2/32
案山子の墓
<書き出し>
ススキの穂が秋風に揺れている。
田んぼの隅に、
『捨て場の看板』
が立っていた。
そこにはたくさんのカカシ(案山子)が捨てられている。
雨に濡れて腐った案山子、今捨てられた案山子。
案山子はみな同じ顔が描いてある。
「へのへのもへじ」
案山子には服が着せられている。
子供のセーター、おばさんの着物、オヤジの背広、母の割烹着、お爺さんのドテラ。
麦藁帽子を被ったマネキン人形。
ホッペタには捨てられた日にちが書いてある。
軽トラが停まった。
農夫が三躰の案山子を荷台から下ろした。
担いで捨て場に入って行った。
捨て場の入り口には、赤い帽子を被せた『お地蔵様』が立って居る。
農夫は地蔵様に線香を挙げ、手を合わせて帰って行った。
捨て行った案山子の顔には、
貴子、権蔵、春樹
と書いてあった。
竹藪の奥で雉が「ケン、ケン、ケン」と三度、鳴いた。
私はお地蔵様に線香を三本挙げた。




