表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生誕祭  作者: 月本星夢
4/25

馴染みの神官との再会

 向こうの世界の騎士達が招き入れられた建物の内装は、華美過ぎず地味過ぎない上品な物で、外装と同じ白地に小さな金の月と銀の月、縁取りの緑の蔦の模様が加えられていた。

この装飾に意味がある気がしたディエンファムは、少年に尋ねる。

「オルガ殿、こちらの建物の装飾には、どの様な意味があるのでしょうか?」

問われた少年王は、入り口正面にある紋章を見上げ、微笑を浮かべながら、紋章が掲げてある壁の装飾の意味を説明をする。

「白地に月と太陽は光の神・ジェスク様を、緑の蔦はその奥方である大地の神・リュース様を表しています。」

「白が光を表すのですか?」

再びディエンファムに質問され、紋章から彼へと視線を移して頷く少年王は、更に驚くべき真実を口にする。

「この建物は全て、光の神が無から創る輝石であるルシム・ガラムアで出来ています。かの神が創る白き輝石・ジェスリム・ラザレアで、この建物を形作っているのですよ。」

暗に光の神が創った建物だと告げられて、彼等は唖然とするが、周りの様子を気もせずに少年は淡々と説明を続ける。

この国はその名の通り神々が護る国であり、その紋章にも神々…初めの七神の剣が表現されている事。

盾は護りの結界であり、その内側の縁を飾るのが七神の剣、真中に配置されている龍は光龍…守護神たる戦の神の化身である事。

そして、これらが護るのは龍に抱かれている神の華…つまり光の聖地であり、この国でもある事を教えられる。

玄関の真正面にある盾の紋章を説明が終わると、この国が何故そんなに待遇が良いのか納得が行かない騎士もいた。しかし、次の言葉で納得出来た。

「この国は、終えた一生を神々から良き物として認められた者が、生まれ変われる国…そして、それ故に神々が彼等を護るのです。

争いの無い、平穏な国。

それがルシム・シーラ・ファームリア、略してルシフの国なのですよ。」

この国の成り立を告げ、続けて仕組みを説明するルシフ王。

先程説明した理由でルシフの国を治める者は、前王と神々によって選出される事。これ故に現王は、初めの七神の神官の役目も担い、大神官より上の地位を示す事。

そして、己の説明を終えるべく言葉を綴る。

「詳しくは、神官達に説明を受けて下さい。

彼等の方がより一層、判り易く説明出来ますから。」

そう言って説明を打ち切る王へ、神官達が寄って来た。

一同に彼等へ挨拶する神官の中に、見知った髪の色の神官がいる。かの神官は他の神官達を伴い、ゆっくりと彼等へ近付いてきた。

「御久し振りですね、アルフェ様、レイン殿、ディエン殿、クレオ殿。

そして、他の方々は初めまして。私は、この国の大神官補佐を務める一人で、ルシフ・ラルファ・ファムエリシル・ルシアラム・フェリスと申します。

私共が、御部屋への御案内をさせて頂きます。」

神官達の代表として彼が挨拶を終えると、以前と違う装飾が彼等の目に止まる。両肩にあるのは盾の紋章、額には小さな龍と共に盾が加わっている。

名乗った名前にも変化があり、ルシフの神官の装いと名だと理解出来た。彼の言葉を皮切りに神官達は其々の騎士に付き添い、彼等を案内し始める。

フェリスはというとアルフェルトを案内すべく、その場に残っていた。久し振りに会うフェリスに、アルフェルトは立ち竦んでいた。

まさか、来た早々会えるとは思わなかった師匠を、只、見つめる事しか出来無かったのだ。その様子に、フェリスは微笑み掛ける。

「相変わらずですね、アルフェ様。

我が神の祝福を受けている貴方様は、私が御案内させて頂きます。そうでないと他の者に示しが付きませんし、久し振りに御話もしたいので…

宜しいですか?」

訊かれて我に返ったアルフェルトは、大きく頷き、久し振りに会うフェリスと共に宛がわれる部屋へと向かった。


 後の残った五人の内、二人…ルシフの少年王と紅の騎士は、笑いながら彼等を見送っていた。

「アルの奴、驚き過ぎて立ち竦んでいましたね。」

「そうだな、私の態度にも驚いていたし、フェリに会っても驚いていた。

…これから先、どれ程驚くのか、楽しみだ。」

悪戯好きの笑顔を浮かべ、愉快そうに笑う己の主に紅の騎士は、溜息を一つ吐いて進言をする。

「あまり苛め過ぎない様にして下さいね、我が王。…あっと、苛める相手は違いましたね。アルの場合は、彼が色々な事を知って反応を楽しむ…いえ、見るだけでした。

本当の獲物は、これから来られる方でしたね。」

思い出した面々の事を告げる彼に、木々の精霊が反応する。

「そうだよね、ティル。

あの子は俺達と同等の子だし、苛めちゃあ可哀そうだよ。」

二人も言い草に主が呆れ返って、己の口を開く。

「…ティル、ランナ、本当の獲物って…ああそうか、太陽神と風神の事か?

後、ルドも含んでいるのか?」

何かを悟った主の返答に、勿論と二人分の良い返事が返って来た。

それを聞き、更に微笑む少年。

驚かす手筈は整っているらしく、祭りの準備とその他に色々と付足しを行う為に、彼等も執務室へと帰って行った。

取り敢えず、ランナの説教は後回しにされ、この世界の騎士達とルシフ王は、前以て考えていた計画の準備を再開した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ