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ヒロインたちが自己紹介をする

これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。

深夜。

 広いとは言えない六畳の部屋に、静かな息づかいだけが満ちていた。

 ヒロキは疲労のあまり机に突っ伏したまま眠り込んでいる。


 その背後で、四つの影がそっと動き出した。

 人形――しかし、今や呼吸にも似た魂の気配を宿す者たち。


 最初に口を開いたのは、星光のような声を持つ少女だった。


アレクシス


「私はアレクシス。

 地球人でも、異星人でも、誰にとっても彼ら“故郷の星に迎えたい”と思わせてしまう旅の宇宙飛行士……そういう物語を、自分のものとして選んだ」


 アレクシスは淡く微笑む。

 本当の自分がその物語とは違うことを、彼女は知っている。

 しかし、その微笑みには揺らぎがなかった。


「人形として、私たちには“生まれた時の物語”なんてない。

 だったら――自分で選んで、生きる物語を作ればいい。

 私はそう思ってる」


スカイラー


 壁にもたれかかっていた少女が、静かに目を開ける。

 鋭さと孤独を湛えた瞳。


「……スカイラー。

 忍の里にも属せず、師を持たず、ただ一人で技を磨いた“独り狼のくノ一”。

 私は、そういう道を生きると決めた」


 彼女の声は乾いていたが、同時にどこか澄んでいた。

 切り捨てられた孤独ではなく、選び取った孤独。

 それが彼女の誇りなのだ。


「過去なんて、形がない。

 だからこそ……刀の研ぎ跡みたいに、自分で刻むものだ」


ニア


「……うちは、ニアや」


 ゆったりとした声が、部屋の緊張をほぐした。


「冒険なんかより……草の匂い、風の音、星の沈む音が好きなカウガールや。

 荒野の静けさは、争いの匂いから遠い。

 そこに身を置いてると……よう生きとる気がする」


 彼女の語る“静けさ”は、逃避ではなかった。

 世界の暴力を理解したうえで、それでも自然に寄り添う選択。

 その柔らかさは強さだった。


「この物語も、うちが選んだんや。

 せやから、誇りに思っとる」


ナターシャ


 最後に、紫の瞳を持つ少女が一歩前へ出た。

 他の三人とは違う、深い影と光を背負った気配。


「……私はナターシャ。

 “物語を選んだ”三人とは違う。

 私は……かつて本当に存在していた」


 空気が張り詰めた。


「私は前世では、かの悪者の王アレクサンドロスと数百年にわたって戦い続けた魔女――

 その記憶を、その魂を、そのまま抱えている。

 そして……その戦いは、まだ終わっていない」


 ナターシャの声は静かだったが、その静けさは戦場の白煙のように重い。


「私は“可愛い”ものを守るために戦った。

 “可愛い”とは――無垢さと、生きたいという強い意志が同時に輝くこと。

 現実は戦場、そして戦場の闇の中で、それは唯一の光だった。

 だから私は、それを“最高の徳”だと思っている」


 三人は息を飲んだ。

 ナターシャの語る“可愛い”は甘さではなかった。

 生の叫びだった。


その夜の終わり


「――よし。自己紹介はこれで終いやな」


 ニアの言葉を合図に、三人は床に座り込む。

 魂を持ったばかりの体は、疲れを訴え始めていた。


 だが、ただ一人。


 ナターシャだけが目を閉じなかった。


 窓の外の闇を見つめながら、唇がかすかに震える。


「……アレクサンドロス。

 あなたも……この世界にいるのでしょう?」


 その呟きは誰にも届かない。

 だが確かに、部屋の空気を震わせた。


 眠れぬ夜。

 静寂の向こうで、何か巨大な影が確かに息づいている――

 ナターシャはそれを感じていた。


 戦いは、とっくに再開しているのだ。

このエピソードを楽しんでいただければ幸いです。次のエピソードはすぐにアップロードします。

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