エクスペリメント・ツー
【第21回フリーワンライ】
お題:ダブルキャスト
フリーワンライ企画概要
http://privatter.net/p/271257
#深夜の真剣文字書き60分一本勝負
「……んん? ここは一体……?」
「おお、やっと起きたか」
「えーと、ここはどこ……?」
「何を寝ぼけているんだ君は。ここは“私”の研究所ではないか」
「言われてみれば確かに」
「まだ意識がはっきりしないようだな。よかろう。こっちへ来たまえ」
「これは?」
「何が見えるね?」
「机の上にリンゴとバナナとオレンジが二つずつ。奥のケージにいるのは二匹のモルモット?」
「その通り。だが、よく観察してみたまえ」
「観察と言われても。ただのフルーツとありふれた実験動物じゃ……おや?」
「気付いたか」
「バナナの表面にある黒い斑点が、二つとも同じ位置にあるような」
「それだけではない。リンゴのへたにある葉っぱの形と、オレンジの熟していない部分」
「全部同じだ……」
「モルモットはどうだ?」
「モルモットなんてどの個体も同じ――」
「果たしてそうかな」
「しかし……こ、これは!」
「そうだ! 鼻の横にある模様が瓜二つだ」
「それだけじゃない。どちらのモルモットも、右耳の一部がまったく同じように欠けている!」
「言うまでもないが、二匹のモルモットは別々のケージに入れているし、一緒の場所に置いたこともない」
「……そして調べるまでもなく、耳の欠けた部分とモルモットの歯形は一致しない」
「そうだ」
「これは一体全体どうなってるんだ」
「全ての答えはこれだ」
「この装置は?」
「まだぼんやりしてるようだから、くどくど説明してもわかるまい。こう言うと多少俗っぽく聞こえてしまうが、これは“クローン生成装置”だ」
「クローン! つまりこれらは」
「そう。似ている、形が近いなどと、そんな話ではない。二本のバナナも、二個のリンゴ、オレンジも、二匹のモルモットも、原子レベルで全てまったく完全に同一の物体だ」
「素晴らしい! 世紀の大発明だ!」
「ノーベル賞ものだよ」
「物流に革命が起きて、世界中の食料危機が一挙に解決する。いや、それだけじゃない、貧富の差が消えてなくなる」
「そう。だが、世の中に発表する前にこの装値の性能を実証する課題が一つだけ残っていた」
「課題? 原子レベルで同じなら、遺伝子組み換えと違って副作用などあるはずがない」
「そうではない」
「食べ物、実験動物……とすると、残るは人体を用いたクローン」
「そうだ」
「興奮してきた。早く実験を!」
「実験ならばもう終わった。成功だ」
『エクスペリメント・ツー(Experiment Two)』・了
最初は台詞だけのやりとりを書いて、最後に一人二役だったと明かす予定だった。が、執筆に取りかかろうとする直前に一応、ダブルキャストの意味を調べてみたら、一人二役じゃなくて二人一役であることが判明!
ワーオ。
おのれ、やるドラシリーズ!
そして急遽設定を変更して本編のようになった。きっと有名作品にネタ被りがあるだろうなぁ。
タイトルは、「エクスペリメント・ワン」だと「実験物」だからちょっと捻った。一つじゃないし。