完全リサイクル法
完全リサイクル法、正確には「限りある資源に対する再利用等を定めた法律群」が1946番目の法律となったのは、かなり昔の事である。
それまでの人類は、大量生産大量消費大量破棄を美徳しておりその当時から無駄が多いと批判を受けていた。
そんな状況を変えるために立ち上がったリベラル達が提言したのが完全リサイクル法である。
内容はその名前から分かる通り、作られたものを一切の無駄なく再利用を行うことを義務とした法である。
その品目は有る物すべてと揶揄されるほど多く、例えばタバコの吸い殻はすべて集積センターに集められ、フィルターと残った葉の部分、灰と分けられ、フィルターは圧縮棒状にし火力発電の燃料に、葉は集められリサイクル煙草へ、灰は火災発生時の消炎剤と分けられる。
生ごみにしても一家庭当たり小さいビニール一つまでと定められ、主婦はその袋のやりくりで頭を悩ますほどだ。
企業とて例外にならず、旋盤の削りかすを集めて再練成インゴットを作り、メモ用紙は裏まで細かい字を書くことを規定され、履きつぶした革靴は再生バックとして再販される。
法を破った個人法人は破格の罰則があり、最初こそ反対デモや法の撤回を求めた訴訟が山の様に展開された。
しかし、そういった人々にその他大勢からリサイクルもできない人とレッテルを張られることが多くなると、そのうちに姿を消していった。
今ではリサイクルを行わない者はまるでごみの様に扱われる社会と相成った。
それはそれはとても生きやすい世の中で、人々は自らの生活に自信を持ち生きている。
昔と違い、我々はごみを出さないコンパクトでスマートな人類になったのだと。
そして、彼らは毎日決まった朝食をとる。
リサイクル飼料と呼ばれるシリアルのような食べ物だ。
箱にはでかでかと「徹底したリサイクルの頂点」と赤文字ゴシック体で書かれた文字が躍っている。
そして、箱の裏には小さく表記が載っているのだ。
「原材料:死体」と一言だけが。