表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生誕祭  作者: 月本星夢
14/25

太陽神への物言い

今回も言葉の暴力的な物が続きますので、苦手な方は御遠慮下さい。

 ファンレムへの意見が終ったのを見計らって、光の精霊が再び太陽神へ言葉を掛けた。

「思わぬ乱入で、中断させてしまって、申し訳ございません。

で、先程の答えを頂けるのでしょうか?」

表面を繕う微笑にエルシアは溜息を吐き、口を開く。

自分へ向けられた大きな気配は判っても、他へ向けられた気配や微々たる気配を感じれない事を告げ、どうやって感じれるようになるか判らないと正直に話す。

そんな彼へ光の精霊は、ふっと、あざ笑うかのような微笑に変え、判らないのなら何故、カルミラにその方法を訪ねなかったのかと問う。隠れた気配をも感じる事の出来る大地神の事を挙げる光の精霊の言葉に、本人であるカルミラが口を挟む。

「そう言えば、そうですね…。

エルシアから、教えを請われた事はありませんでしたね。」

不意に名を呼ばれた為、思わず答えるカルミラ。暗に尋ねられたら、教えるという意味を含んだ返答で光の精霊は納得した様だった。

カルミラの言葉でエルシアは考え込み、答えを述べる。

「必要ないと思っていた。戦う事などないから、その必要がないと…。」

そう、エルシアの世界では神々が戦う事等無い。

この為、自身にも必要が無いと思っていたのだ。

しかし、今回の事や今後の事を思うとルシェルドが守護神としての役目を担う為、更にその機会が無くなる可能性をも秘めている。

だが、光の騎士は向こうの世界の事を、リシェアオーガの半身であるリルナリーナを通じて知っているらしく、その事を告げる。

「…そうでしたね、向こうの世界の神々は、ルシェルド様以外戦えない御方で、その為の聖騎士の在り方でしたね。

でも、此処では違いますよ。カーシェ様から教えられませんでしたか?

此処の神々は戦う神であり、護る神です。」

こちらの神のあり方をも告げられたエルシアは、彼等との違いをはっきりと示された気がした。

戦える神であり、護る神…この世界の神々と自分達、世界を創り、管理するだけの神々では質が違い過ぎたのだ。無言になる彼を見据えたまま光の精霊が、リシェアオーガの膝にいる子供を示す。

「それ故の…本能でしょうね…まだ役目を御持ちにならない御小さい幼子のアフリス様でさえ、気配に敏感であらせられます。」

幼子でさえ、気配を感じる事を知らされたエルシアは驚く。こちらでは当たり前の事であったが、向こうではそうでない事だと光の騎士にも情報として齎されている様だ。

向こうの太陽神の反応に精霊は溜息を洩らす。

「………本当に、我が神を同じ役目を持つ貴方様が不甲斐無い故に、私達光の精霊は憤りを感じています。

何故、戦える力を御持ちなのに使わないのかと。」

意外な言葉を聞き、エルシアは無意識に復唱した。

「俺が…戦える力を持っていると…?」

驚いた顔をした向こうの太陽神へ光の精霊は、呆れ顔で己の神の事を説明する。

「ええ、我が神と同じ力を御持ちならば、それは戦う為、護る為に使える物です。

現に我が神は、その役目の名と共に守護神の名を御持ちです。」

エルシアは、一応カーシェイクの抗議で知っていた事だったが、本当の事だとは思えなかった。

しかし、目の前の精霊騎士の言葉と、神であるリシェアオーガとカーシェイクが剣を持っていた事を思い出し、あの時いた自分と同じ気配を持つ神の姿を思い浮かべる。あの神は剣を所持していなかったが、一緒にいた神は目の前に精霊と同じ形の服を着ていた。この服を着ているという事は、その神も剣を振るうという事に彼は気が付く。

彼の様子に目の前の光の騎士は、もう一つの真実を伝える。

かの神は剣も使うが、その持てる力で彼等精霊騎士と共に邪悪なモノと戦い、この世界を護って来た事を告げ、序でにその神が持つ力…光の浄化の力をエルシアも持っているのでは無いのかと問われる。

指摘された力はエルシアも持っている…が、それには条件が付く。

「一応、持っているが、それはイリーシア…妹と一緒でないと使えない。」

月神と太陽神が共にいて使える力だと告げる彼へ光の精霊は、更なる驚愕の事実を突き付けた。

それは、エルシア達のの思い込みでは無いのか、光が二人だから、その力も半分だと言う考えに自らが縛られているのではないのかと。

そして…彼等の神がその力を使う時は昼の光…即ち太陽の光を纏う事を告げ、この世界に於ける光の性質を語る。

「この世界の月の光は、時に優しく夜を照らして生きとし生ける者達へ安息を齎し、時に冷たく夜空を彩る光です。

そして、この世界の太陽の光は、時に明るく暖かく辺りを照らし、時に全てを焼き尽くす炎の如き激しい光なのですよ。」

月光と太陽光の話をする光の精霊に些か陶酔めいた表情が見えるが、こちらの住人にしか気が付かなかった。

この説明を黙って受け取る向こうの太陽神へ、光の騎士は最も重要な事を提示する。

「その激しい光でもある太陽の御方が、我が神と同じ力を使えない事はありませんよ。

一度、御試しになられたら、宜しいのではありませんか?」

真剣で厳しい表情に戻った光の騎士の提案を受け、エルシアは重い口を開く。

「炎の如き…激しい光…か。

…………試してみるのも、良いかもしれない。護りたい者を護れるのなら。」

光の精霊に諭され、己の力の使い方を再確認する気になったエルシア。

彼の考えを察し、こちらからも言質を取った精霊は、厳しかった視線を何時もの微笑に戻す。それが合図になったのか、後ろから声が掛る。



「終わった様だな、ルシェ。皆の者も気が済んだか?」

聞き覚えのある威厳に満ちた低い声…怒りを含んでいないが、喜んでもいないそれにエルシアとファンレムは驚きを隠せない。

集まっている者の中には神の気がしなかった…精霊の気配しかしなかったのに、先程の風の神と同様、騎士服姿の光の神がそこに居たのだ。

ファレルアの事で大体の想像が付いていたのは、傍らで観戦(?)している地神と炎神。だが、彼等にも神の気は感じれなかった。

光の神が纏うのは精霊の気、ルシェと呼ばれた者と同じ気配に尚更驚いたようだ。その一人である太陽神へ、光の神は話し掛ける。

「如何やら、そなたにも色々と教えなければいけないようだな。

何、案ずるな、我とルシェ達、光の精霊達が指導する。」

「勿論、手加減等期待しないで下さいね。私は、リシェア様の命を危険に晒した貴方々を許す気は全くありません。

…私達…いえ、私の言いたい事はそれだけです。」

光の精霊の本音を含んだ辛辣な最後の一言に他の精霊も賛同して頷き、その中の数名が大きな声を上げる。

「ルシェ殿、私も同じですよ。

向こうの世界の神々を許す気にはなれません。それは、此処にいる精霊騎士全員と、私達を送り出した精霊達の意見です。

我等が神々を悲しませ、我等が世界を、危険に晒した者達を許す事等、到底出来ません。例え、我が神であるリシェアオーガ様が許したとしても…。」

紅の精霊の声が最初に響き、後を追うように大地の騎士の声も上がる。

「べルアの言う通り、俺達に許す気はない。

リシェア様…いや、オーガを危険に晒した輩など、この手で切り刻んでやりたい位だ。」

精霊騎士の声と共に他の、変った姿の者達も続いて声を荒げる。

「僕も、レスの意見に賛成!

我等が神であり、永年望んだ我等が王を無断で攫った奴など、存在すら許したくない!」

「あたしも~。あっと、勿論、ここにいないノユも、ユコもそうだよ。

エルアも、ネリアもそうでしょ!!」

リシェアオーガの騎士と思われる精霊達の言葉の後に、序でとばかりに口を出す黒髪の少年と紅い髪の女性…纏う気配は精霊と似ていてもその姿は異なっていた。

黒い翼と角、炎のような耳と角を持つ、彼等。

精霊とは思われない彼等の一人紅い髪の女性から、聞き覚えのある名が向こうの世界の神々の耳に届く。

彼女に名を呼ばれた者達も頷いている。

彼等は以前と違い、言葉を発した者と同じく枝分かれした角と変った形の耳を持っていた。その彼等の意見を聞いた大地の精霊の一人が、止める為に口を開く。

「…神龍の方々…一応、その位にして置きましょう。

特にレス、私も同意見ですが、それをやると其処に居られる方々とイリーシア様、ウォルトア様が悲しまれます。」

厳しいながらも優しげな大地の精霊の静かに響く声を受け、同じ精霊だと思われる者の低いそれが続く。

「バートの言う通りだ。

俺も文句を言いたかったが、ルシナリスが全部言ってくれたから取り敢えず控えておく。…だが、これだけは言っておきたい。」

己の言った言葉に付け加える様に、後から声を出した精霊が序でとばかりに自分達自身の事をも告げる。

「我等が神・リュース様を悲しませ、その御家族まで悲しませた神々を、我等大地の精霊とランシェやランナ達木々の精霊、リアレイナ達草花の精霊は許さない。

……まあ、あちらにおられる御三方とイリーシア様、ウォルトア様は例外だがな。」

白い肌と黒い肌…二人の対照的な肌色の大地の精霊に言われ、向こうの世界の神々は無言になる。こちらの神々の怒りは最もだが、彼等の仕える精霊達の怒りも頷けたのだ。

無論、向こうの世界の、神々に仕える聖騎士達も始終無言であった。事前に彼等から、この事を教えられ、自分達の神々が受けるべき事と認識していた。

向こうの世界で知らないとは言え、神である御仁を蔑にして、その家族を悲しませた事。己が仕えている相手が悲しむ事は、聖騎士である彼等にとって痛感出来る事だった。

故に彼等は、精霊達の物申すという今の状態に口出しはしなかった。

彼等に出来る事は真実を受け止め、静観する事だけであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ