第6話「動かなかった猫」
根津の畳の家
初冬、最初のこたつ
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十二月になると、街は何かをしろと言わなくなる。
葉は落ち、雁は去り、暖かい季節は夏の扇風機と一緒にしまわれた。残るのは寒さと、その中に人がつくる、小さく灯った部屋だ。日は短く、低くなった。冬の太陽は屋根の上へかろうじて顔を出したと思うと、もう降り始める。あとに残す光は、自分が長居しないと知っている光の、薄い金色だ。
僕は、こんな日々を歩き回ることを一種の仕事にしてきた。初秋の神社。雨の日の本屋。夕暮れの屋根。寒い夜のコンビニ。ほかの猫が縄張りを集めるように、僕は午後を集める。目的があるわけではない。ただ、そこにいたと言えるように。季節が起きているあいだ、その中にいたと言えるように。これが季節を正しく生きる方法なのだと思っていた。
見たところ一度も座布団を離れたことのない猫に、すっかりやられるとは思わなかった。
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根津の古い家は、神社の町の裏手にある細い路地の突き当たりにあった。建てられたというより、そこに生えてきたように見える家だ。小さく、木造で、古い木が年月を木目へ吸い込むときの、わずかな暗さを持っている。庭は狭く、裸だった。霜で白んだ草。高い枝に橙色の実を二つ残した柿の木。ほかのものがすべて色を失ったときにだけ、明るいものが目立つ、その目立ち方で冬の光を受けている。縁側の障子は手のひらほど開き、その隙間から暖かい空気の細い帯と、部屋の低い琥珀色の光が流れてきた。
僕は足を高く上げて庭を渡った。一歩ごとに、霜を通った冷たさが肉球へ入ってくる。これから数か月は冷たいままでいると決めて、譲る気のない土の、独特な冷たさだった。柿の木は何週間も前に葉を落とし、たぶん実のほとんども取られていた。残ったのは、裸の枝と淡い冬空を背に光る、二つの橙色だけ。理由もわからずそれを覚えておいて、僕は戸口へ進んだ。
隙間の向こうには、畳の部屋があった。最初に届いたのは匂いだ。古い藺草と暖かい木。同じ生きものが同じ座布団で長いこと暮らし、その部屋だけの深く具体的な温度を育てた、閉じた暖かさ。次に見えたのは、低く広いこたつ。厚い布団が床近くまで垂れている。その横の座布団には、編み物のマフラーを巻いた茶トラがいた。行くべき場所を何一つ持たず、そのことと考えうるかぎり完全に折り合いをつけた猫の顔をしていた。
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片目が開いた。急がずに。
その目は畳の向こうから僕を見た。警戒も驚きもない。同じ戸の隙間から季節が来ては去るのを長く見てきたので、十二月の午後、庭に見知らぬ三毛猫がいる程度では珍しい出来事にならない生きものの、穏やかな認識だった。
おや、彼は言った。お客さん。もう少し戸を閉めてくれるかい。下から暖かいのが逃げるから。
僕は戸を閉めた。肩を枠へ当て、障子の隙間をもう少し控えめな幅にする。それから畳の上を歩いて入った。庭で冷えた肉球に、畳の編み目を感じる。固く、少しだけ沈み、低い午後の日差しが落ちていたところは暖かい。
ごめん、僕は言った。寒いのを入れるつもりじゃなかった。
端に入るといい、彼は言った。そのためのものだから。
彼は、考えうるかぎり最小限の動きで、こたつ布団の手前を示した。ほんの少し頭を傾け、それももう半分は元の位置へ戻りかけている。僕は布団の端へ体を入れた。
そして、止まった。
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こたつの下の熱は、部屋の暖かさとは違う。囲まれていて、具体的で、すっかり中へ入ることのできる私的な暖かさだ。外の世界は理論上まだ存在するが、もうこちらへ手をかける場所がない。庭からずっと冷たかった前足は、冷たくなくなった。ここまで歩くあいだ十二月の空気に対して持ち上がっていた肩は、頼まれもしないのに、もっと道理のある位置へ下りた。僕はクリを見た。彼は片目を半分閉じ、予想どおりの結果が予定どおり到着するのを観察する猫の顔で、僕を見ていた。
あ、僕は言った。ああ。これは……
うん、彼は言った。入るまでは、みんな信じない。小さな暖かい四角。これで冬は解決。
彼は、意見ではなくなり、ただ真実になったことを述べる調子で言った。部屋の温度。布団の重さ。この家が建った年。興奮ではない。長いあいだそうだったので、もう弁護する必要のない事実だ。
僕は部屋を見回した。障子の隙間から見える裸の庭。平らな冬空に浮かぶ、二つの橙色の柿。畳、低い天井、床の間の小さな掛け軸、すべてに染みた暖かい木の匂い。ラジオは消えていた。家には家自身の音があった。古い木のかすかな軋み。中へ入れず、外を動く冷たい風。部屋が暖かく保たれ続けている、小さく途切れない音。
外へ出ることはある? と僕は聞いた。柿はまだ残ってる。今週の神社はきれいだよ――
クリは、ゆっくり心地よく首を振った。拒否ではない。天気についての事実だった。
いや、いや、彼は言った。一度は出たよ。春だったかな。……外は、とても遠かった。だから戻ってきた。
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こたつに数分入る前の僕には、クリの話し方について理解できなかったことがある。文がきちんと終わらないように聞こえるのに、それが迷いからではないということだ。言葉が途切れるのは、考えのほうがもう到着しているからだ。最後の一語より先に、思いは完成する。末尾の間は、考えが落ち着く時間にすぎない。布団の下で動くのをやめると、布団がゆっくり落ち着くように。
でも、狭くならない? と僕は聞いた。いつも同じ部屋。同じ座布団。
彼はそれを考えた。正確には、完全に注意を向けながら、少しも急がず、考えているように見えた。
狭い、彼は言った。ふむ。みんな、そう言うね。
彼は障子の隙間を見た。その向こうの庭を。低い冬の光の中の、裸の柿の木を。小さな鳥が、高いほうの実の上にある枝へ降り、実を見て、それから別のほうを見た。
木は緑だった、彼は言った。それから火になった。今は裸で、実が二つ残っている。そろそろ、知っている鳥が食べに来る。
空っぽではない間。
僕は動いていない。でも一年のほうが、戸口の前を歩いていった。……見えるところに座っていれば、それでよかった。
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僕はまだ布団の下にいた。暖かさが、反論する能力に何かをしていた。戸の向こうの細い庭を見て、足りないところを探そうとした。裸の木。冷たく淡い草。木守り柿の二つの橙色。まだ選択肢を考えている鳥。手のひらほどの障子の隙間にある、一年全部。
遠くまで行かなくても、どこかにはいられる。
彼は、小さな計算違いを直すように言った。やさしく、意地悪ではなく。間違いが小さく、簡単に直せるから。教訓ではない。誰かへ知恵として差し出したわけでもない。ただ本当であることが、たまたま口から出た。あまりに長く知っているため、気づきではなく、天気のようになったことを話す、あの調子で。
鳥は下の枝へ降り、考えてから、高いほうの柿を取った。枝が一度震え、手放し、それから落ち着いた。僕らは二匹とも見ていた。
……一つ残った、僕は言った。
うん、クリは言った。戻ってくる理由ができた。
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庭から金色が消え、寒さが別の青になったころ、僕は帰った。午後の光は低い金色から、街灯が引き継ぐことを決める直前の、平らな灰銀色へ変わっていた。僕が着いたとき、クリは座布団にいた。僕が出るときも座布団にいた。明日も、その次の日も、冬のあいだずっと、そして彼が探しに行かなくても春が戸口へ運んでくる何かの中でも、そこにいるのだろう。
帰りの霜の庭は、来たときより冷たかった。渡りきり、路地で一度振り返った。暖かく灯る障子の隙間に、マフラーごと、小さく丸い橙色の形があった。ずっといた場所に。裸の木の高いところには、柿が一つ残っていた。深くなる灰色の中の、橙色の点。鳥のためか、木のためか、次に来る誰かのために残されたもの。
遠くまで行かなくても、どこかにはいられる。
僕は根津の路地を歩いて帰った。百回は歩いた道なのに、今回は違うものに気づいた。古い石垣と新しい部分が出会う角で、街灯が落ちる独特な形。路地の上のほうで、雨戸が下ろされる音。十二月初めの寒さ。十一月のものでも、一月のものでもない、固有の寒さ。来たばかりで、まだ自分の形を探している寒さ。
僕は長いことここにいる。同じ道、同じ曲がり角、同じ塀。水がなじんだ水路を流れるように、この町を動く。僕はずっと、この町を行くべき場所のように歩いてきた。けれど同時に、ここはもう、僕がいる場所でもあった。
自分の通りへ曲がった。塀の上に一分座った。
街は、夕方の早い仕事を僕のまわりで続けていた。自転車が通った。向かいの建物の二階で窓が一つ灯った。暗がりに現れる、暖かな黄色の四角。誰かが帰った。
どこかに。
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