第五十二話:特使団とローリーのライフル
特使団の派遣が決まってから、エドガー率いる道路整備部隊は北の森へ向かう道路を全て工事し終えていた。
ターナー商会に依頼していた大型の馬車も間に合った。
ターナーらしい細かな仕事が施された馬車で、乗り心地も良かった。
前席にカイルとグレース、後席にエドガーとノーランが乗り込む。
今回のメンバーに選ばれなかったベッツは少しだけ拗ねていたが、笑顔で見送ってくれた。
馬車は北の森を目指して王宮から旅立っていった。
後席で、早速エドガーとノーランは激論を交わし始めた。
自らの責務に忠実な仕事人間だ。
カイルは、前世の職場を思い出していた。
こういう優秀な人間たちがプライドを持って自らが果たすべき責務を必死に全うする。
こういう組織は強い。
四つ星重工のミーティングルームを思い出していた。
「いい天気ね、カイル」
グレースがカイルに話しかけてきた。
柔和な笑顔に見えた。
が、グレースはスキーンズに言われた「自らの責務」に集中していた。
他の三人は全員、大陸と手を結ぶことに前向きだ。
だからこそ私はここにいる。
やがて、道路の終着点、森の奥深くまで到着した。
ここから先は「道なき道」だ。
エドガーは馬車の進路に魔法を使った。
馬車の前方に淡い緑色の「橋」が現れた。
その橋は木々の上に馬車が走れるように架けてある。
エドガーは御者に言う。
「このまま進んでください」
馬車はゆっくりと緑色の橋に車輪を乗せる。
スムーズに、走り始める。
カイルは思わずエドガーに話しかけた。
「このまま大陸まで行けるんですか?」
「そうだよ、カイルくん、架設の道路だ」
馬車は、森の上に架けられた淡い緑色の「高架」の上を進んでいく。
馬車からの景色は、広大な森の上からの絶景だった。
その頃、ロサーナ王国の西の端の崖の上、海が見渡せる開けた場所に第二師団のローリーが立っていた。
持っているものは槍では無い。
第二師団のライフル部隊が派遣されていた。
ローリーの持つライフルは、他の者とは異なる形状だった。
カイルの設計でミリ単位で研磨した機関部を持つ「ノーラン武器工房の純正品」だ。
ライフルや小銃は、ノーランから技術移転を受けた様々な工房から軍へ納入される。
しかし、各部隊の「エース級」には「純正品」が支給される。
この、「ノーラン武器工房の純正品」を持っていることが兵士の「ステイタス」となっていた。
ローリーはタバコを咥え、魔法を燃料とするジッポー型のライターで火を点けた。
これはカイルが試作品として作っていたものを強引にもらった。
周りの兵士から羨ましがられた。
「へっ…アイツと顔見知りだってのは俺のアドバンテージだな」
レイラは、風で流れてきたローリーのタバコの煙を鬱陶しそうに振り払った。
「もう…タバコやめたらどうですか?」
レイラはしかめっ面で言った。
それには答えず、ローリーは質問で返した。
「にしても…スキーンズ大統領はなんでこんなとこに俺らを置くんだろうな」
「そうですね…ここは切り立った崖が続く場所ですからね」
「もし他国から攻めてくるとしても、ここからというのは…」
煙を吐き出しながらローリーは弾薬の入った木箱をコツン、と軽く蹴った。
「今回支給された弾丸、お前確認したか?」
「はい、見ました」
「じゃ、わかるだろ?来るとしたらどんなヤツか」
「そうですね…」
「北だけ警戒してちゃダメだってことだろうな」
「魔封石で先端部をコーティングしてありますね」
「それだけじゃねえ…コイツまで持ってけ、だからな」
ローリーの後ろには、迷彩の布が掛けられたレールガンがあった。
レールガンの弾の先端部も、魔封石を加工した金属でコーティング済みだ。




