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殻参り
<書き出し>
お墓に行った。
蝉の殻が卒塔婆の下の方にしがみついて居た。
蝉は殻から出て、七日蝉に成って飛んで行ったんだろう。
沢岸の茅の葉にヤゴの殻が、しがみついていた。
ヤゴはトンボに変わって飛んで行ったのであろう。
歩いていたら猫の皮が道路に張り付いて居た。
猫は皮を脱いであの世に飛んで逝ったのだろう。
病院に母を見舞いに行った。
病室のベッドの上に殻の寝巻きが置いてあった。
母は寝巻きを脱いで霊安室に運ばれた様だ。
母は蝶に成って今朝、私に会いに来た。
広島に原爆の写真を観に行った。
沢山の人の殻が写っていた。
原爆公園には無数の蝶が舞っていた。
震災の写真で水に流されて行く人を見た。
殻に変わって逝く途中の人である。
蝉の鳴くお盆には必ず『殻参り』にく。
あちこちのお墓の卒塔婆には、蝉の殻がしがみついて居る。




