表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生誕祭  作者: 月本星夢
6/25

精霊騎士達との出会い

 訓練場に着いた騎士達は、その広さに驚いた。やや黄色を帯びた白い壁で囲まれたそこは、小国にあるとは思えない程であった。

建物の他の場所の様に装飾は無く、只、白いだけの壁は普通の岩でない事を示している。聖なる気を放つ壁と床…その白っぽい部屋の中に、紅い色彩が映える。

炎を纏う色彩に彼等は驚く。

他を呼びに行った騎士が戻って来たのかと思ったのだ。それにしては早過ぎるとは思ったが、一人だけ違和感を感じたアルフェルトが声を掛ける。

「…精霊騎士のお一人と、お見受けします。

初めまして、私は向こうの世界の聖騎士のアルフェルトと申します。」

彼の声が聞こえた紅の色彩の人物は振り返り、微笑を向ける。

「知っているよ。私達精霊騎士は、リシェア様の身に起こった事を全て、リーナ様を通じて伝えられているからね。」

優しい微笑みを湛えた紅い髪の騎士は、そのまま続いて挨拶を口にする。

「でも、まあ、一応初めましてかな?ようこそ、我等が世界へ、我が神に祝福されし騎士殿と向こうの世界の神々の騎士殿。私の名は、アーネベルア。

君達には、フェリス殿とリシェア様…ティルザがお世話になったね。と、月神と水神の聖騎士殿は、初めてましてかな?」

紅の騎士服に光龍の装飾、左腰にはランナ達と同じ形の色違いの剣、それが何を示すのか神官から説明されている彼等は、挨拶を返した後に目の前の騎士を見ていた。

その為、ティルザの名前も挙げられていた事に疑問を持たなかった。同じ主に仕える者として言われたのだと思った彼等だったが、ある事に気が付く。

目の前の精霊の姿──紅の髪に金色がかった紅の瞳──瞳の色こそ違うがその顔立ちは、炎の剣の担い手の騎士に似ていたのだ。

「アーネベルア殿でしたね。貴方から私と同じ強い炎の気配がしますが、何故、ティルザ殿と似ていらっしゃるのですか?

精霊剣をお持ちなので精霊だとは思うのですが…。」

向こうの炎神に仕える騎士・クレオが尋ねると、目の前にいる本人では無く後ろから声が聞こえる。

「クレオの察する通り、べルアは炎の精霊騎士…焔の騎士だ。

だが、その前は人間で。ティルザの先祖に当る。」

後ろから返答を返された彼等は、そちらの方へと振り返る。そこには白い騎士服を身に纏った、先程の少年王がいた。

服の装飾は先程と違い、目の前の騎士と同じ長龍。

盾の紋章も無く、金糸と紫の点があるのみ。口調も彼等に取って聞き覚えのある物で、その態度も見覚えのある物だった。

「…リシェア様、ルシフの王のお仕事は、如何されましたか?」

少し怒ったような焔の騎士の指摘に、溜息交じりの答えがなされる。

「リュート達に息抜きしろと、部屋から追い出された。

少し体を伸ばしてから再開する。」

ルシフ王の仕事から、追出された事を強調して告げると納得した声が返ってくる。

「ああ、そういう訳ですか。

そう言えばこのところリシェア様はオルガ殿で、机に噛り付いてましたからね。神官の方々も、さぞかし心配なされたのでしょう。」

声の主である大地の騎士の頷きに少年王…いや少年神も、ここ一か月間の自分を振り返ったらしく、神官達の心配も仕方無いとばかりに納得の頷きをする。

彼等の様子を見て、ついアルフェルトが口を挟む。

「それじゃあ、オーガ様の鬱憤が溜まっていますよね。

…誰が相手をするのですか?」

「自分、相手、する。」

アルフェルトの言葉に再び、オーガの後ろから声が掛る。そこには、真っ黒な騎士服の黒髪と真逆な銀色の瞳で短絡的な言い方をする、無表情な青年の姿の精霊。

他にも精霊が集まったらしく、色々な色の髪と、気配が集まっていた。

黒髪の騎士から受けるのは、闇。

先程の黒髪の少年と同じ物。

だが少年と違い、青年の瞳は、月の光を映した様な青銀色だった。彼を見つめていると他の精霊の声もする。

「…アレィ、ずるいな~。私もリシェア様の相手をしたいのに…。

あっと、君強そうだね。相手を頼めるかな?」

こちらは真っ白な髪で虹色の瞳…以前会った風の神・エアファンと風の神龍のエルア、風の騎士のエアリムと同じ色合いであった。

こちらの風の精霊らしい騎士に声を掛けられたのは、レイナルだった。

彼の申し入れに頷き、挨拶を交わす騎士達。

黒髪の騎士はアレスト、白い髪の騎士はエアレア、そして、リシェアオーガと同じ髪の色の騎士は、ルシナリスと名乗った。他にも大地の精霊、炎の精霊、水の精霊が其々名乗りを上げ、訓練場は一層賑やかになった。

そして、一番最後に来たのが木々の精霊…緑の髪と瞳の、ランナに似た精霊だった。

「やっぱり、兄者も来たのか!」

楽しそうに声を掛ける大地の精霊の言葉に、先程到着した木々の精霊が、少し不機嫌な表情をして答えた。

「当たり前です、レス。まあ、ランナとコウ殿の件は、リシェア様からお叱り無しと伺いましたので、何も言いませんけど。」

仕方無いとばかりに口を尖らす彼へ、軽く肩を叩きながら炎の精霊が声を掛ける。

「ラン殿がいないと、ルシェ殿とアレィ殿以外が暴走するからね。

アリトア君だったね…君はどの位、剣を使えるようになったのかな?」

緑の騎士と大地の騎士の会話に理由を付け足し、目に付いた少年へ声を掛ける焔の騎士。彼の質問に、見習い騎士の少年は答える。

「一応、剣を持って振れるようにはなりました。

…アルフ様やレイナル様、ディエンファム様に相手をしてもらってますけど…まだまだです。」

アルトアの返事を聞いて、紅の騎士と先程の緑の騎士が彼を教える事にしたらしい。

他の騎士、アンタレスは同じ大地の精霊のディエンファムと、コウは月神の騎士・シェンサスと、焔の騎士のフルレは炎神の騎士・クレオと、青の騎士・ウォーレは同じ水神に仕える騎士・ヘルディクと、ランナは風神の騎士・エリアシスと。

そして、光の騎士はアルフェルトと、それぞれが手合わせを始める。

残った騎士達も相手を決めて同じく手合わせを始めるが、アレストとリシェアオーガの打ち合いに手を止め始める。

精霊騎士最強の一人である黒騎士のアレストと戦の神であるリシェアオーガのそれは、滅多に見れる物で無い上に、他人を魅了する程、美しい物であった。まるで舞を見る様な彼等の剣技…光と闇との共演に、見ている者は目を奪われる。

「おや、アルフェルト殿も見入ってしまいましたか。」

相手をしているルシナリスが剣を下げ、アルフェルトを見つめる。アルフェルトの視線は自然とアレストとリシェアオーガの方へ向いてしまい、釘付けとなっていた。

「ルシナリス殿、凄いですね……

我が神が強いのは判っていますが、あの黒騎士殿も凄い…。」

「アレィは、精霊騎士で最強を誇る1人でもありますから、リシェア様の相手が出来るのですよ。」

「精霊騎士最強ですか…。」

復唱された言葉に頷くルシナリスは、敬称無しをアルフェルトに求め、同じ様に彼にも求められた後、先程までの話を続ける。

「そう、精霊騎士最強ですよ。っ…コウ殿、フルレ、貴方達は…。」

コウに飛びつかれた上にフルレにアルフェルトを捕獲されたルシナリスは、抗議の声を上げようとしたが、会話に参加した彼等に阻まれた。

「そうそう、アレィとルシェ、レアとべルア、ランとウォーレ、カナンが精霊騎士最強を誇るんだよ。後は、リュナンとかフルレ、ダーレア、フレアムも強いよ。」

「あたしの場合、べルアが精霊として生まれ変るまでは焔の精霊の中で最強だったんだけどね。べルアが再び剣を持って腕試しをしたら、あたしより強かったんだ~♪

んで、レアやウォーレ、カナンとやりあった結果、五分五分だったんで、アレィとルシェと同じ位って判断されたんだよ~。」

焔の女性騎士の言葉に当の本人が反応する。

「その後、アレィ殿とルシェ殿と打ち合ってみたけど、結果は、レア殿とウォーレ殿、ラン殿やカナン殿と同じでしたよ。」

さり気無く会話に参加するアーネベルアに気が付き、アルフェルトが周りを見渡すと、全ての騎士が手合わせを止めて光と闇の共演を見ていた。

紅の騎士と緑の騎士は、見習いの騎士へ観戦するのも勉強になると教え、共に見ている。もう一人の紅の騎士…炎の騎士は、アルフェルトの横に来て彼の肩を叩いた。

「アル、我等の神は、凄い剣豪だろう?

あれでも、父親君と伯父君には敵わないんだ。」

放浪自体の口調とは違う、騎士の頃の口調になっている炎の騎士へ振り向き、頷く。

「ティルザ、オーガ様の御父君と伯父君は、その上を行く剣豪なんだね。

…あの時いた、オーガ様そっくりの金髪の神が御父君だよね。」

「そう、もう一人、一緒にいたのが伯父君だ。

あの方々はリシェア様と同じく、守護神の別名を持つ方々だ。」

「アルフェルト、ジェスク様とクリフラール様は、剣技の高みにおられるお方達なのですよ。勿論、リシェア様も同じです。

あのお方々から三本勝負で必ず一本、お取りになれるお方ですので…ね。」

緑の騎士から光の神と空の神の名を聞いて納得するアルフェルトだったが、序でとばかりに他の情報を齎す者がいた。

「そっ、あたし達や神龍達は、一~っ本も取れないのよね~。

あ…ネリアだけは一本取った事、あったけ?」

「そう言えばコウも、一本取れてましたね。」

焔の女性騎士と水の男性騎士が仲良さ気に告げると、話題に上げられた闇の龍が残念そうにぼそりと呟く。

「ネリアは二回ほど、僕は…一回だけだけどね。

…でも、僕達より、我が王の方が強いんだ♪我が王は全て、一本取ってるし…」

「はいはい、そこまで。コウ、これ以上は、我等が神が駄目出しするよ。

それより後であれ、確認するね。」

自慢らしき物が始まる前にランナが止め、何かの確認の為の同行を彼に頼んでいた。興味がそちらへ向いたコウは、王自慢を止め、目を輝かせて頷いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ