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一日目
夜明け前 宮に仕えし 女中たち
皆起きたりて おのがじし 仕度済ませり
東雲 明かりたる時 飯を炊き
寝坊助 おどろかしたるは 媛の御付き 美影といひけり
侍女美影 雲居来たるは 三月前
その前 海の宮にて 行ひせり
巫女なるための 行ひなり
行ひも末に 新たなる 境地を求め 門を出る
四人の姉さま 見送られ 山の行ひに 向かいけり
潮風懐かし 海の宮 思い堪えて 幾千里
ついに着いたぞ 山の宮
蝉の鳴きたる 門くぐり 主の元へと 進み行く
宮に入るも ひとけなし
静かな廊に 手まりの音
見るに娘あり 我問いし
「ここの主は 何処かな」
娘笑て
「目の前の 我こそここの 主なり」
と言ひたりて 手まりつく
冗談ならむと 気にもせず
過ぎ去むとしき
「おいまて 信じたらずな」
娘見ると 怒りためりし
いと畏き 雰囲気にて 唱ゆと
石の如くに 我が体 動かずなりき
くすくすと 娘近寄りて 我が顔を いと楽しそうに なむ見やる
此れ始まりの 一日目