残った声
<書き出し>
僕は道路の路肩に座って休んで居た。
すると道路の先から妙な『声』が聞こえて来た。
道路の先にはトンネルが在る。
声は徐々に僕の方に迫って来た。
痩せて、まるで幽霊の様な声だ。
声の主はよろよろとしながら、ハンドルを握っていた。
その声はヒトの殻を纏って『独り言』を喋っている。
僕はその声の主の 独り言 を聞いていた。
「か当本・・・。かのたっ取点百。かいなゃじい凄。?はんゃちあか・・・るて配心ちゃん父の事を・・・ちゃん父はだ大丈夫。ダカラの父ちゃんだ。・・・シオとあちゃが付いてるな。・・・お土産?・・・分かった。る持って帰ずかなら。・・・うん?・・・かべ食たか。ばい食べ・・・三杯?・・・凄いじゃないか。こう遊園地か?・・・じゃ、で三人・・・ギヤー、ワッ、ワッ、ワ~~~・・・」
? 声が繋がっていない。
生きてる言葉ではない。
狂っている。
この道路は人が通る道じゃない。
僕は間違った道に迷い込んでしまったようだ。
ふと周囲を見ると、見た事もない景色だ。
僕は声の主を呼び止めた。
返って来た声は周りの景色から跳ね返った、木霊の様な声だった。
骨と皮の痩せた声・・・。
声は僕の横を風の様に通り抜けて行った。
突然、トンネルの中で車のぶつかる音がした。
女性の悲鳴の様な声が聞こえた。
「ギヤー、ワッ、ワッ、ワ~~~・・・」
この家族は、車の中の楽しい「声」だけを残して逝ってしまったようだ。
この家族は自分達が死んでしまった事を知らないのだ。
この家族は、あの世で生きている。
生きながら彷徨って居るのだ。
あの声の主は、死人・・・。




