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『新天地ケイロンを目指して』  作者: 牧主計
*第一章*人格なき学識(KwC)人間性なき科学(SwH)
17/17

 1-16(17) 真羽人feat.杏奈   再集結

 学校では、真羽人が廊下で杏奈とすれ違っても、杏奈は目を合わせようとしない日々が続いている。

 

 真羽人は、あのバーチャル世界で無茶苦茶あばれまわった日の放蕩ぶりが親にバレた。 そのため、昔気質の両親により、休日のボランティアを強制的に監視付きでやらされていた。

 

 学校終わりの塾と休みのボランティアにより疲れきって、学校での昼休みは、昼食後、真羽人にとって睡眠タイムであった。 

 

 今日も、眠りに落ちそうになっていたときウェアコン(wearable computer)がメール到着を告げる。

 

 杏奈からの久しぶりのメールだ。

 

 真羽人は、左目の前にモノクル(片眼鏡モニター)をつけ、指にインプットデバイスを装着してバーチャルメールを確認しにいく。

 

 メールを開くと、記録された杏奈が横を向きながら話し出す。

 

 「なにか、私がしたの? 飽きたの? 誰か別に気になる娘ができたの?」

 

 矢継ぎ早にしゃべったあと、正面を向いて話を続けた。

 

 「まあ、それはいい。 よくないけど、今は置いとくことにする。」

 

 「君は、金ぴか装備(金に糸目をつけない最強アイテムに身を包んだ皮肉)で、敵側とはいえレベルとか関係なく街を荒らしまくった非道なことしたみたいだね。」

 

 杏奈は、身振りも大げさになってきて、つかみかかりそうに続ける。

 

 「あの日以降、君は相手側からお尋ねものになったの知ってるよね。 君を売るため、うちのメンバーは味方側からも監視されてたんだよ。」

 

 真羽人は、あの日の朝、ゲーム世界の司令部から懸賞金がかけられたことを知らされていた。 それは、相手側が取り下げない限りは、おたずねものの看板は下りない。

 

 そのため、真羽人はあの日以来ゲーム世界というかバーチャル世界に入っていなかった。

 

 杏奈は、今度は顔を下にむけて話し出す。

 

 「たしかに、うちのチームはリーダーがいなくなったから、他のチームからなめられるようになったし。 みんなのモチベもちょっと上がってないし。 おやっさんが奮闘して他のメンバーもできる限りがんばって、チームのランクを下がらないように頑張ってる」

 

 「たぶんね、チームはメンバーみんなの状況が変わってきて、活動休止というか、そんな感じになってくかもしんない」

 

 「でもね。。。もうすぐ、リーダーのしじゅうくにちなんだよ。 喪があけるまで、まだ、リーダーが作った舞台の幕はおろせないんだよ。 遊びの世界だけど、リーダーにとっては青春を賭けた世界。 だから、喪があけるまでチームの旗をおろせないって、おやっさんが、みんなが頑張ってる」

 

 記録された杏奈が顔を上げる。

 

 「大規模な作戦が本営から発せられたんだけど、特攻隊長がいないから大変なんだ。 とりあえず、来なさいよ」

 

 そこでバーチャルメールは切れた。

 

 ウェアコンのセットを外しながら、真羽人は、クラスメートたちと外でバレーボールをする杏奈の姿を追いかけていた。

 

 それからしばらくして、リーダーの49日をむかえた

 

 真羽人は、放課後急いで帰宅し、バーチャル世界に意を決して飛び込んだ。

 

 いくら大規模作戦が始まってるとしても、懸賞金目当てのハイエナはいくらでもいる。 敵味方関係なくボコボコにされるおそれもあった。

 

 それでもこの日だけはと、真羽人は勇気を出した。

 

 いつもどおりに、部屋の椅子に座りシートベルトを締め、ヘルメットタイプのウェアコンを頭にセットし、ゴーグルタイプのモニターをウエアコンに接続し、口の前にはマスクタイプ、両手両足の指にはサックタイプのインプットデバイスを装着する。

 

 真羽人はウェアコンでバーチャル接続を始めるため、呪文をつぶやく。

 

 「OK! セッション、マッハ!」

 

 いつもどおりのログイン画面が目の前に現れ、視界と聴覚が無くなっていく。 そして、目の前に何もない部屋が現れる。マイプロフィールとしてスキル、アイテム、ステータスが目の前の壁に浮かび上がる。

 

 真羽人は、あることに気づく。 チームで積み上げた報酬もアイテムも何も表示されない。 そして、自分の色がレッドになっていなかった、つまり、懸賞金をかけられていないことを示していた。

 

 マイプロフィールが目の前から消えると、バーチャル世界が目の前に広がっていく。 

 

 急いで、自分たちのチームが借りてる部屋に向かう。

 

 ドアを開けると、白板を前にミーティングしているメンバー5人の姿。

 

 「おそーい。 特攻隊長は速さだけが売りのくせにさ」

 

 杏奈の女子らしい声が部屋に響きわたる。 

 

 「これは。。。」

 

 真羽人は、声にならない声を絞り出す。

 

 メンバー全員がニヤニヤしながら、入口に立ちすくんでいる真羽人を見る。

 

 「プロフィール見たでしょ、元指名手配君。 君の罪は、あの相手チームたちに、メンバー全員でイベント前にアイテムやら通貨やらばらまいて、いえ、お贈り差し上げて許してもらったの」

 

 杏奈が怒り気味に口を開く。

 

 そして、参謀の”孔明”が続けて話す。

 

 「まあ、全部配ったので、チームの宝物は何もなくなりましたけどね。 君のおかげで」

 

 紅一点のネカマこと”あげは蝶”と”8:30の男”が強く頷いてる。

 

 真羽人は、下を向く。

 

 「すみません。。。」

 

 その声を聞くや、部屋に笑い声が響きわたる。 そして、”おやっさん”が話し出す。

 

 「もう、いいね。 みんな。」

 

 「マッハ! このチームの宝物はリーダーのおかげ。 そのリーダーの装備をまとってあばれまわった、あのときの君はリーダーの代弁者。 メンバーの誰が、君を非難できようか」

 

 「さあ、リーダーが愛した世界とチームの最高の舞台が幕がひらく。 ド派手にいこう! われらなりのしじゅうくにちだ」

 

 その日、チームのメンバーは極レア装備が壊れるのもいとわないバーサーカーと恐れられた。

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