第三十一話:プホルスの翻意
プホルスがロサーナ王国との国境にある森を抜けてくると、ベルが馬車で待っていた。
「ほれ、みやげだ」
プホルスはベルに、籠に入った木苺の山を渡す。
「これはロサーナ王国側にしか生えてなかったぞ、こっちじゃ見ないだろ?」
ベルは、木苺をひとつ摘み、口の中に放り込んだ。
「どうだ?美味いだろ?ちゃんと味見したんだぜ」
「…。」
「なんだ?口に合わなかったか?」
「いえ?美味しいです」
「じゃもっと、美味そうに食えよ」
「ロサーナ王国はどうでしたか?」
「お前、分かってるんだろ?」
「まあ、だいたい察してます」
プホルスはタバコを咥え、指先に灯した火を近付けた。
深く煙を吸い込んで、ふーっと、吐き出した。
「ま、そういうことだ」
「ひとことで終わらせないでください」
「いちいち説明しなきゃダメか?」
「こういう大事なことはきちんと言葉にして伝えないとダメですよ?」
「面倒くせぇな」
「ちゃんと言ってください」
「ロサーナの民は苦しんでない」
「それで?」
「幽閉されてた魔法使いも解放された」
「そうですね」
「ロサーナの兵は民の味方だ」
「そうですか」
「王室の連中も悪いヤツらじゃない」
「それから?」
「ベッツは幸せそうだった」
「…。」
「あの小僧も…」
「カイルはどんな人間でしたか?」
「説教臭え牧師みたいなヤツだ」
「牧師?」
「ああ、しかもジジイのな」
「少年でしょ?」
「いや、頑固ジジイだ」
「そういう性格なんですね」
「そのもの、だ」
「鍛冶屋って頑固者のイメージ」
「40年、だからな」
「?」
「カイルはベッツを図書館に連れて行ってくれるそうだ」
「…。」
「もういいだろ?」
「まだまだ話してください」
「そうだ!グレースはイイ女になってたな!」
「あなたの敵でしょ!?」
「あと、エドガーの娘も、な」
「そうですか」
「それと、ロサーナ軍の女剣士、凄かったぜ」
「王宮で出会った」
「そうだ、結界を張ってる俺に気配だけで気付いた、太刀筋も一級品だったな」
「危うく斬られそうになってましたね」
「ああ…可愛い顔しておっかない子だったな」
「女性の顔の話ばかりですね」
「お前が話せというから話してる」
「それ以外には?」
「レールガン、だな」
「実際に見たんでしょ?」
「あれは俺でも避けるのは無理だ」
「…。」
「それにアイツはレールガンの他にもイカれた武器をいろいろ作ってるらしい」
「カイルって何者なんですか?」
「だから、説教臭え牧師のジジイだ」
「…。」
「そろそろ、お前の話も聞かせろ、ベッツをロサーナに送り込んだ理由をな」
「あの子は血塗られていない、真っ白な子」
「そりゃ知ってる」
「あの子をボロボロの状態で王宮に行かせたのは、王室と兵士を知るためです」
「助けてくれるかどうか、ってことか?」
「我々は民を苦しめる王室と軍隊を倒すために立ち上がりました」
「そうだな」
「全ては民のため、です」
「そうだ」
「あの子の魔法のエネルギーは、あなたと匹敵するくらい強力です」
「荒削りだけどな」
「魔封石を身に付けていても、漏れる」
「かなり見えるよな」
「グレースは王宮にいて、第二師団も王宮にいるタイミングだった」
「スキーンズだな」
「グレースは私たちがベッツを送り込んだ意味を理解しようと深く考察すると考えました」
「カイルと仲良くしろ、ってのは?」
「カイルの人間性を知るためです」
「人間性?」
「カイルは新しい兵器を次々と生み出している異能の天才」
「まさにそうだったぞ」
「カイル次第でロサーナ王国はどんな国にも変容する可能性があった」
「影響力は凄まじいな」
「カイルがもし、悪人だったら?」
「手強かったろうな、いや、負けてた」
「あなたでも対抗出来ない武器を作れる驚異的な能力がある」
「その通りだ」
「ベッツが魔封石を外す瞬間を待っていたのです」
「ベッツが?」
「身の危険を感じて魔封石を外したなら、すぐに助けに行くつもりでした」
「でも違った」
「あの子は魔封石を外して、治癒魔法を使った」
「自分じゃなくて、カイルにな」
「あの子の使った治癒魔法を感知した時に、いろいろなことが伝わってきました」
「どういう意味だ?」
「カイルへの温かい想い、です」
「惚れたってことか!?」
「デリカシー無いですね」
「すまん」
「もう、私たちがロサーナ王国を攻める理由が無くなった、ということです」
「だから、最初に言ったろ?そういうことだって」
「言葉にすることが大事なんです」
「まあいい、これで気が済んだろ?」
「別の問題に取りかかりましょう」
「東の島国か?」
「そうですね、今情報を集めてます」
「あまりいい情報じゃないだろうな」
「そうなるでしょうね」
「民のための国作りの前に、そっちか」
「国作りと、民を守るための二面作戦が必要になってくると思います」
「民の暮らしを守るためだ、やるしかねえな」
御覧頂いた皆様に心より御礼申し上げます。
初回投稿から毎日投稿を続けておりますが、最終話まで毎日投稿で走り切るつもりです。
常時、原稿ストックを40本以上キープして公開を続けます。
「エタりません、完結までは。」
最終話までお付き合い頂けましたら幸いです。




