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4 不思議なブレスレット

エメルが持ってきたのは、ベージュのTシャツと、少し濃いベージュのズボン。そして、真っ白な生地に青い線の入ったフードだった。


どれも男物だ。たぶん、あの少年の持ち物なのだろう。


「・・・じゃあ私、あっちで着替えるから。何かあったら呼んで」


少し気が引けたが、サイはそう言って隣の部屋へ入る。


そこには小さなテーブルとベッドがあり、まだ生活の痕跡が残っている。アクセサリーや小物が置かれていることから、きっとここはおばあさんの部屋なのだろう。


サイはドレスを脱ぎ、エメルが持ってきた服に袖を通す。

少しボロついてはいるが、着られないほどではない。


男物だからか、サイには少し大きかったようだ。


「・・・まあ、ベルトを締めればなんとかなるわね」


そう言ってベルトを巻き、鏡の前に立つ。


・・・やっぱり、この髪は目立つかしら。


服を着替えた事で目立ちにくくはなったが、サイの金色の髪はどうしても目を引いてしまう。

この国では金髪は珍しく、たいてい王族のものだと見なされる。


「いないわけじゃないけど・・・やっぱり目立つわよね。フードで隠せるかしら・・・」


ふと、机の上に置かれていたブレスレットが目に入った。


金の輪に、小さな魔石がはめ込まれていて、きらきらと淡く光っている。


「魔石がついてるってことは・・・魔道具かしら?でも、魔道具なんて使ったことないし、ちょっと怖いかも・・・」


サイがブレスレットを戻そうとすると、机の下に一枚の紙が落ちているのに気づく。


ーー《カンビオのブレスレット》

自分の姿を変えることができる。変化させたい部分を思い浮かべると、その部分が変わる。ただし、変化できるのは一箇所のみ。


「カンビオのブレスレット・・・?もしかしたら、これで髪の色を変えられるかも・・・」


サイは恐怖よりも好奇心が勝った。

ブレスレットを手に取り、「髪の色が茶色になりますように」と願う。


すると、ブレスレットは淡く光り、自然に腕にはまり込んだ。


鏡の前に立つと、さっきまでの金色の髪が、落ち着いた茶色に変わっていた。


「・・・すごい。ほんとに見た目が変わるなんて・・・!」


サイは感動しつつも、少しだけ不安になってブレスレットを外そうとする。


だが、いくら引っ張っても外れない。


「・・・やっぱり魔道具って怖いです。・・・まあ、目立たないし、助かるのも事実よね。」


一瞬の不安はあったが、サイは気持ちを切り替えることにした。

サイはそこそこ、いや、大分ポジティブなのである。


しばらく鏡の前で立ち尽くしていると、エメルの声が聞こえた。


『おーい!いいもんあったぜ!・・・って、お前か。サイか。』


エメルがカバンを乗せたまま、跳ねながら入ってきた。


髪の色が変わっていたせいで、一瞬サイだと気づかなかったらしい。


「? どうかした?」


エメルが持ってきたのは、茶色い皮に青い模様の入った肩掛けカバンだった。

パッと見は普通のカバンに見える。


「・・・確かに便利だけど、肩掛けだと走ったときに揺れて旅には向かないと思うの。」


サイの言葉に、エメルはチッチッチと指(のようなもの?)を振った。


『これはな、“マジックバック”っていって、見た目以上に物が入るんだぜ!しかも入れた物の重さがゼロになる!』


「!・・・そんな便利なものがあるの!?」


サイはさっき魔道具の怖さを知ったばかりだったのだが、それでも興味はある。サイは心の強い女の子なのだ。


「重さがなくなるってことは・・・これに詰めた上でリュックに入れれば、荷物の負担も減るってことよね!」


サイのリュックには少量の食料とお金が入っていた。今後旅が続けば、荷物は増える。

その意味でも、マジックバックはありがたい。


さっそくリュックの中身を移し替えていく。


『・・・さっきから気になってたんだけどよ、ほんとにお前サイだよな?髪の色、変わってね?』


エメルがそわそわしながら聞いてくる。


「この魔道具のブレスレットをつけたら、こうなっちゃって!しかも外せないんだよね・・」


『そりゃ、正体もわからない魔道具をつけたら、そうもなるわな・・・』


エメルは呆れたように言った。


『でもまあ、困ることもなさそうだし、むしろ好都合じゃん!知り合いに気づかれたくないんだろ?それよりもさ!服も手に入ったし・・・そろそろ街に行くのか!』


エメルは街に行くのが初めてのようで、目がきらきらと輝いている。


「・・・仲の良かった人もいたんだけどね。えっと、街は・・・あ!地図が置いてある!」


サイは部屋の端に置いてあった地図を手に取る。


「今いるのがこの辺だから・・・近くなら、アルケー街がよさそう!」


地図の真ん中あたりにある、小さな街を指差す。


『よし!じゃあ、さっそく行こうぜ!』


エメルは元気よく扉に跳ねていった。


「ちょっ、ちょっと待ってよ!」


サイは急いで荷物を持ち上げる。


でも、その顔には、どこか嬉しそうな笑みが浮かんでいた。


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