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生誕祭  作者: 月本星夢
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ルシフでの神話


 鳴り響いた音でリシェアオーガは、腰にあった精霊剣を抜き、舞台へと赴く。

音楽と共に詠われるのは想像通り、戦の神の神話であり、このルシフで起こった出来事であった。詩が始まると同時に、舞台上では二人の少年の剣舞も始まる。

互角に戦っている様な剣舞に観客が魅せられ、目が離せなくなる頃に詩が終わり、暫くの間、剣舞と音楽のみが演奏される。だが、次第に緑の少年の剣の動きが鈍くなり始めると、一時中断していた詩が再び流れ出す。

詩が語る通り、黒き王と神子の戦いは黒き王の勝利で終わり、舞台上では木々の少年が倒れ、黒き髪の少年がその姿を消す。

するとその場に光の騎士が登場する。かの騎士の腕に少年が抱かれ、舞台からゆっくりと去って行く。

詩はその間も流れ、怪我を負い眠る神子の様子を詠う詩となる。が、舞台には誰もいない状態であった為、向こうの神々は息を飲んだ。

今、繰り広げられる物語は、あのルシェルドの巫女であったリシェアオーガの物だと判り、未だこの話を知らない者は唖然とし、本人から聞き及んでいた者は、これから何が起こるか察する事が出来た。

そして…再び舞台に光の騎士が少年を抱いたまま上がり、その傍には龍馬と呼ばれる聖獣が付き添っている。詩も神子が目覚めた事を伝え、その神子がこの国の神殿である神華の塔へと向かう場面を語り始める。

この場面で、何時の間にか舞台の上に小さな子供が佇んでいた。その子は、ぼろぼろの衣服を纏い、大きな包みも持って怯えている。

その子供へ、光の騎士から降ろされた少年が近付くと…先程いた銀色の双子が姿を現す。そして、子供から包みを奪おうとするが…失敗した。

舞台の床に落ちた包みは、リシェアオーガが持っている剣…。

それを彼は…手に取ろうと近付いて…双子に阻まれる。光の騎士が彼を受け止め…聖獣が隙を見て剣を拾い、彼の許へ駆け寄る。

剣を受け取った、木々の精霊の姿の少年が剣を抜くと…眩い光が辺りに満ち溢れ、それが収まると少年が舞台に倒れていた。

この事で呆気に取られた向こうの神々は、只、行末を見つめるしか出来無かった。唯一動けたのはルシェルドだったが、舞台に近付こうとして…カーシェイクに止められる。

「ルド、大丈夫だよ。これは御芝居、過ぎた事の再現だから、あの子には何の負担も掛かっていないんだよ。」

少し笑いながら告げるカーシェイクに釣られてか、リルナリーナも楽しそうに小さな声を掛ける。

「ルドったら、心配性なのね。オーガなら大丈夫。

あの光は演出用にって、オーガ自身が出した物だし、怪我なんてしていないから、何も心配はいらないわ。」

楽しそうに告げる兄弟の言葉で、我に帰ったルシェルドは、そうだなと呟き、再び舞台に己の視線を戻す。

舞台では、倒れ込んだ木々の精霊の姿が、徐々に変化していた。

舞台に散らばっている髪が、緑色から金色へと毛先から変わって行き、それが全体に広がると、閉じられた神子の両目が開く。

その双眸は、先程の緑色では無く、青色の物。

何時も見ていた神子・リシェアオーガの姿へと、木々の精霊の姿が移り変わったのだ。これを合図に、詩と音楽が終わり、力強く立ち上がった神子が、自らの名乗りを上げる。

「我が名は、ファムエリシル・リュージェ・ルシム・リシェアオーガにして、ルシム・ラムザ・シュアエリエ・リシェアオーガ為り!

これより、我、戦の神の降臨祭を始める!!」

高らかに宣言された言葉に、周りが湧きかえる。先程までの寸劇は、ルシフでの戦の神の目覚め…即ち降臨を示すものだったのだ。


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