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1 逃走と謎のスライム

私の名前はサラフィーナ・ルミエール!

今日8歳になる王女です!

つまり誕生日! なので今日はお城でパーティが行われます!

いつもは忙しくて家族と会えていないけど、今日は別!

なんてったって一年に一度の私の誕生日なんだもん!

毎年なんやかんやで会えてないけど、今年こそは!


サラフィーナは期待に胸を膨らませ、父親に挨拶しにいった。


少し早く来ちゃったけど、大丈夫だよね?


サラフィーナ少し不安になりながらも、父親の部屋の扉をノックしようとした。


ん? 何か話してるの?


サラフィーナは不思議に思いつつそっと扉に耳をすませた。


「あの子はダメだ。何をやっても身につかない!

このままでは国の評価に関わってしまう!」


「ならば、今日あたり事故を装って・・」


「!?」


サラフィーナは父親と母親の会話を耳にして、言葉を失う。


そんな・・お父様とお母様が・・


サラフィーナは驚愕と悲しさで動けなくなっていた。


きっと“あの子”というのは私のことよね。

兄たちは優秀で、何をやってもうまくいく。

それに比べて私は、勉強もダンスも何もかもうまくいかないもの。

それどころか、礼儀作法すらまともに身についていない・・


サラフィーナは拳をギュッと握りしめる。


だが、サラフィーナとて、それはわかっていた。

だからこそ、今まで努力は惜しまなかった。

それでも、一向に身につかないのである。

これはもはや才能によるものだ。

だが、皆はサラフィーナの努力を認めてはくれない。

直接何か言われるわけではないのだが、陰の囁きはどうしてもサラフィーナの耳に入ってしまう。

そうして少しずつ、サラフィーナの心は曇っていることも知らずに・・・


でも・・まさかお父様とお母様が私を・・


サラフィーナが動けずにいると、話が終わったのか父親と母親が動く音がした。


!とにかく今は逃げないと!!


サラフィーナは急いで部屋に戻り、逃げる支度をすると、近くの森が見える窓に向かった。


・・!


サラフィーナは意を決して、窓から飛び降りる。


幸い、飛び降りた先に茂みがあったため、そこまで衝撃はなく門番にも見つかることはなかった。


サラフィーナは、せっかくセットした髪もドレスもぐちゃぐちゃになりながら、森の中を必死で走り続ける。


はあ、はあ、はあ、はあ・・・


サラフィーナは足を止め、息を切らしながら考えた。

普通なら、家の門番に見つからなくても、王族には専属の護衛もメイドもつく。

当然、逃げようとすれば彼らに止められるはずだった。


――では、なぜ逃げられたのか?


理由は明白だった。

サラフィーナには、最初から誰一人、ついていなかったのだ。


厳密には手配はされていた。王族にしては少数ではあったが、いないわけではない。

しかし、彼らはサラフィーナの世話を放棄し、遊びほうけていたのだ。

当然、そんなことをすれば即クビになる。

だが、父親である国王の耳には届かなかった。

いや・・知っていたうえで無視をしていたのだ。


・・本当はわかっていたのよ。

誰も、誰も、私をちゃんと見てくれたことなんてなかったってこと。

優しくされることも、褒められることも、全部表向きだけだったって・・


ずっとわかっていたのに・・・・


サラフィーナから大粒の涙がこぼれる。

王女たるもの、泣いてはならない。

それが父親からの言葉だった。

しかし、どうしても期待せずにはいられなかった。

もしかしたら、誰かが自分のことを大切に、愛してくれているのではないかと。


そう考えると、涙が止まらなかった。


私はただ、家族と、みんなと楽しく暮らしたかっただけなのに・・


サラフィーナが泣いていると、茂みからガサガサと音がする。


サラフィーナは涙を止めて、そちらに視線を送る。

サラフィーナが警戒していると、茂みの中からは一匹の狼が出てきた。


「ひっ!」


サラフィーナは怯えつつも、狼から目を離さない。


に、逃げなきゃ!


しかし、サラフィーナの後ろには大きな壁があった。


どうしましょう・・完全に追い込まれてしったわ!


そもそも、狼相手に逃げ切れるわけではないのだが。


「ガウー! ガウガウ!」


サラフィーナが混乱していると、狼は吠えてからサラフィーナへと一直線に走ってきた。


ど、どうしよう・・! 速すぎて逃げられない・・!

・・・壁・・?


サラフィーナは、狼が目の前に来た瞬間、大きくジャンプした。

そして、狼は一直線に走り、見事壁に激突していた。


やった!


サラフィーナはとっさの判断で、見事狼を撃破することに成功したのだ。


普通、狼相手にジャンプしたところで直撃するのだが、サラフィーナは運動神経は抜群によいのである。

王女に必要ない!と見てはもらえなかったが、これはすごい才能である。


そして、サラフィーナは狼に視線を向けた・・はずだった。

だが、そこに倒れていたのは狼ではなく・・スライム!?


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