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『新天地ケイロンを目指して』  作者: 牧主計
*第一章*人格なき学識(KwC)人間性なき科学(SwH)
4/17

 1-3(4)   亜十夢 卒業

 ハオラン工程管理官と今後の工程について短時間ではあったが再確認した亜土夢。

 

 打ち合わせが終わったところで、ローガン統合司令官が口を開いた。

 

 「健闘を祈ります」

 

 司令官の一言が、このロボット管理船の本来任務と帰還任務の難しさを物語っていた。

 

 ロボット管理船の90%はLSSロボで構成され、推進システムもLSSロボの一部になり月面まで進むため、亜土夢のいる管制室は自力推進力がなくなる。

 

 そのため、必ず、居住ブロックを切り離した工作船とドッキングしなければならなかった。工作船にとっても、推進力はあるのだが制御システムでもあった居住ブロックを切り離すためドッキングは帰還任務の必須条件。


 一見、危険に見えるような前線部隊の作業宇宙船なのだが、ディアーナ・ノイマンという天才科学者を筆頭にした科学者たちと人口知能によるシュミレーションにより導き出された結果なのだ。

 

 ローガン統合司令官がモニターから消えた画面を見つめて、亜土夢はこれから始まる任務について思いを巡らせていた。静かなハミングのBGMを聴きながら。

 

 「ん~♪ん~♪。。。。。。ルゥ~♬ルゥ~♬。。。。。。トゥルゥ~♪トゥルゥ~♪。。。。。。」

 

 聞こえるか聞こえないかのハミングの音色が、徐々に大きくなっていった。 そのハミングは卒業式によく歌われている定番曲。

 

 人口知能LSS、いや、アイドルグループLSS47のハミングが響く中、グループナンバー1番のセンター格が話し始める。

 

 「私たちのラストライブも、最後のパフォーマンスを残すのみとなりました。 私達は、精一杯。。。」

 

 少し、口調が詰まったところで、他のメンバーからすかさず頑張れコールが起こった。

 

 「大丈夫。 わ。。。私達は、精一杯うでを広げて未来を支え、地に足をしっかり根付かせて今を生きていきます。 ただ今を持ちまして、私達はアイドルを卒業します」

 

 「よく、ラストライブ頑張ったね。 終わりの始まりのラストダンスも気合入れてファイッ!」

 

 アイドルプロデューサーの応援演出として、ディアーナ教授の高めの声が管理船の管制室に響きわたる。

 

 録音された声とわかっていても、反射神経になってしまっているのか、亜土夢は思わず拍手をしてしまった。

 

 「今まで、優しく体調管理をしてくれてありがとー! みなさんに見守られて最後の任務を実行できます。メンバー最高~! ファン最高~!!」

 

 「メンバー47人から、一人ずつ挨拶していきます」

 

 その声を聞いて、亜土夢は、思わず座席からずっこけて呻くように言葉を発した。

 

 「おいおい」

 

 亜土夢のツッコミに反応したのか、もとからの流れなのか、グループナンバー1番が続ける。

 

 「って、言いたいところですが、そろそろ月面に向かうカウントダウンが始まるから全員の挨拶は止めておきます。」

 

 「それでは、みんなで掛け声かけていっくよ~。 せーの!」

 

 「アイドルそつぎょお~、アダルトにおっ着替え~」

 

 最後は、47人分の声で絶叫した雰囲気が亜土夢にも伝わった。

 

 と同時に、ロボ管理船のメインモニターに47体分の円柱画像が映し出される。

 

 そして、船内後方から大きい揺れが伝わってきた。 ロボ管理船が、管制室と人口知能支柱ロボに分離した瞬間である。

 

 ロボ管理船管制室はアイドルのライブ部屋から一転して静寂に包まれ、モニターと月面レーダーと各人口知能ロボの微調整に電力を集中させているため、船内は非常灯のみの薄暗さになっていた。

 

 ロボ管理船のメインモニターでは、それぞれの円柱画像の左右から腕アームが広がり、下部は両足のごとく展開され、サブモニターでは、ロボ47体の一群が月の引力に引っ張られながら月面の予定ポイントに近づくイメージが映し出されている。。

 

 ロボ管理船管制室は見守り位置に留まり、亜土夢はモニターと手元の電子計器に視線を集中させていた。

 

 サブモニターが、月面と人口知能支柱ロボの距離がゼロになったことを伝える。

 

 亜土夢はメインモニターと電子計器にレッドシグナルがないことを確認すると、小さくガッツポーズを作り、呻いた。

 

 「よし!!」

 

 メインモニターではLSSロボ全体の各部所に着面による異状がないオールグリーンを示し続け、サブモニターはロボ47体の月面における位置を示す平面図に替わった。

 

 そして、サブモニターが予定の配置ポイントにLSSロボすべてが配置完了となったことを知らせる。

 

 シュミレーションではないかと疑うくらい万事順調に進んでいることを亜土夢は確信していた。

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