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すりガラス
<書き出し>
エミちゃんはすりガラスに写っていた。
僕は子供の頃、隣りの『笑美ちゃん』が好きだった。
何故かと言えば、可愛い子だったから。
アレから十五年経った。
偶然、電車の中で笑美ちゃんと会った。
更に可愛いく、美しく成っていた。
僕は恥ずかしくて何も喋れなかった。
それから三十年経った。
偶然、笑美さんと町で出会った。
笑美さんは子供を連れて、更に美しい女性に変わって居た。
僕はオジギをして別れた。
そして、五十年経った。
笑美さんは色っぽいおばさんに成って居た。
笑美さんから声を掛けてきた。
少し・・・喋った。
七五年経って、道ですれ違った。
確か、・・・笑美さんの様だった。
そして、また五年経った。
特養のホームで偶然、声をかけて来たお婆さんが居た。
僕は、
「失礼ですが、どちら様ですか?」
と尋ねた。
お婆さんは私の名前を「違う人の名前」で呼んでいた。
私も笑美さんだとは分からなかった。
お婆さん達はみんな同じ顔をしている。
お婆さんに成るとみんな同じ顔に成ってしまう。
たぶん私も、周りのお爺さんと同じ顔に成っている筈だ。
思い出とは『すりガラス』を透した景色に変わって行く。
こんな所で会わなければ。




