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『新天地ケイロンを目指して』  作者: 牧主計
*第一章*人格なき学識(KwC)人間性なき科学(SwH)
2/17

 1-1(2)   亜十夢 月への道

 2057年 

 

 月面での資源発掘を行う月面基地の建設のため、7z連邦国家は宇宙船を七隻構成した。

 

 地球の周回ステーションで建設されたブロックを月まで牽引するためである。

 

 月の引力付近まで牽引した後は、人工知能と建設ロボットにより基地となる建造ブロックを月面に固定させる。

 

 建造ブロックをすべて月面に固定させた後は、人類はじめての補給を受けない地球外居住区となる。

 

 その後も地球から建設ブロックを運び、月面居住区と月面資源採掘工場として運用予定であった。

 

 地球の周回ステーションから月までにかかる時間は、電磁駆動推進システムEM Drive(electromagnetic drive)により4時間ほどであった。


 これら一連の任務名は、月面基地計画7zと名付けられていた。7z発足から7年、宇宙船を7隻、月面作業宇宙飛行士を7名にするなど、とにかく『7』にこだわった計画になっていた。

  

 計画では宇宙船7隻のうち地球軌道上の周回ステーションに大型の火星航行目的でもある星間往復船1隻を配備し、地球と月との間に緊急救助船2隻をバックアップ体制として配置していた。

 

 残りの宇宙船は、月面居住区用ブロックを月に運ぶ。

 

 運搬には工作船2隻、ロボット管理船1隻、集中管制船1隻という前線配置である。

 

 工作船が鉄道車両のごとくステーションブロックを牽引していた。

 

 作業全体の指揮をとる集中管制船が工作船の後方から進んでいた。

 

 工作船2隻に挟まれる形でロボット管理船が漆黒の宇宙を滑るように進んでいる。

 

 ロボット管理船は、管理室以外は居住用ブロックと月面とを接合させる人口知能ロボット達が身を寄せるように並んでいた。

 

 そのロボットたちを月面に解き放ったあとは、同様に居住用ブロックを外した工作船2隻と結合して一隻の宇宙船になる予定であった。

 

 月面基地計画宇宙船団が、月の引力圏内まであと少しと迫り、ロボット管理船のなかでは計器類に集中した視線を落とす亜土夢が一人いた。

 

 亜土夢は、7zという宇宙国家が樹立されたとき宇宙開発50年計画の発信に伴い設立された宇宙飛行士養成スクールの出身である。

  

 今回の任務において、宇宙飛行士は養成スクール出身者ですべて構成されていた。


 7ヶ国から一人づつ選抜された7名だ。国籍は違うが、同じスクール出身で気心は知れていた。

 

 工作船2隻にはそれぞれカナダのジャクソンとインドのシングが乗り込み、集中管制船にはアメリカのローガン統合司令官を筆頭に、ロシアのミハイル副官、中国のハオラン工程管理官、EUのガブリエル情報官の4人が従事していた。

 

 ロボット管理船に搭乗する亜土夢の役割は、月面での人工知能搭載ロボ達の動きの統率管理が主な任務で、人口知能たちを月の引力圏まで静かに運び、月面の居住区予定地域に静かに降ろしてポイントの微調整だ。

 

 人口知能支柱ロボ(Lunar Surface Strut)、通称LSS47体は、人間と普通に雑談が出来るぐらいの知能エンジンが組み込まれていた。


 亜土夢は、今日を迎えるまでLSSシステムと言語により月面接合シュミレーションを繰り返ししている。

 

 このLSSシステムは、個別の分析判断能力を有しているため居住ブロックを凹凸の月面に据え付けるには、臨機応変な対応を言葉のキャッチボールで成り立たせてしまう素晴らしいシステムであった。

 

 LSSシステムの人口知能を開発したのは、ディアーナ・ノイマンというドイツ国籍で大の親日家である女性科学者であった。

 

 ディアーナは亜土夢より2才年上の29才であり、大学在学中において今世紀最高の頭脳をもつのではないかと噂されるほどの天才で、数学・物理学・工学・経済学・気象学・心理学などあらゆる分野で才能を発揮。

 

 金星人の異名をもつ彼女は、やはり天才たちに共通した悪癖を持ち合わせていた。

 

 その悪癖とは、ディアーナがセットアップする人口知能のユーザーインターフェイスは日本語なのである。

 

 ロボット管理船とLSSシステムの設計は彼女が担当し、他の宇宙船とは一線を画した純和風になっていた。

 

 管理船の造形モチーフは、かぐや姫が月に帰る際に使った”牛車”

 

 管理船のパイロットは日本人で、人口知能の言語も日本語

 

 ディアーナの満足度を満たさなければ開発をストップされる恐れがあったため、スタッフも彼女の和風欲求を受け入れた結果であった。


 地球の周回ステーションを出発した船団は、月までの道程3分の1を過ぎていた。

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