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勇者の神のような存在を騙すガイド

これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。


ヒロキは、月のない夜にひっそりと家を出た。

ナターシャもアレクシスも、追いかけようとはしなかった。


彼は目的地はひとつ。

あの、理性と非理性が崩れ落ちては混じりあう「公園」——

マダ・ア・アル星人が静かに佇む場所。



暗闇は深く、静寂は重かった。

ヒロキが一歩踏み入れるたびに、空気が波紋のように揺れる。


やがて、彫像のような存在たちが現れた。

目も顔も、人体の文法すら持たない。

しかし確かに「見ていた」。


マダ・ア・アル星人たちの声が響く。

石が砕けるようであり、風が遠吠えするようでもある、奇妙な多層の声で。


「また来たのか、人間。われらの答えは変わらぬ。

干渉するつもりはない。」


ヒロキは深く息を吸い、震える膝を押さえた。


「……知ってる。

でも、今日は説得に来たわけじゃない。」


マダ・ア・アル星人たちの沈黙が世界を染めた。


「では……これは何だ?

おまえの中で、ごく小さく、だが確かに揺れている……

規則性のない波動。」


ヒロキは荷物を置き、その場に立った。

夜風が足元を撫でる。


次の瞬間。


タッ。


かすかな靴音が虚空を震わせた。


もう一歩。


タッ、タッ。


いや、それはただの歩みではなかった。


ヒロキは突然、

ぎこちない——しかし魂をむき出しにしたようなタップダンスを踏み始めた。


足音が、控えめな雷のように地面を打つ。


タカ、タタッ、タタタッ!


マダ・ア・アルの姿が微かに揺れた。

彼らの世界に「リズム」の概念はない。


「……これは……何だ?」


ヒロキは息を切らしながら、止まらずに踊った。


身体が訴えていた。

言葉では届かないから。


そして踊りながら叫んだ。


「理由なんてない! 意味もない!

人間は時々、ただ動く。

ただ息をして、ただ叫んで、ただ踊る!

それが理性か非理性かなんて……誰にも決められない!」


マダ・ア・アルたちの影が波打つ。


「理性と非理性……?」


ヒロキは踊りを止め、強く息を吐いた。


「そんな区別、最初からないんだよ。

宇宙のぜんぶは……ただの衝動だ。」


沈黙。


そしてついに、

マダ・ア・アルのひとりが、

歴史上初めて——ほんの少しだけ形を崩した。


「……奇妙だ。

今……われらの内に……

微細な、しかし確かに“揺らぎ”が生じた。」


ヒロキ:

「それが“欲望”だよ。」


マダ・ア・アル:

「……望む……?

われらが?」


ヒロキ:

「うん。

アベを止めたいとか、この世界を守りたいとかじゃない。

そんなの求めてないのは分かってる。

でも……“見たい”と思っただろ?」


虚空に淡い脈動が広がった。


マダ・ア・アル:

「……確かに……

おまえという存在が……この先どう揺れ動くのか……

見届けたいという衝動が、今、芽生えた。」


ヒロキは静かに頷いた。


マダ・ア・アル:

「ゆえに——

われらは干渉する。

それは理性ではない。

倫理でもない。

ただ……

“見たい”という、望みに従うだけだ。」


マダ・ア・アルはヒロキに問いかけた。

「では──我々に、どう助けてほしいのだ?」


ヒロキは一瞬だけ目を閉じた。

前では、論理も道理も通じない相手だ。

だからこそ、あえて“非合理”に踏み込むしかなかった。


そして静かに答えた。


「……取り引きをしよう。

俺の身体の細胞をいくらか差し出す代わりに……

あなたたちの“力”の一部を、俺に分けてほしい。」




熱くも冷たくもない。

ただ重く、ただ確かに——

世界の深淵に触れるような感覚。


「良かろう。。。」


ヒロキは胸に手を当て、深く息をついた。


「ありがとう……。

これで、みんなを守れる。」


マダ・ア・アル:

「勘違いするな。

われらはおまえを救うために力を与えるのではない。

ただ……おまえの“行く末”が、

どれほど不恰好で、どれほど愚かで、

どれほど美しいか……

知りたいだけだ。」


ヒロキは苦笑した。


「それで十分だよ。」


そして彼は踵を返し、

静かに公園を後にした。


迎えるのは、

アレクサンドロスとの最終決戦の日だった。

このエピソードを楽しんでいただけたでしょうか。次のエピソードもすぐにアップロードします。


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