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告 解
<書き出し>
地震の後、私は急いで自宅に戻った。
自宅までの道は散々たるものだった。
建物のほとんどが倒壊し、出火している家もあった。
防火服を着て、倒壊した家の中の生存者を探す人があちこちに見える。
私はなんとか、自宅の在った場所に辿り着いた。
潰れた玄関だっただろう跡を片付けて、家族の名前を一人一人呼んだ。
返事は無い。
居間だった場所の屋根は崩れていた。
幸いにも、仏壇だけはかろうじて残っていた。
仏壇の周りを片付けていると、建物の下から声がした。
私は急いで廃材を退け、その声を探した。
・・・居た。
母だった。
無我夢中で倒壊物を退け、母を引き出引そうとした。
すると、どこからか叫ぶ声が聞こえた。
「ツナミが来るぞーッ!」
私は母を置いて、急いで高台に避難した。
暫くすると津波が押し寄せて来た。
津波を目の当たりにするのは初めてだ。
海の水が、みるみる内に町を飲み込んで行った。
私は高台で自分の壊れた家を見ていた。
津波は私の家の周りを残して、先へ先へと進んで行った。
男の人が数人、騒いでいる。
「誰か残された者は居ないかーッ」
「現場に残って居る者は居ないーッ」
「生存者を見た者は居ないかーッ」
私は黙って居た。
母はあの時、確かに生きて居た。
私は黙って居た。
あの時、私は母を殺してしまった。




