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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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沈黙と金剛石

作者:若葉 逢
 かつて、世界は光を手に入れた。
 それは人の手で制御された奇跡であり、神の火をも凌ぐと讃えられた。
 けれども、その輝きがいかに眩しかったとしても、やがて光は沈黙する。
 残されたのは灰と、わずかな温もりだけだった。

 私はその沈黙の始まりを知る者のひとりである。
 魔術がまだ息づき、蒸気の音が街を満たしていた時代。
 九歳の私は父に見送られ、魔術学院への長い旅路に就いた。
 それは、この国を覆う運命の幕開けでもあった。

 列車の窓に映る景色は、まだ世界の美しさを信じていた頃の私の目に映るままに、光と影を交互に織りなしていた。
 あのとき出会ったひとりの少女が、やがて私の記憶の底で金剛石のように輝き続けることを、私はまだ知らなかった。

 人はなぜ光を求め、なぜその手で自らを焼こうとするのか。

 この記録は過去の再生ではなく、沈黙の底に沈んだ光の形をなぞるための試みである。

 忘れられた声を拾い上げるようにして、私は再び筆を執る。

――第一話より
1. 序
2025/11/13 23:00
2. 刻まれるもの
2025/11/13 23:00
3. 二枚目の切符
2025/11/14 23:00
4. 灯りの下で
2025/11/15 23:00
5. 汽笛の先へ
2025/11/16 23:00
6. 三〇二号室へ
2025/11/17 23:00
16. 杖、葉脈、光
2025/11/27 23:00
19. 家路
2025/11/30 23:00
20. 千年の朝
2025/12/01 23:00
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