死にきれない『どきパラ』が待っているのだから……。


「うおーしっ」


 自分の覚悟の強さを確認するのは、愛機ユンボーの中。

 ジェルを注入する前の操縦席は、じわりと汗ばむ程度に暑い。


 キュラキュラ。


 快晴もあり、外は薄着でも良い気候。

 昼過ぎの決勝戦ということで、観客たちの腹具合も良い感じだろう。

 力があり余っているのか、闘技前にもかかわらず声援が飛ぶ。

 9対1の割合で……まあ、あれだな。俺へ声援は少ない気がする。


 キュラキュラ、キュイ。


 闘技場入場口で足を停める。

 バトルフィールドを突っ切った視線の先には、もう随分とスタンバっていた模様の相手重機の影があった。

 俺の方は今入場したばかりなので、これから機体ユンボーの検査を受ける。


 ユンボーの足元では、二人の検査員があれこれ機体をチェックする。

 ドアを開け、座席で待つ俺の傍では、もぞもぞ動くエリッタが計器類の最終確認をする。


「エリッタ、抱っこしてやろうか」


「エリッタはそんなに子供じゃないのです。抱っこで喜ぶような時期はもうとっくに昔々のことなのですよ」


 俺は抱っこして喜ぶ時期、真っ盛りです。

 こんなやり取りをしつつも、エリッタはチェックシートとひたすらにらめっこ。

 一見して、邪険に扱われてそうな俺であるが、至って普段の重機乗りと整備士との良好なコミュニケーションである。

 検査が終われば、後はジェルを注入して闘技を始めるだけ。

 だから俺は、ぎりぎりまでエリッタと話せる時間を大切にしたいだけなのだ。


「はい。問題なさそうなのですね」


 ふう、と操縦室に安堵の息が漏れる。

 そうしてから、エリッタがその微笑ましい顔を向けてきた。


「お爺ちゃんもエリッタも、タクミくんの性格をよく知っています。なので、細かいことは言いません」


「俺をわからずやの反抗期の子供みたいするのやめてくんない?」


「ほら、こうやってすぐ反抗するのがタクミくんなのですよ」


「エリッタのいけず」


「うふふ。エリッタはちょっと意地悪しちゃいました」


 そう言って笑う獣っ子。

 そして俺の眼前に出された、小指が立つ小さな手。


「タクミくんは優勝する。エリッタもお爺ちゃんも信じてます。調子乗り屋さんのタクミくんにはあれこれ言うよりもこれで十分なのです。それに、ユビキリゲンマンの約束をしたので、大丈夫なのです」


 そうだよな。出会った当時、俺とエリッタは指切りしたよな。

 俺は出される小指に、自分の小指を引っ掛ける。


「決勝に勝てば、本戦の参加チケット以外にも副賞で賞金も出る。楽しみにしてていいかんな」


「はい、なのです。そろそろタクミくんの格好も、正装にしないといけないので賞金は助かるのです」


 正装は勘弁だし、服装はこのままでもいいんだけどな……こっちで初めて買ってもらったお気に入りのツナギだし。

 ま、ともあれ。


「俺は勝つぞ!」


「「ゆびきった」」




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