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生誕祭  作者: 月本星夢
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共に戦う仲間達

 そんなルシェルドの思考を察したリシェアオーガから声が掛る。

「ルド、そなたももう一人じゃあない。

私達もいるし、カルミラやファレルア、ウォルトアもいる。アルやトアも神殿の騎士達もいる。それに…砦のドル達も、そなたを自分達の神として認めている。」

リシェアオーガの言葉でウォルトアとファレルアが無言で頷き、アルフェルトとアルトアも一礼をする。

只一人カルミラだけは微笑を湛え、諭す様に言葉を綴る。

「リシェア殿のおっしゃる通りですよ。

ルシェルド、貴方はもう一人ではないのですよ。

私やファレルアにウォルトア他の神々もいますし、貴方の騎士達や神殿の騎士達がいます。リシェア殿と同じ様に今、貴方の周りには信頼を寄せている人々が集まっているのですよ。」

優しく響く彼の言葉にルシェルドは納得し、そうだなと呟く。

以前のような自嘲気味の笑顔では無い、真の微笑に周りの者達も微笑む。特にこの世界の精霊達は、彼の微笑に以前のリシェアオーガを思い出していた。

「ルシェルド様…私達から少し…言わせて、頂いても良いですか?」

紅の髪の精霊から尋ねられ、彼は承諾の頷きをする。これを切っ掛けに、リシェアオーガの精霊騎士達が口を開く。

「今の貴方は破壊神ではございません、我が神・リシェア様と同じ守護神であらせられます。

それを自覚して、周りの事を見つめ直した方が宜しいと思います。」

紅の騎士の言葉に大地の騎士の言葉が続く。

「べルアの言う通り、貴方は我が神と同じ世界の守護神となられる御方です。

ですから、我等も助力を惜しみません。何なりと御申し付下さい。」

何なりと言わて困惑するルシェルドだったが、不意に思い付いた事を彼等に告げる。

「…まだ…名前を教えて貰っていないんだが…教えてくれないか?

それとオーガにも習っているのだが、お前達にも剣や戦いの事を習いたい。…駄目か?」

言われた言葉に龍の騎士達は自分達の名を教え、改めて挨拶を交わす。

無論、敬称無しという事を付け加えるのも忘れていなかった。



 その姿に、こちらの神々も向こうの神々も微笑んで見守っていた。それが終ると他の精霊達と神龍達も各々名乗りを上げ、挨拶を告げる。

特に黒き神龍と黒騎士には、向こうの世界の神々は、驚いていた。闇の属性であるのに係わらず清浄な気を持ち、(あまつさ)え闇の神龍の方は明朗活発な様子であったのだ。

不思議そうな顔で彼を見る向こうの神々を見ながら当の本人は、平然と構えている…いや、楽しそうに見ている。彼の様子にルシェルドが声を掛ける。

「コウ…だったな、こちらの闇は本当に聖なる闇なのだな。」

以前、リシェアオーガから聞いた事を実感した彼は、目の前の闇の神龍と精霊を見つめる。二人とも微笑みながら頷き、こちらの闇の性質を教える。

「僕達、闇に属する者は、聖なる物と邪悪なるモノがいるんですど、僕自身は邪気を倒す目的で創られた神龍である為、それに全く染まらないんです。

アレィも、我が神の御蔭で僕と同じなんです。」

始めに闇の神龍が己の事と共に闇の精霊の事を珍しく敬語を使って説明をし、続いて闇の騎士が同じ様な説明をする。

「普通の、闇の、精霊、邪気に、染まり、易い。

ですが、自分、リシェア様から、贈られた物で、邪気に、強く、なりました。」

そう言って、彼は誇らしげに自分の両手にある物へ視線を映す。

右小指に填まる青い石を付けた金龍の指輪と、左腕を護る為らしい形の金色の手甲の様な腕輪。

どちらも光の性質を持つリシェアオーガの輝石製であり、特別な物と判る。

何故、そんなものを闇の神に仕える騎士が就けているのか疑問に思ったりシェルドは、それを口にする。しかし、返って来たのは闇の精霊本人では無く何故か、リシェアオーガからの言葉。

闇の騎士は彼にとって竪琴の師匠の一人であり、旧知の精霊騎士の一人だという事。

彼の言葉に便乗して他の精霊騎士からも説明を受けた。

「アレィ殿は、リシェア様達の保護者の一人でもあるんですよ。まあ、精霊で一・二・三を争う過保護と言っても、良いのですがね。」

ティルザに似た焔の騎士から言われ、ふと、ある事に気が付く。

一二三を争うという事は…他にもいる事。

「アーネべルア、若しかして後の二人は…ルシナリスとバルバトーアなのか?」

先程までの遣り取りでそう感じたルシェルドは、それを口にする。彼の回答に周りの精霊達は大きく頷き、名指しされた者達は自覚があるらしく平然としていた。

バルバトーアは、未だリシェアオーガを後ろから抱き締めたままで溺愛振りをはっきりと示しているし、ルシナリスは、先程の物申すの中にもそれが見え隠れしていたのだ。

判り易い行動と態度にルシェルドは微笑ましさを覚えた。

リシェアオーガの安らぐ場所は、この世界にある。

彼女の護る世界こそが、彼女の居場所だと実感出来たのだ。そして彼は、リシェアオーガの周りにいる精霊達へ、話し掛ける。

「お前達に頼みたい事がある。

これからも…オーガ、いや、リシェアオーガと共にいて欲しい。」

ルシェルドの言葉に彼等は頷き、離れる事は無いと断言する。加えて、リシェアオーガからの返答も返る。

「ルド…それは要らぬ心配だ。レスやバート、べルア達は、私が手放す気が無い。

無論、神龍達も同じだ。

彼等は私にとって大切な友であり、身内でもあり、共に戦う同志たちでもある。それは、他の精霊騎士も同じ。

彼等も私達と共に、この世界を護る為に戦う同志であり、友であるのだ。」

彼の言葉に精霊騎士は勿論、ここにいる神々も頷く。

そして…我が子の言葉を受けて今度は、ジェスクが話し掛ける。

「ルド…そなたにもファレルアやカルミラ、ウォルトア…今は頼りないがエルシアもいる。

無論、そなたの傍にいる騎士達も、ここに居る我等の騎士達と同じだ。」

守護神としての言葉を光の神から掛けられたルシェルドは、それを真剣な眼差しで受け取り、納得の頷きを返した。

自分はまだ守護神として未熟だが、以前と違い周りには共に戦おうとしてくれる仲間がいる。一人で無い事を確信した彼は、自分と同じこちらの世界の神を見つめる。

同じ様に破壊神と呼ばれ、同じ様に孤独に身を任せていた彼女(彼?)。

しかし周りの者達との絆で、今は破壊神では無く戦神…守護神として、その身を成している。

自分もそうなりたい、いや、そうなるのだとルシェルドは改めて決心をした。

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